2話 スライムくん、異世界へ戻る
のそのそのそ。
ゆっくり、しかし着実に道を進む1匹のスライム。
カバンの中には、手紙を受け取ってくれたあの子から、お父さんへの大切なメッセージカード。
『また届けなきゃ・・・・』
街中をゆっくり進むスライム。
車の通りも、人通りもなくなった。
大きな大きな『門』の前にやってきた。
のそのそと『門』のなかに入るスライム。
『門』をくぐり抜けたところを見守るものは、今は誰もいない。
『門』を抜けた先は、先ほどの景色とは全く違うものだった。
地面はアスファルトからでこぼこの土へ。建築物から鬱蒼とした森へ。
大きな黒い影達に見つからないように、のそのそ進んでいく。
『急がなきゃ・・・・』
しばらく進んでいくと、見慣れた洞穴が見えてきた。
中から大きな影が出てくる。
「おー。おかえりー」
ぴょんぴょんと弾むスライム。
カバンを外し、押し付ける。
「お、どうした?開けて欲しいのか?」
大きな影が、中から小さなカードを取り出す。
「なんだこれ?『お父さんへ』」
『お父さんへ
初めまして。みちるだよ。お父さんがいない間に産まれたよ。お父さん、生きててよかった。いつか会えるかな。
佐藤 みちる』
「佐藤・・・・みちる」
みちると何度も呟く、黒い大きな影・・・・佐藤啓治は、きびすを返し、今出てきた洞穴の中に向かって走り始める。
スライムも、のそのそとゆっくりと追いかける。
「まさか・・・・まさか!」
「お、おい、みんなこれを見てくれ!」
「なんだよケイ、大声出して」
「そんな慌ててどうした?」
駆け込んだ洞窟の中は、巨大な空間が広がっていた。外からはなかなか想像がつかないだろう、広々とした居住空間が作られていた。
「これを見てくれ!娘から!みちるから手紙が届いたんだ!」
その場にいたもの達が、全員手を止め、佐藤を見つめる。
「「「「「はああああ?」」」」」
「ーーつまり、スライムに手紙を託したら、託した手紙が無くなって、娘さんからの手書きのカードが入っていた、と?」
「はい、隊長」
皆が叫ぶだけ叫んだ後、自衛隊異世界門突入特別部隊隊長、皆蔵海都が佐藤に事情を聞いていた。
スライムは、ようやく部屋へ辿り着き、ふるふるしていた。
「信じ難い話だが・・・・そんな嘘をつくやつではないしな」
「はい、ありがとうございます!」
直立不動で答える佐藤。その横で、スライムは、ぴょんぴょん弾みながら、何かを訴えかけているようだった。
「どうした。お腹がすいたのか?・・・・お前が話せればな」
スライムはさらにぴょんぴょんと弾み、皆蔵の膝に登った。
「・・・・もう一度、届けてもらえるか?」
スライムは、それに答えるように身体をふるふるさせるのだった。
「佐藤。娘さんに手紙を書け」
「はっ!」
手紙を携えて、『門』をくぐり抜けてゆくスライム。
「ほんっとに通り抜けた」
「ああ、これで連絡が取れれば」
ふらり、と佐藤が『門』に手を伸ばす。
「っ!よせ!」
バチィ。『門』にはじかれる佐藤。
「何やってんだよ・・・・。ほれ"癒しよ"」
「すまん。いや、あるいはと思って。だめだな通れない」
「まあ、俺ら強くなったしなあ」
「仕方ない」
自衛隊異世界門突入特別部隊全員に見守られ、スライムはまた手紙を届けにゆくのだった。




