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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
1章

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第6話 初対戦


「また見つけた。多分あの青いパーカー着てる人も、プレイヤーだと思う」


『お見事、本当に良い観察力してるよ』


 ポツリポツリと兄と会話しつつ、街中を移動。

 改めて思うけど……あえて“普通”を演じるのって、意外と難しい。

 目的がある以上、どうしたって動きに出てしまう。

 ストーリーやNPC戦もあるが、PVPがメインのこのゲーム。

 だからこそ街中でも周囲を、というか周りの人間を観察しようとしてしまうのは仕方ない事。

 けどこの行動を分かりやすく行えば、それこそ“目立つ”。

 さっきから私が見つけているプレイヤー達も、こう言った行動を取ってしまっている人が多い。

 逆に言うのなら、きっとそれ以外にも居たであろうプレイヤー達は、完全に周囲に溶け込んでいるという事なのだ。

 このゲーム、本当にNPCとプレイヤーを見分けるのが難しい。

 私もそうあろうと意識はしているのだけど、ちゃんと出来ているのかと言われると自信がない。

 というのも。


『夢月、顔』


「うっ!? そんなに変な顔してる……?」


『というより怯えてる様な、警戒している様な……プレイヤー独特の表情をしているというか。むしろお前の場合は、癖にも近いのかもしれないけど』


 こればかりは、本当にどうしようもなかった。

 コミュ力ゼロなので、普段から結構オドオドしている自覚はある。

 というかそうか、物凄く今更だけど……オンラインで、しかもフルダイブとなると。

 あんまり変な顔をしていると、それがそのまま相手に伝わってしまうのか。

 そうなってくると、本格的にこのゲーム私に向いてないんじゃ……。


「お兄ちゃん、表情の反映ってどこかオフに出来たっけ……? ほら、ボイスチェンジャーみたいに、フィルター掛ける感じにさ」


『あぁ~そっか、お前基本ソロプレイだもんな。機器の設定はそのまんまか……んじゃ先にそっちを教えてやるから、一旦どっかの建物に入って。メニュー操作している所を見られたら、コントロールパネル自体は他者から見えなくても、動きだけでプレイヤーだってバレる。ていうのと、NPCにも不審がられるからな』


 そんな訳で、慌てて駆け込んだ先にあったのは……うーむ、工事中のビルか何か。

 まぁ、良いか。

 今は作業員も居ないみたいだし、ここなら人目にもつかない。

 そのまま建物奥へと進んで行き、メニュー画面を開いて色々と操作していく。

 ゲームの設定ならまだしも、関連機器の設定とか今やる事じゃないよねぇ……などと、自分でも呆れてしまうが。


『ん? 表情のトレース、ゼロで良いのか? 普通のプレイにも支障が出るぞ?』


「うん、顔に出したくないし。それにこのゲームなら、笑ったり泣いたりするメリットも無いでしょ?」


『ま、まぁなぁ……なんかそれはそれでズルいが、というか愛想笑いも出来なくなるけど……あぁでも、口の動きは連動させておけよ? 喋っても口が動かないとか、腹話術師じゃないんだから。それもプレイヤーだってバレる原因の一つになるぞ?』


「はーい」


『口調は夢月のままなのに、声がいちいち渋い……』


 イヤホンの向こうからは、やや苦い声が聞えて来た気がするけど。

 まぁ、今は良いとして。

 兄に言われた通りに設定を終え、一旦システムメニューを閉じたところで。


『夢月、お客さんだ』


「うっ……もしかして、私みたいに設定弄ろうとしてる人? だとしたら、場所空けた方が良いよね……」


『馬鹿、違う。建物内に銃構えて入って来たのが三人。お前、後を付けられたぞ』


 うげっ、つまり私がプレイヤーだとバレて、早速勝負を吹っ掛けられてしまったという事か。

 だとすると不味い、私は今日戦闘禁止だと言われてるし……。


『あー、ちょっと待ってな? 上に申請してみて……っと。お? あっさり』


「ちょ、ちょっとお兄ちゃん! こんな時に何をのんびりしてるの!? 相手来ちゃう! どうするのコレ!」


 何やら一人でブツブツ言っている兄に対して、此方は慌てながらもボソボソと小さな声で喋り続けるが。

 イヤホンの向こうから、次に聞えて来た言葉は。


『夢月、戦って良いぞ。動きのテストって事で、会社からも了承が出た。んで……だ、出来れば“殺さず”でやってみてくれ』


「……へ?」


 なんか、とんでもない事言いだしたけど。


『キルログを残すと、お前の名前が残る。だからそこまでやらずに相手を制圧、いけるか?』


「む、無理だってば! 鉄砲使って、どうやって手加減するの!?」


『相手はチュートリアルを終えてる筈だから、回復アイテムも持ってる筈だ。使い切ってない限りはな? だから脚や腹を撃って離脱。前にも言った通り、このゲームはステータスによって、あまりにも人間離れした行動が出来るかと言われると……そうじゃない。つまり、相手から見たらすげぇ強いプレイヤーが居た。ってだけの“記憶”になる可能性が高いって事』


「つまり……出来ればその証拠すら残したくないから、キルまでは取らないで逃げるって事?」


『そゆこと。そっちの建物内は監視カメラ無いし、俺はサポート出来ないけどな。あとで映像データよろしく~』


 ちょっ、とぉぉぉ!?

 このゲームでの初PVP、しかも一対多。

 そんな状況な上に、此方は加減して戦うという“縛り”まで含める事になるのか?

 いや、無理でしょ。

 いくら何でも、プレイヤーを舐めすぎだって。

 だって私のステータスだって、他の人に比べて馬鹿みたいに高いって訳でもないし。

 そもそも装備なんて、他のプレイヤーと本当に一緒の初期装備。

 むしろチュートリアルをやっていない分、ハンドガン以外持っていないんですけど!?


『大丈夫だ、いつも通りやれば良い。お前なら余裕で勝てる』


「何を根拠に!?」


『お前“のめり込む能力”は異常に高い、だからこそテストプレイヤーにも選ばれたんだよ。ま、そっちの話は後でな。ホラホラ、準備しろ』


 あぁもう! 滅茶苦茶だよ!

 という事で、脇に装備されたホルスターから拳銃を引き抜き、スライドを引く。

 カショッと金属音を立てて、銃弾が装填されたのを確認してから。

 物陰に身を潜めて、ジッと息を殺した。

 あれ? なんだか練習していた時より銃がしっくり来るというか。

 ちゃんと掌に収まっている気が……とか何とか思った所で、自らの掌に視線を落として気がついた。

 そっか、今私は男性の身体で操作しているんだ。

 身体はいつもより大きいし、当然力も強い。

 その分身を潜める時とかは気を付けないといけないけど……でも、銃の反動とかそういう意味では、凄くメリットがある気がする。

 これも色々と調べていかないと、これからも“ガンサバイブオンライン”をプレイする為には。

 なんて、少しだけワクワクした気持ちが浮上して来たところで。

 遠くから……パキッと、何かを踏みつけた音が聞えて来た。

 相手が来たんだ、確か三人って言ってた。

 フロア内には私と相手しか居ない。

 だからこそ、敵が動くとよく音が響く。

 コレを頼りに、身を潜めたまま相手の位置を探っていくと……大丈夫、分かる。

 ゆっくりとこっちに向かって来るけど、あんまり音を殺そうとはしていないみたいだ。

 まだゲームに慣れていないからなのか、それとも向こうの方が人数も多いからって舐められているのか。

 まぁ、どちらにせよ。


「ふっ!」


 身を潜めていた場所に、最初の一人が踏み込んだ瞬間。

 視界に映った相手の武器を直接掴み、逸らす。

 そのまま脚に此方の銃を押し付けて二発。

 怯んだところに腹に一発。

 普通ならこれだけでもかなりの重症だけど、コレはゲーム。

 回復アイテムを使えば、即死はあり得ない。

 後ろに居た二人が私に銃を向けて来るが、さっき攻撃した人を盾にしながら威嚇射撃。

 銃身を掴んでいたハンドガンを毟り取る様にして奪い取ってから、残る二人の方へと目の前の人を蹴り飛ばした。

 そして、すぐさま逃げる。

 背後からは何度も発砲音が聞こえて来るけど、一目散に逃げる。

 そんでもってまた身を隠してから、自分の武器をホルスターに戻して、さっき奪った銃をチェック。

 よし、私でも使えるヤツだ。

 という事で、今度はそっちを構えて相手の到着を待つ。

 これが私の選んだ、一番生存率が高い戦闘スタイル。

 大きな武器程扱いが難しいし、種類が多過ぎて使い方が分からない物がいっぱいあった。

 だからこそ、基本的にハンドガン。

 それから狭い所での戦闘に誘い込んで、可能な限り超近接戦。

 ガンアクションのゲームなのに、コレはどうなの? とは自分でも思うけど。

 けどコレで、テストプレイの時はずっと生き残って来たのだ。


『お見事、やるなぁ夢月。相手は今治療中っぽい、本社の皆がモニタリングしながら笑ってるぞ? 妹さん強ぇ~って。監視カメラが無いから、直接映像が見られないのが残念だ』


「お兄ちゃん、煩い。戦闘中」


『これは失礼。んじゃ、あと二人だ』


 という事で、戦闘は継続。

 出来ればこのまま逃げてくれたりするとありがたいんだけど……流石に、武器を奪っちゃったらそうもいかないよね。

 完全に戦闘が終わって、一定時間が経てば相手の手元に戻るとはいえ、奪われたままなのは絶対悔しいし。

 そもそも銃が返って来るまでの間は、武器が無い状態でゲームを続行しないといけなくなるのだ。

 そして本日がサービス開始日だというのなら、相手だって懐が温かい筈もない。

 だからこそ。


「武器を持ってるのは残り二人……って、思考を放棄するのは危ないよね。その辺にある物でも武器になるゲームなんだから……なら、三人で襲って来ると思って良い筈」


 思い切り溜息を零してしまいたくなる状況ではあるものの……やばい、楽しい。

 PVPって、負けちゃいけない戦闘って、こんなにドキドキするんだ。

 これはちょっと、一人プレイでは味わえない緊張感だ。


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