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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
2章

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第44話 工作は劣等生


 その晩、皆との練習を終えてからお手製のショットガンモドキを作ってみた訳ですが。


「お、お話にならない……」


 昔から、図工って苦手なんですよね。

 ラップの芯と、調味料の瓶で、とか言っていたのに。

 都合よくそんな物が残されている訳もない。

 当たり前だよね、使い終わったら捨てるもんね。

 という事で、代用品を探したのが……結局見つからず、とりあえずA4用紙を丸めて筒を作った。

 それっぽい太さにしてからテープで固定、とかやったけどそもそもグリップとかどうするの。

 というか、あの構造に慣れないと意味無いじゃん。

 弾を込める動作も必要だけど、私に必要なのはリロード作業なんですよ。

 あとこのままじゃ、筒に瓶を突っ込んでもストンと抜けるだけだし。

 試しにやってみて、床に転がった一味唐辛子の瓶を見て凄く空しい気分になったんだが。


「これじゃ鉄砲みたいな物を作って遊んでるだけの小学生だよぉぉ……」


 結局、二本の筒をテープ止めした所で挫折した。

 馬鹿、本当に馬鹿。

 これならやはり、6keyでログインして練習した方が……なんて、思ったりもする訳だけど。

 あっちのアカウントは、基本的に運営にも筒抜けになるのだ。

 あまり気を詰めていると分かると、お兄ちゃんに心配を掛けてしまう……というのもあるのだが。

 長すぎる時間、“練習”と分かる行動を自主的に続けていると……統括である早乙女さんからも直々にご連絡が来てしまうらしいのだ。

 お仕事とはいえ、体調を崩しそうな程追い込まれては困る。という措置らしいけど。

 だったらやっぱり向こうにもちゃんと“お仕事”と言える範囲でやらないと、結局迷惑を掛けてしまう気がする。

 更に更に、私は今学生な訳で。

 未成年だからこそ余計に気を使われているのと、学生の本分は勉強な訳で。

 宿題やら予習復習もある上に、家の事は一番手を抜く訳にはいかない。

 と、なると。


「あぁぁぁ! 片手間に練習出来るモデルガンが欲しい! 今まで気にして無かったけど、6keyはこのモデルガンに凄く助けられてたんだ! だってもう見なくてもリロード出来るもん! ビックリするくらい手に馴染んでるもん!」


 とはいえ、私の掌だとやっぱり大きいんですけどね。

 しかしコレを弄り回して、身体が銃の感覚を覚えたのは確かみたいだ。

 VRでは基本的に“頭で”操作している訳だけど、“身体に”覚えさせるならやっぱりリアルの方が早い。

 お兄ちゃん見られたら結構恥ずかしいけど、これを家の中で持ち歩いたりして、ちょっとだけ手が空く度にカチャカチャしてたし。

 あれも一応、効果があったという事なのだろう。

 ホルスターとか買っちゃったら、何かもうずっと身に着けてそうな勢いだったからね。

 気に入った玩具をずっと持ち歩いている子供みたいで、傍から見たらアレなんだけど。

 などと考えてから、大きなため息を零しつつ机に突っ伏した。

 あぁぁ……もう、とりあえず勉強しよう。

 黒沢君と一緒にゲームをやる様になってから、46leatherの方はもちろん。

 6keyの練習も、かなりキッチリ時間を決めてプレイする様になったのだ。

 だからこそ授業中の居眠りとかは減ったけど……やっぱり、賞金首のチーム練習は疲れる。

 皆レベルが高いっていうのはもちろん、多分私が無駄に緊張しているせいもあると思う。

 以前よりしっかり睡眠はとっている筈なのに、なんか妙に昼間眠くなるのだ。

 悩み過ぎて、脳みそが思考を投げだそうとしているのかもしれないけど。

 もはや何度目か分からないため息を零しつつ、大人しく勉強道具を机に並べ始めたのだが。


「うん?」


 私のスマホが、普段とは違うパターンでブブッと振動した気がする。

 ニュースとか、何かのアプリのお知らせとか、天気予報とか。

 何故最初からこんなにアプリが入っているのだろう? としか思わないソレ等からの連絡なら、もはや振動の長さやパターンで大体把握している。

 だからこそ、ほとんど放置。

 たま~に見て、またお知らせいっぱい溜まってるーって思ってまとめて削除するだけ。

 なのだが。

 さっきのは、なんか違った気がする。

 もしかしてお兄ちゃんからの連絡だろうか?

 だとしたら珍しい、いつもならパソコンかVR機器の方に直接連絡してくるのに。

 なんて、特に気にせずスマホを手に取ってみれば。


「え……えぇっ!?」


 私のスマホ……友達から連絡が来るなんて事……あったんだ。

 もはやそういう機能が無いソロ専用スマホみたいな感覚で居たのだが、画面に表示されているのは間違いなく黒沢君の名前。

 いや、よく考えれば前に一回連絡取ったじゃん。

 という話なんだけど、今はそんな事どうでも良くて。

 無駄にドキドキしつつ、届いたメッセージを開く指が震えてしまった。

 こ、これはアレだろうか?

 高校生あるある? の、特に用事が無くても『今何してるー?』みたいな、そういうやりとりとか出来てしまうんだろうか?

 そしたら私は、なんて答えるのが正解だ?

 いつもお兄ちゃんから言われているが、私の文章は基本固いらしい。

 なので、友達からの連絡となればもっと軽く、柔らかくというのが大事な筈だ。

 とか何とか、もはや自分でも何に緊張しているのか分からない状態でメッセージを開いてみると。


『夜遅くにすみません。昼間に話した件がちょっと気になっちゃって……どうでしたか? ショットガン。別に催促している訳では無いので、返事とかは全然後でも構わないんですが』


 なんか、相手の方も結構固い文章で送って来ていた。

 これは、アレだよね?

 私が無理して軽い感じで返事を送るのは、違うよね?

 では今度は、どんな文章で相手に送ろう。

 妙に凝り固まった文章を送るのも違うだろうし……などと、本文と全く関係ない所で悩んでいると。

 もう一回スマホが震え、次のメッセージが届いてしまったではないか。

 あぁぁ、不味い。

 私の返事が遅すぎて、相手に気を使わせてしまったかも。

 アワアワと、スマホ片手に一人で慌てていたのだが。


『本当にごめん、昼間はテンションのまま話しちゃったけど……ガンサバで実際使うって考えると、もう少し新しいモデルとか紹介するべきだったかなって考え直して。コレがオススメ、みたいな事を言っちゃったけど……もっと扱いやすいのを勧めるべきだったかなと思いまして。必要があれば、ちょっとリストを作ったから共有したいっていうか……』


 追加で来た言葉に、思わず首を傾げてしまった。

 えぇと? アレ以外だったら、もっと使いやすいのだろうか?

 いやぁでも、十分凄かったというか。

 いきなりでもちゃんと役に立ってくれたけど。

 実際黒沢君から言われたままをお兄ちゃんに要望して、既に銃も貰っちゃったけども。

 なんかもうどこから説明したら良いのか分からなくなって来たのと、向こうもリスト作ったとか言ってるし。

 そんな事してくれたんですか!? わざわざすみませんでした! って全力で頭を下げたい所なのだが。

 生憎と、私はスマホという物にあまり慣れていない。

 普段は時間を見たり、兄から電話が来た時にだけ使う物なので。

 長文を打つのは、とにかく時間が掛かるのだ。

 という事で、ゴクリと唾を呑み込んでから……通話ボタンを、タップした。

 こんな時間に電話して迷惑じゃないかな、とか。

 通話ってもっと仲良くなった友達じゃないと、普通しないんじゃないかな。みたいな焦りは物凄くあったのだが。

 スマホを耳に当てながら、相手を呼び出している音が聞こえた次の瞬間。


『はっ、はいっ! 黒沢です!』


 なんか、凄くびっくりした様な声がスピーカーからは聞えて来た。

 やっぱり駄目だっただろうか?

 なんかもう、とりあえず時間を取らせちゃってごめんなさいと言うのと。

 ありがとうございますって、早く伝えないとって焦っての行動だったのだが……。


「こ、こんばんは……白川、です。すみません、急に……今、お時間、大丈夫……でしょうか?」


『ぜ、全然大丈夫! ど、どうしたの!? あ、いや、さっきの件だよね!? あ、あははは……』


 とかなんとか二人揃って慌ててしまい、しばらくアタフタと良く分からない会話だけが進んで行ったのだが。

 どうにかこうにかショットガンの話へと移行。

 教えて頂いて、とてもとても助かりました、というのと。

 こういう所がまだ慣れなくて、他の物だとどう違うんですか~みたいな。

 本当に質問ばかりになってしまった訳だが。


『サブキャラか何かで使い始めた、って感じなのかな?』


「ブッ! あ、いえっ! えぇと、あのっ!」


『あぁ~ごめん、大丈夫。そこまで詮索するのは失礼だよね、答えなくて大丈夫だから。別キャラ作りたくなっちゃうとか、ゲーマーあるあるだよ。気にしないで? それで、話は戻るけど……おススメした銃を、もうゲーム内で買っちゃったって事なんだよね?』


「あ、あぁ~えぇと……まぁ、そんな感じと言いますか……」


 6keyの事は話せないので、どうしても変な所で情報を伏せてしまう様な形にはなったが。

 黒沢君は気にした様子もなく、そのまま私の質問に答え始めてくれた。


『もう購入しちゃったっていうのなら、別の物に買い替えは損しちゃうね……ごめん、こればかりは俺のせいだ』


「い、いえっ! あの銃自体は凄く気に入ったので、私は気にしてません! というか……黒沢君も、アレ……好きなんですか?」


『あ、あはは……古臭いって笑われちゃうかもしれないけど、まぁ……はい。昔映画であの銃が活躍するシーンを見て、それからずっと好きなんだよね』


 わぁ、そういうの何か凄く良い。

 私は映画を見始めたのも、お兄ちゃんのアパートに来てからだけど。

 昔からずっと好きな物があるって、純粋に羨ましいって思ってしまうのだ。


『兄貴からも、夢を見すぎだって笑われちゃったくらいなんだけど、実はガンサバでも最初はアレを使ってたんだ。モデルガンとか弄り回してたし、手に馴染むってのもあったんだけど』


 その言葉を聞いた瞬間、思考が一瞬停止した気がする。

 え……今、モデルガンって……。


「あ、あのっ! 件のショットガン! 短いヤツ! モデルガン持ってるんですか!?」


 思わず、意味も無く前のめりになりながら声を荒げてしまった。

 あ、またやった……なんて、少し経ってから冷や汗を流してしまう状況。

 いい加減、この“自分が気になった話題”にいきなり飛びつく癖直したいんだけど……なかなか。

 とか何とか、一人反省会を始めてしまいそうになったが。


『えと、うん。今も家にあるよ? ちゃんとショットシェルを装填できるタイプの』


 彼の言葉に、後悔など後回しになって感動を覚え始めた自分がいる。

 多分、傍から見たら相当アホっぽい表情を浮かべていたと思うけど。


「あ、あのっ! それと同じ物って、前に連れて行ってもらったガンショップで買えますか!?」


『コ、コレ? う、う~ん……どうだろ。レトロ系の武器って、変に人気だったりするから。運が良ければ中古であるかどうか……俺が持ってるのも、兄貴に頼み込んでネットオークションで落札してもらったし』


 クッ! やっぱり実物を手に入れるのは難しいのか……。

 お兄ちゃんから貰ったハンドガン同様、常に弄り回せる環境があればもしかしたら。

 なんて、淡い希望を抱いていたのだが。


『ぁ~あれかな? リロードが慣れないって言ってたもんね。自分の身体でも、感覚を覚えたい……みたいな? わりとVRあるあるなんだけど、VRとリアルが逆転しちゃう現象』


「ま、まさにソレなんですが……手に入らないなら、仕方ないですよね……」


 しょんぼりしながら項垂れたけれども、スピーカーの向こうで何やら息を飲む声が聞こえたかと思うと。


『その……白川さんさえ良ければ……貸すよ? リロードの練習でしょ? ガチャガチャ弄っちゃっても、全然問題無いし。ウチにあっても、ほぼ飾っておくだけ~みたいになってるから』


「……へ? いやいやいや!? 大切な物なのでは!?」


 黒沢君がとんでもない事を言い出して、再び大混乱。

 だって、だって……えぇ?

 モデルガンって、ネットで見る限り凄く高いのだ。

 種類は良く分からないけど、物によってはハンドガンでも何万も平気でするお値段なのだ。

 そんな物を、貸す?

 いやいやいや、何を言っているんだ。

 私達は高校生で、そんな高価な物を貸し借りなんて恐れ多いとしか言いようがない。

 なんて、意味も無くブンブンと首を横に振っていたのだが。


『前にも言ったけど、俺は白川さんがガンサバを楽しんでくれるのが嬉しいから……というか、俺が好きな物に興味を持ってもらえるのが嬉しいっていうか。あ、あはは……こんな事言うとキモイって思われるかもしれないけど。ホント、良かったら。実際触ってみると、結構変わって来るモノだよ?』


 その言葉は、どこか“クロさん”みたいに聞こえてしまった。

 ゲーム内で、同じような事を言いながら私にハンドガンをくれた時。

 凄く優しそうに微笑んで、本当に嬉しそうに笑っていた。

 今多分、黒沢君は同じ表情をしているのだろうと、自然と想像出来た。

 だからこそなのか、あの時みたいに。


「あ、あの……ありがとう、ございます。本当に、大事に使います……凄く、嬉しいです」


 普段だったら絶対断るであろう内容なのに、あっさりとお言葉に甘えてしまうのであった。

 凄いなぁ黒沢君……ガンサバにおいて、というか色んな意味で。

 私にとっては、先生みたいな人に感じている。

 同い年の筈なのに……こればかりは、やはり人生経験の差なのだろうか。


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