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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
4章

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84/91

第84話 2・3


「今日も一日お疲れ様ぁ~。ホイ、ちょびっと飲みましょう」


「あぁ、ありがとう。そっちもお疲れ様」


 そんな事を言いながら、妻がお酒を渡してくれた。

 二人揃ってコレを傾けてから、ふぅぅと深い息を吐き出しつつ、此方は一足お先に家のソファーに沈み込んでいると。


「ちょくちょく若い子もクリニックに来るけど、今日の二人はどんな様子だったの? 付き添いも彼氏君だったみたいだし、産婦人科と間違えちゃったって訳じゃないんでしょ?」


 私がやっている個人病院、なんて御大層なモノではないが。

 小さなメンタルクリニックを開き、そこで看護師兼助手というか。

 その他いろいろな事までこなしてくれている妻が、随分な事を言いだしたではないか。

 本日私の所へ来た……“シックス”。

 改めて見ても、やはりあの外見には驚くばかりだ。

 あんなに小さく、そして自信無さそうな表情の女の子が……ガンサバの世界では、誰よりも目立っているとも言える賞金首なのだから。

 しかしまぁ、妻の感想も分かる。

 どうやらボーイフレンドに付き添ってもらった様で、一見すると“そういう事情”のカップルに見えない事も無い。

 若い子がウチに訪れる時は、大抵親御さんが付き添っているので余計に。


「職権乱用はあまりしたくないんだが……」


「私も関係者ですー、軽く教えてくれるくらい良いじゃない」


 そんな事を言いつつ、彼女のカルテを取り出し始める。

 こらこらこら、いくらクリニック兼我が家になっているからと言って、患者のデータを私生活に持ち込むんじゃない。

 とかなんとか、一言言ってやろうかとも思ったのだが。


「私の気のせいかもしれないけど、なんかすっごく引っかかると言うか……本当に初めて来た子だよね? それとも私が忘れてるだけ?」


 どうやら彼女が持ち出して来たのは、本格的なソレではなく受付の情報程度な物だったらしく。

 そして妻が“引っかかる”と表現したソレに関しては……まぁ、致し方ないというもの。


「こっちもこっちで“職権乱用”になってしまうから、あまり言いたくないな」


「夫婦でしょうが、固い事ばっか言ってるとご飯作ってあげないわよ?」


 ぷりぷりと怒った妻は、そのまま此方の隣に腰掛けて来たかと思えば。

 受付表、というか診察前の簡単なアンケート表のような物を此方にも見せて来て。


「シューティング系のゲームをやっていて、現実の方で身体の感覚に違和感。これって結構珍しくない? それこそ専門の戦闘VR訓練を受けた、とかなら分かるんだけどさ。最近のゲームって、そこまでハードじゃないっていうか。むしろそういうの嫌いそうな雰囲気の子だったけど」


 そんな事を言いながらも、自分自身今何が気がかりなのか、ソレを探している御様子だ。

 こういう自分の心理状態を把握しようとする癖は、私としても心強いと言う他無いのだが。

 あまりお預けばかりだと、後で拗ねる可能性もあるので。


「彼女の名前を、しっかりと確認してごらん」


「え? 名前? やっぱり過去に通った事がある子とか、もしくは有名な人だったりする? えぇと、白川 夢月さん。う~ん? しらかわ……むつき、記憶にある様な……無いような?」


「名前をゆっくり読んでごらん、最後だけ言葉を伸ばして」


「む つ きー……ん? んんー? むつきー、ムッツッキー。んん!? ムッツキー(6key)!? え、嘘!? いやまさか、だってすんごく小さい子だったし……あぁでも、アンタの話を聞く限りっていうのと、他の場面でも女の子だって聞いた事がある様な……ていうか、“白川”! 思いっ切り“シックス”のサポーターの名前な上に、あのペアは兄妹だって言ってたよね!?」


「大正解」


 どうやら答えに辿り着いた様で、妻は非常に驚いた様子で何度も彼女のデータを見返している。

 私も随分と驚いたし、そもそも賞金首のメンタルケアの意味を含めて、あの会社に雇われている面もあるのだ。

 だからこそ9K(ナイン)が直接紹介してくる事に、少々の違和感を覚えてはいたのだが……。

 まさか、6keyご本人が登場するとは。

 そしてそして、second(セカンド)と名乗っている私の……妻まで、何故こんなに事情に詳しいのかと言うと。


「ねぇ向こうには正体明かしたの!?」


「あぁ、改めて自己紹介したよ。以前の会議では、随分と緊張していたみたいだったからね。私の事も覚えていなかった」


「いや、セブンとフォーとシックスの三人がインパクト強すぎるのが原因でしょ! それ以外の面々なんて、想像するだけもモブだわ!」


「ハッハッハ、酷いな」


 私と違って以前の会議には参加していなかったが、彼女もまた“賞金首”の一人。

 夫婦揃ってというのは、むしろ良いのか? という気持ちになってしまったけども。

 男女共に賞金首は居るし、そっちの方が都合も良いのは確か。

 普段から同じ存在として接し、皆の様子を見て欲しいというのが運営側からの要望。

 というのと……妻は、単純にVRゲームが上手いのだ。

 医療に関わる者として、やはりストレスを多く溜め込んだ時期があり。

 その発散の場、という意味でガッツリやり込んだ時期があった。

 当時の功績が今でも残っており、コレをきっかけに私達にお声が掛かったというのが正しい道筋なのだろう。

 かくいう私も、あのゲームにはハマってしまい……それなりに“特殊な戦闘”が出来る程度には育って来たが。


「えぇぇ~良いなぁ……そういう事なら、私も自己紹介したかった」


「いきなり二人も賞金首が出て来たら、それこそ驚き過ぎてしまうんじゃないか?」


「良いじゃん別に! 他の面々と違って、私達は“異常なまでに強い”って部類じゃないし! それなりに強い~程度の2番目と3番目なら、相手も緊張しないって!」


「なら、良かったんだけどね。私に対してもかなり緊張していたよ? 一度は顔合わせした筈なのにね?」


 そんな事を言いながらも、静かにグラスを傾けた。

 未だに妻は騒いでいるが……こればかりは、仕方ない。

 彼女もまた他のプレイヤーと同じく、ある種“シックスのファン”になっているのだから。

 しかし、リアルの姿を見ると……あれは反則だよなぁと私も思ってしまう。

 ゲーム内ではアレだけ派手に、そして的確に動く機械の様な殺人マシーンに見えるのに。

 現実では、どこにでも居そうな女の子。

 それどころか小動物の様な雰囲気が漂っており、彼女の兄であるサポーターがアレだけ過保護になってしまうのも分かるというもの。

 あんな妹が居たら、多分私でも心配性になる自信がある。

 自信無さそうに俯き、前髪で顔を隠してはいたけど。

 実際の所、随分と整った顔立ちをしていたし。


「またチーム戦みたいなイベント来ないかなぁ……そしたら今度は、別の面々を“診る”事になるんでしょう?」


「そうだね、そっちもそっちで色々検討しているみたいだけど。私達が参加しなかった方のチームが、随分な成績を出してしまったからね。運営側も判断に困ってるみたいだ」


「ありゃ強すぎるって。シックスだけで生き残った時とか、完全に“本業”の人だったじゃん。あんな人のメンタルを見ろって言われたら、アンタでも困るんじゃないかって心配した程だよ」


「ハハハッ、確かにね。ゲーム内のシックスのメンタルケアを依頼されたら、かなり手を焼きそうだ。とはいえ、リアルの方の白川さんなら……それこそ、気軽にお話が出来そうだよ?」


「小さくて可愛い子だったもんね~? 彼氏が心配そうにしてたぞー?」


「おっと、あまり深入りすると恨みを買ってしまいそうだね。それこそ、いろんな所から」


 なんて冗談を挟みながらも、隣に座っている妻を抱き寄せた。

 此方の仕事は、メンタルケア。

 しかしながら……“賞金首”として登録された以上、弱いままではいられない。

 そして実際、私達夫婦の戦績は……“普通”に考えれば、かなり良い方と言って差し支えないのだろう。

 とはいえ、周りに凄すぎる面々が揃う“プロ”の世界だからこそ、やはり霞んで見えてしまうのだが。

 こればっかりは、我々も練習を繰り返すしか無い。

 などと言ってもやはり私の方は限界があり、どこまでも“運営のサポート”に頼っている様な状態だが。

 メンタルクリニックの医師が、ガンサバイブオンラインなんていう物騒なゲームをしているというのも、如何なモノかとは思うけどね。

 今更過ぎる思考とはいえ、どうしてもそんな事を考えてしまうのであった。

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― 新着の感想 ―
2が出てきて残りはどんな人だろうと思っていたら3が出てきた! まさか夫婦とは... お医者と看護師というのは常日頃忙しいイメージが強いですが、賞金首をやれるほどの時間があるのですね? 賞金首として腕を…
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