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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
2章

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第36話 トラウマ


 9Kさんからの返答待ちをしている間に……来てしまいました。

 次のお仕事、それの企画書が。

 そんでもって、この内容説明の為に早速オンライン会議が。

 パソコンの画面には、運営部として早乙女さんがカメラに写っており。

 その他には、10人分の映像が表示されているのだが……ほとんどの人が、“sound only(サウンドオンリー)”の表示のまま。

 ついでに言うと、私もですハイ。

 カメラとか……持ってないし。

 スマホでも出来るよって言われたけど、私のスマホ古いからなぁ……。

 音声とかガビガビになったら、ちょっと恥ずかしいので。

 とかなんとか、緊張した面持ちのままヘッドセットを着けて待機していると。


『では、始めましょうか。本日はお時間を頂きまして、誠にありがとうございます。各担当からお手元に資料、またはデータが届いておりますでしょうか?』


 早乙女さんの言葉と共に、持ってます! とばかりにズイッと資料の束をモニターに向けた。

 いやうん、カメラ無いから、こんな事しても意味無いんだけどね?


『それではさっそく一枚目を開いて頂いて……あぁ、そうそう。各担当から話は行っていると思いますが、この資料も社外秘なので。間違っても他の人に見せたりしないで下さいね?』


「わ、分かりました! 気を付けます……」


 思わず返事をしてしまったら、早乙女さんが少々驚いた表情。

 あ、あれ? なんかミスった?

 まだ何も始まっていないのに、アワアワと画面の前で慌てていると。


『シックス超慌ててる~! アワアワしてる、可愛い~』


「み、見えてるんですか!? え、でもどこから……カメラ、付いてないんですけど……」


 思いっ切りsevenに笑われてしまい、物凄く慌てつつ自分のパソコンをチェックするが。

 や、やっぱりカメラなんて付いてないよね? え、でも見えるの?

 だとしたら私が気付いていないだけで、初期装備でどこかにカメラがくっ付いていたりするのだろうか?

 早くも混乱しつつ、一人でモニターを弄り回していたのだが。


『シックス、本気にするな。いつも通り、セブンが揶揄っているだけだ。ついでに言うと、こういう時は司会進行の妨げになるから、返事は求められた時以外は不要だぞ? 人数が多いからな』


 フォーさんこと4cardの声が聞こえて来て、思わず顔から火が出るかと思った。

 私、思いっきり会議の進行阻害してしまいました! ごめんなさい!

 慣れてないんです! そもそもリモート会議自体初めてなんです!


『絶対アワアワしてる! これは間違いないね! 私には心の目で見えている!』


『seven、その辺にして下さいねー? 本当に話が進まなくなっちゃいますから。6keyさんも、先程4cardさんが仰ったように、此方が意見を求めた際に発言してくれれば問題ありませんよ? それこそ、ネットで授業を受けている様な感覚で聞いて頂ければと思います』


「す、すみませんでした! 今後気を付けます!」


 物凄く楽しそうにしているsevenに対し、担当している賞金首に対しては少々辛辣なのか、ものっ凄く呆れ顔でため息を零していた早乙女さん。

 こちらに声を掛けて来る時には、いつも通りの優しい微笑みを浮かべていたけど。

 や、やってしまった……皆の予定を合わせて、決められた時間内で会議しているというのに。

 私の不用意な発言のせいで、無駄な時間を使わせてしまった。

 というか当たり前だよね。

 こんなに人数が居る上に、小学校の授業じゃないんだから。

 皆揃って返事していたら、全然話が進まなくなっちゃう。

 なので、必死にペコペコと頭を下げつつお話の続きを大人しく待っていると。


『では、改めて。今回の企画はストーリー系と言いますか、賞金首全員が“お宝”を守るイベントとなります。細かい物語などは資料に付属させていますが、そちらは後で確認してください。今は皆様方にお願いする行動内容の説明を優先させて頂きますね?』


 だ、そうです。

 お宝、お宝ですか……。

 ファンタジー的なゲームだったら、それこそ色々想像出来そうだけど。

 ガンサバは基本リアル思考よりというか、誰もが欲しがる不思議な物品とか登場させ難い気がするんだけど……やっぱり、お金とか?

 ちょっとだけ気になってしまい、チラッと資料の最後の方のページを覗いてみると。


「ブッ!」


 思わず変な声が漏れたが、さっきミスしたばかりだからマイクのスイッチを切っておいて良かった。

 今度は私の声に進行が妨げられる事無く、今も早乙女さんがフィールドの説明なんかをしてくれている。

 そんでもって、私が噴き出してしまった理由というのが……別に、何か面白い事が書いてあったという訳では無いのだが。

 チラッと見ただけなんだけど、戦術核爆弾とかなんとか……凄く、物騒な単語が並んでいた。

 そのコードやら何やらを、依頼により各地から盗んで来た賞金首が~みたいな。

 いや、あの、ですね?

 今回の私達、もしかして思いっ切り悪役?

 そもそもこのゲームに正義のヒーローは居ないんだけど、映画で言うところの凄く悪い人達を演じるみたいだ。

 ストーリー的には、だけども。


『――という形になります。ここまでで、何か質問はありますか?』


 早乙女さんの声に、ハッと顔を上げてみると。

 なんか、全体のマップデータが表示されていた。

 ヤバイ、また会議の内容すっぽ抜けた。

 こんなんで私は、ちゃんと社会人になれるのだろうか?

 控えめに言って、無理な気がして来た。

 すぐ思考が明後日の方向へ飛んでいくし、コミュ力も無いし。

 不味い、お仕事として大人達の中に居ると、自分の能力の低さに泣きそうになる。

 とか思っていたら。

 私のパソコンから、ピコッと音を立ててチャットメニューが表示された。

 送り主は、兄。


『大丈夫か? 今はイベントマップの確認な。結構入り組んだ住宅地も多いから、お前向きにはなるが……今の内に不安要素があれば聞いておけ。後で俺に聞いても良いからな? 喋るのが嫌だったら、気になった個所のメモだけでもしておいてくれ』


 お兄ちゃぁぁぁん! 大好き!

 もうずっと兄のお手伝いだけして生きて行きたい、ホント何でもやるので。

 今度は違う意味で泣きそうになりつつ、今しがた表示されているマップを隅々まで確認。

 この間にも、他の賞金首の皆が色々と質問をしているけども。

 ここの構造は~、街中の状態は~、建築物はどっちの方角を向いているのか~などなど。

 す、すごっ!? そんな事まで皆考えてるの!?

 でも9Kさんみたいなスナイパーとかだと、日の光とか月明かりでも気になるのかな。

 確かにこの辺の事前情報の有無で、身を潜める場所とかも色々予想が変わって来るもんね。

 凄い、聞いてるだけでも勉強になる。

 それこそ前回、sevenと一対一をやった時みたいな“環境を覚える”という手間が、資料を見ただけで省略出来るのか。

 そういう意味では、私だってちゃんと見ておかないと。

 周りが凄い武器を使っている中、私はハンドガンだし。

 環境を味方に付けないと、ずっと慌てっぱなしになってしまう事だろう。


『とまぁ、こういう状態ですね。他に質問はありますか?』


『はいはーい、早乙女さーん。もしかしたら、次の話になっちゃうかもしれないんですけどぉ……今回私達が守る“お宝”、サイズってどれくらいですか? これによっても、戦い方変わってきますよね? まさか宝箱担いだまま戦えって訳じゃないでしょうし』


『俺からも、その質問に重ねて良いだろうか? そもそも賞金首は前回のイベントで、1キルもされなかった者達だって居るんだ。プレイヤー側の“奪う”という行為が、あまりにも難易度が高すぎる様に思える。そうなると……何かしら“優遇措置”があるのだろう? この辺の状況が想像出来ないと、行動予測が立て辛いと思う』


 物凄く普通に会議している皆様と同様、sevenと4cardがそう声を上げてみると。

 画面に映った早乙女さんが……気のせいかもしれないけど、ニヤッと口元を上げた気がする。

 うーむ、これは。

 何となくだけど、嫌な予感。


『今回皆様に運んでもらう物品、それは“データ”です。各々の端末に保管されたソレを、特定の場所まで運ぶのが任務。しかしながら……あ、ちょっとファンタジーな設定入りますけど。専用端末を用いると、奪取可能なんですよ。決められた効果範囲内に、一定時間滞在すると相手の端末が勝手に解読してデータを奪っていく。つまり――』


『その“一定時間”、相手プレイヤーを近くに置いたままにする事自体がタブー。俺達は常に移動を続け、近付いて来た敵は全て狩る必要がある訳だ。ユーザー側としては、近付きさえすれば……俺達賞金首を、直接相手せずに済む』


『その通りです、9Kさん。ちなみに、データを奪ったプレイヤーをキルする事で“お宝”は賞金首の端末に戻ります。逆にプレイヤー側としては、イベントを成功させればクリアという形なので、奪ってから端末を持ち帰る事が最優先。ユーザー側で争い合う事はほぼ無いと想像して下さい、またお祭りですねぇ~』


 ちょぉぉぉ!?

 え、待って? 今回のイベント、近づかれる事自体が不味いの!?

 だとしたら私、滅茶苦茶不利なんですけど。

 超近接戦じゃないと、私は戦えないんですけど!?

 待って待って、コレ本気で不味い。

 一定距離、一定時間っていうのがどれくらいなのかにもよるけど。

 他の賞金首が近付いて来るプレイヤーを抑える戦法を取る中、私は戦うにしてもその範囲内に飛び込まないと戦えない。

 つまり常に奪取される危険に身を晒しながら、奪われる前に相手プレイヤーを狩り尽くさないといけないって事になるんですけど。

 とりあえず、資料のメモ欄に「ムリムリムリムリ……」とだけ文字を綴り続けた。

 本当に待って、このイベントに参加しても……多分私、時間内持久走する事になる。

 戦う事自体がタブーだよこんなの、絶対近付いちゃうもん。

 などと思いつつ、頭真っ白状態で口から魂が抜けるかと思っていれば。


『しかしこのイベントでは、各賞金首に得手不得手が非常に大きく影響する。此方からの提案としては……他の賞金首と“組む”事を前提とした作戦を練りたい。ある程度位置を固定されるスナイパーの俺や、超近接型のシックスが不利過ぎる状況に思える』


 そう言ってくれたのは、あんまり聞いた事のない声だったけど……どうやら9Kさん。

 やったぁ! 私の不安を、他の人が言葉にしてくれた!

 ハイハイハイ! 私も賞金首タッグ大賛成です!

 というか私だけだと、多分最初に黒星上げてリタイヤになると思います!

 なんて、元気良くモニターの前で手を上げてみれば。


『まぁ、当然そうなりますよね。なので今回の会議の一番大きな部分は……皆さんの、“チーム分け”です。合同依頼として複数人で受けたって設定なので、今回ばかりは元々の賞金首設定は忘れて良いですよー。ストーリーは、此方で色々“合わせます”から。団体戦ですので、大きく分けた状態イベントに参加してもらいます』


 ニコッと微笑む早乙女さんが、そんな事を言い放ったではないか。

 つい先ほどまで、私も「それでお願いします!」とばかりに元気を手を上げていた筈なのに。

 早乙女さんの言葉に、ゾッと全身が冷えた気がした。

 あっ……コレ、今までに悲しい記憶しか残ってないヤツ。

 はーい、好きな人とグループになって~っていう、学校の先生が放つ悪魔の言葉。

 賞金首タッグ賛成とかイキってごめんなさい、最後に残って先生と一緒に行事をやる事になるのはいつも私です。

 ということで気分が急降下したのを感じながら、ショボンと項垂れてみると。


『はいはいはい! シックス! 私と組むでしょ!?』


 真っ先に、sevenが大きな声を上げてくれた。

 え、うそ、泣きそう。


『フィールドと企画書を見る限り、チームを細かく分けるつもりは無さそうだな……早乙女さん、ペアじゃないといけないという事が無ければ、俺もシックスとセブンのチームに参加したい。どの程度のチーム分けを想定しているのだろうか? 大きく分けると言っていたが、人数はどの程度だ?』


 続いて4cardの発言。

 駄目だ、ガバッと顔を上げたと同時にブワッと涙が出て来た。

 私、こういう場面で誘ってくれる人本当に初めてなので。


『中途半端にチームを分けるのなら、俺はソロでも構わない。他の面々が目立ってくれるのであれば、いくらでも身を隠す暇はあるからな。だが……2チーム程度に分ける、程度なら俺もそちらに参加させてもらいたいな。派手に目立つヤツ等を援護する方が、此方としては楽だ』


 なんとなんと、今回は9Kさんまで名乗り出てくれたではないか。

 もはや号泣、私今ズビズビしながらタオルで顔面押さえてます。

 こういう場面で、真っ先に声掛けてもらえる事って、本当ぉぉ~に無かったので。

 皆の話し合いが終わるまで、教室の隅っこでポツンとしていた人なので。


『また詳細を詰めてから、にはなりますが……6keyさんとしては、問題ありませんか? 随分とお熱い誘いが集まっていますけど』


 早乙女さんの声に、慌ててマイクのスイッチを入れてから。


「ぁい……だいじょぶ、です……がんばります……」


『え、あれ? 6keyさん、泣いて……る? なんで? ど、どうしたの!? 大丈夫!?』


 画面に映っている早乙女さんが、急に慌てた様子になってしまったけど。

 でも、こればかりは仕方ない。

 こんな経験、人生で初めてなので。

 うぅぅ……凄い、ガンサバ凄い。

 こういう時私にも声掛けてくれるお友達、出来たぁぁ……。

 などとズビズビしていると、兄から怒涛の如くチャットが飛んで来たけども。

 ごめんなさい、御心配お掛けました。

 妹は大丈夫です、嬉しいだけです。

 という事で、とんでもない状態になったままフニャッと笑みを浮かべてみせるのであった。

 カメラ付いてないから、皆からは見えないだろうけど。


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