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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
1章

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第9話 ウォンテッド


 それからしばらく、というか一ヶ月くらい経って。

 物凄~く普通に、ゲームで遊んでいた。

 コレで良いの? という気はして来るけど、兄から次の指示も出ず。

 ただひたすらに、NPCのストーリーイベント的なのをこなしていた。

 とはいえキャラの強化を急ぐ意味合いで、内容とかは皆スキップしている訳なのだが。

 どうすれば次のイベントに行けるかとかは、お兄ちゃんからの指示書に書いてあるし。


『夢月、ちょっと良いか?』


「ん? どうしたの? お兄ちゃん」


 本日もソロプレイを勤しんでいた私の元に、兄からの通信が入って来た。

 ゲーム内ではあるのだが、そこら辺でシステムメニューを開く訳にもいかず。

 かといって、ずっとスマホを耳に当てている訳にもいかず。

 この為にゲーム内で買っておいてた、耳に付いた小型のインカムに指を当ててみると。


『一月様子を見て、やっぱ懸念してた状況が発生してるんだわ。それなんで前に言ってた話、本格的に始めて良いか?』


「ん、と……? 私が運営の用意したエネミーを演じろってヤツ?」


 思わず首を傾げそうになってしまったけど、今はNPCのフリをして街中を移動中。

 なのでどうにか平静を装いながら、会話だけを続けていく。


『そうそう、ここ最近の戦闘映像も見させてもらって、問題無いだろって決着がついてな。お前を含めた複数名が、ガンサバイブオンラインにおいての“賞金首”として登録される』


「……あの、えっと。急ですね……しかも、なんか物々しいんだけど」


 随分とおかしな事を言いだした兄に対して、思い切り乾いた笑い声が漏れてしまった。

 いやまぁ、前からエネミーを演じろとは言われていたけど。

 よりにもよって賞金首って……。

 どっちかというと運営側が用意したボーナスとして、周囲から余計に狙われそうなんですけど。


『ま、詳しい説明は後回しにするとして。一回ログアウト出来るか? 次のログインからは、完全に“運営アカウント”として動く事になる』


「う、ぐっ! りょ、了解……なんだか緊張するね」


 ここからが、私にとってのガンサバ本番だという事なのだろうけど。

 本当に急だよ! 心の準備とか一切してないよ!

 などと考えつつも、近くのホテルへと踏み込んで安全にログアウト。

 溜息を零してからリアルの方で瞼を開けてみると。

 VRゴーグルの中に、会社のデスクに着いている兄の姿が映し出されていた。


『んじゃ、早速説明していくぞ? 急で悪いが、お前なら一月で随分と慣れただろう?』


「慣れた……とは言っても、私ソロプレイだし。NPCとばっかり戦ってるよ? しかも、使ってるのは相変らずハンドガンだし……」


『それで良い、というかそれが良い。ロマンがあるからな』


 何やら良く分からない事を言いだした兄は、此方に次々とデータを送って来た。

 ゴーグル内に表示されていくのは、事細かく書かれた新しいアルバイトの契約書。

 こちらに電子サインを記入してから送り返した後は、これからの行動指示書というか……私が、どういった“存在”になるのかが書かれている電子書類が。

 そこに記載されている内容というのが。


「他プレイヤー……特に新規加入者へ悪い影響を与えるプレイヤーを狩る事? 賞金首に狩られた人物には、結構なバッドステータスが付与される……けど、こっちを倒した時の報酬は大きい」


『そういう事。具体的に言うと、“ルールに則った状態”で他のプレイヤーに迷惑を掛ける感じの相手の対応だな。普通ならしつこく追い回したり、暴言なんかが殆どだが。このゲームだと、それこそ一部のフィールドをクランが支配して、みかじめ料を取っちゃったり』


「え、えぇ……ゲームだよ? そんなことする人居るの?」


『昔から結構あるんだぜ? クランやらギルドで力を貸す代わりに、アイテムやらゲームマネーを納品させる様な所。調子に乗るとリアルマネーを請求したり、そこまで行かなくとも課金アイテムを納品させたりな?』


 いやもう最後のそれは、ある意味お金渡してるのと一緒ですけど……。

 というか、そんな事をする人達も居るんだ。

 やっぱりオンラインって怖いですね、ホント、うん。

 私はずっとソロで良い気がして来た。


「そんな事をする人達がいっぱい居たら、それこそ普通にプレイ出来ないね……新規で入って来た人達とか、そんなローカルルール知る訳無いし」


『その通り。ゲーム内では普通の取引だったとしても、勝手にルールを作られて他を巻き込み始めるのは不味いんだよ。ユーザー離れにも、プレイヤー同士のトラブルにも繋がるしな? だから早い内に芽は積んでおこうって事だ』


 そしてそこに使われるのが……私みたいな、運営側が用意したプレイヤー。

 という事で良いみたいだけど。

 これと一緒に送られて来た公式ホームページのURLに飛んでみると、なんとまぁ大々的に告知していらっしゃる事で。

 運営からの挑戦状! 君にこのプレイヤー達が倒せるか!? 賞金首を討伐すれば、特別なアイテムをゲット! ※ただし賞金首にやられた場合は、一定時間バッドステータスが付与されます。

 だそうです。

 つまりゲーム内マネーやらアイテムやら、そういうのを餌にしつつ。

 こちらもルールに則った上で、そういう人達を潰してしまおうって事らしい。

 ついでに言うと、付与されるというバッドステータスが結構エグイ。

 クラン規模で動いている人達にとっては、それこそ致命的と言えるのかもしれない程度には。

 もしもコレを貰って、トップの人達がまとめて弱体化した場合……多分、他のクランに根こそぎやられるって事だよね。

 う、うわぁ……結構エグいゲームだとは思っていたけど、ここまでやるのか。


『こっから先、夢月はこっちが指定した場所にピンポイントでログイン出来る。装備もこっちで用意するから、そっちの心配は無し。お前はいつも通り、一対多の戦闘をこなしてくれれば良いだけだ』


「いやいやいや、簡単に言ってるけど……これ、負けたら不味いって事だよね? 簡単にやられちゃったら、それこそ報酬の価値が下がるって言うのと……ゲーム内でインフレ起こりそうな額を提示してるけど」


『だからこそ、賞金首は“選ばれたプレイヤー”だけで構成されてるんだよ。とはいえ、これは口外禁止な? 普段はもっと、普通のイベントキャラ的な扱いになる』


 選ばれた中の一人に、めっちゃド素人の私が居るんですけど……。

 なんかもう既にお腹が痛くなって来た気がする。

 ど、どうしようこれ。

 確かにお兄ちゃんの役には立ちたいけど、私にこんな大役務まる気がしないんですが。

 そんな事を考えつつ、お腹を擦ってどうにか落ち着こうとしていると。


『ちなみに、これがお前の新しい装備。喜べ夢月、まだユーザー側には実装前のフルカスタム拳銃だぞ? しかも、お前のキャラに合わせた高性能な防弾スーツもセットにしておいてやった』


「え、なにこれ格好良い!」


 続いて此方に表示された武装のデータに、思い切り食いついてしまった。

 まさに餌で釣る運営スタイルとも言えるのだが、見事に釣られたのが私。

 しかしながら……いい加減、初期ハンドガンはちょっと飽き始めていたのだ。

 とはいえ武器の種類はあんまり分かんないし、とりあえず相手をやっつけられるから良いか~ってそのままだったんだけど。

 ここに来て、まさかの一般では未実装武器の登場。

 しかも何か……素人でも分かる程、凄く色々カスタムしてありますって見た目をしている。

 凄い凄い凄い、バレルとか金色だ。

 真っ黒い銃だけど艶消しっぽい渋い色合いで、スライドには何か色々穴が空いてて中のゴールドバレルが覗いている。

 狙う際に重要となるサイトも、よく分かんないけど光ってる細いチューブみたいなのが付いてる。

 あとマガジンがちょっと長い! いっぱい弾入りそう!

 それから全体的に強そう! 見た目からして!


『能力値やら何やらは詳細を確認してくれ~? お前を倒した場合は、ラストキルを取ったプレイヤーにこの銃がドロップするから、それこそ皆集まって来るだろうな』


「お、おごご……何か物凄くプレッシャーが……」


『気楽にやれ気楽に。スーツの方だって、そこらの防弾服なんかよりずっと凄いぞ? そして何より、提携してくれた高級ブランドの最新モデル。俺でもリアルに欲しくなる見た目の、スタイリッシュスーツだ』


「ぐ、ぐおぉぉぉ……なんかもう色々凄すぎてよく分からない……」


 兄が、滅茶苦茶餌をぶら下げて来る。

 いやでも、ここで安請け合いして即敗北なんて事になってみろ。

 役に立つどころか、逆に迷惑が掛かってしまうかもしれない。

 だからこそ、もう少し慎重に事態を進めた方が――


『それからもう一つ、こっちに関してはゲームとは直接関係ないけど。もしもコレやってくれるのなら……御褒美をやろう』


「……御褒美?」


 何やら意味深な微笑みを浮かべる兄は、ニヤニヤしながらデスクの下に手を突っ込み。

 机の上に、妙にゴツイケースを取り出したではないか。

 そして、その蓋をパカッと開いてみると。


『ゲームコラボの限定モデルガン、まだどこにも売ってないし発表もされてない。コラボ先から試作品を幾つか貰ってるんだけど……コレ、お前にやるよ。相手方からも了承貰ったし、是非“ウォンテッド(賞金首)”に渡してくれってさ』


「…………やります、やらせて下さい」


 そこには、先程データで見せてもらった格好良い銃の実物があった。

 もちろん、オモチャだけど。

 けどさ、実際こういうゲームをずっとやっていると……こういうのも、正直興味湧いて来るんですよ。

 でも買おうとすると高いから、ゲーム内だけで満足しようとしていたんだけど。

 目の前に登場しちゃったら……欲しいじゃん、見るからに格好良いし。

 しかも、まだ売ってないとか言われたら余計に特別感出ちゃうじゃん。

 という事で私、白川 夢月は。

 本日付けで、ガンサバイブオンラインの“賞金首”になる事が決定したのであった。

 物欲に負けてゲーム内のプレイヤー全員から狙われるって、いったい何なんだ……。

 とはいえ、元々こういうのを望まれていた訳だし。

 ゲームそのものを普通に楽しむ時間は、この一ヶ月で終了したという事なのだろう。

 今から私は、全プレイヤーから狙われる一人になるよ……。

 あぁ、お腹痛い。


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