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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
2章

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第29話 6・7


『あー、その、なんだ。緊張するなって言っても無理なんだろうが、出来る限りいつも通りな? 大丈夫そうか?』


「だ、だいじょばなぃ……」


 その日私は、一応お仕事? としてガンサバイブオンラインにログインしていた。

 なので、当然“6key”のおじさんキャラの方で。

 用意されたのは特別フィールド。

 というか、広い廃屋? みたいな所で、いつも通りハンドガンを用意していた。

 今回やっているのは……ガンサバのイベントという訳では無く。


『それじゃ、戦闘が開始されたら両者の無線は聞えなくなりますけど。用意は良いですか? 6keyさん』


『よろくしおねがいしまーす! シックスと一対一が出来るとか、ちょぉぉ~楽しみ! 思いっ切り、遠慮なく全力で来ちゃって下さいねぇ~!』


 無線からは、早乙女さんの声と同時に……物凄く楽しそうな女の人の声が聞えて来た。

 “seven”と言う名の、賞金首。

 一緒に遊ぼ~みたいな事を言われていた筈だったのだが、運営が絡んだ状態で始まったのは……何と模擬戦。

 これも撮影して、今度のPVに使うかもって話が出ているらしいし、他の賞金首の皆様にもライブ中継&動画が提供されるんだとか。

 いやいやいやいや? 何その環境、怖いって。

 プレッシャーだけでも、何もしてない内から身体がガクガク震えてるのが分かるんですが?


「がががが、ガムバリマス……」


『おーい、夢月ー? 本当に大丈夫かー?』


『あ、あははは……妹さん、こういう環境になると素が出ちゃうのね。というか、無線聞きながら6keyが見えてると違和感が凄いですねぇ……』


『キャー! シックス可愛い! 映像だけなら渋格好良いおじ様なのに、物凄く可愛い事言ってる! 渋い声で喋りながらプルプルしてるー!』


 うるさいです、本当に。

 特にseven、というか小鳥遊さん。

 そういう事言わないで下さい、気にしているので。

 とはいえこのまま情けない姿を晒したのでは、賞金首の恥晒しどころかPVに使うなんて絶対出来ない映像が撮影されてしまうのだろう。

 なので一度大きく息を吸い込んでから。


「…………」


 瞳を閉じて、ギュッと握り締めたハンドガンの感触に集中した。

 しっかりと手に馴染む、いつも通りの感触。

 普段の私だったら大きすぎる筈の、大型拳銃。

 そしてこれは、今の所賞金首しか持つ事の出来ない特別仕様。

 集中しろ、今の私は普段の私じゃない。

 ガンサバイブオンラインの賞金首、その一人である“6key”だ。

 なら……やるべき事を、やれ。

 これは、“仕事”だ。


「良いよ、お兄ちゃん。準備出来た」


『了解、そんじゃ始めようか。“楽しんで”来い、夢月』


『キャー! ガラッと雰囲気が変わった! すっご、威圧感バリバリ!』


『はぁ、もう……ごめんね、夢月ちゃん。ウチの賞金首が煩くて……でもそれじゃ、始めましょうか』


 全員の声が聞こえた同時に、システムメニューが目の前に表示された。

 そこに書かれているのは、私と相手の一対一の決闘という内容。

 6key VS sevenと書かれた対戦開始のカウントが現れ、やがてその数字がゼロに変わったその瞬間。


「……ふっ!」


 私がログインした場所であった個室の扉を蹴破り、そのまま廃屋の廊下を駆けだした。

 両者共、得意とする武装の情報や戦い方の資料も公開されている。

 向こうはP90ってマシンガンを使っているらしく、とにかく弾数が多いのと、弾も特殊で防弾装備もあてにするなと警告を受けている。

 だったら、一か所に留まるのは危険。

 とにかく動き続けて、当てられない様にするしかない。

 そして今私達が居るのは、未実装のフィールド。

 つまり両者共、この場所を全く知らない。

 なら、私が今の内に出来る事は。


「お兄ちゃん!」


『こっちで周囲を警戒しておく! お前はとにかく走り回って、“覚えろ”!』


 兄の言葉を聞きつつ、一つのフロアを一気に駆け抜けて全て記憶に叩き込む。

 この建物は六階建て、相手がどこにログインしたのかは今の所不明。

 だとすれば、相手と遭遇する前に可能な限りマップを覚えろ。

 此方はハンドガン。

 コレに対して相手はフルオート可能な武器な上、一つのマガジンで総弾数50発というふざけた数字。

 いや冗談でしょって言う数な訳だけど、実際にそうなのだから仕方ない。

 しかもこれを、相手は二丁持っているのだ。

 更にsevenの特徴……それは、まさにゲームと言う様な“あり得ない挙動”。

 どうやったらそんな動きが出来るのかという程に、滑らかに“地面を滑る”様にして動き回るのだ。

 私には真似絶対出来ないような動きを可能にする、それこそ“ゲームのプロ”。

 どう考えても格上、しかも装備まで向こうの方が上だというのなら……そんな人に勝つには、“環境”しかあり得ない。


「覚えた! 下の階!」


『行け行け行け! どうせ隠れたところで、向こうの弾丸は壁を貫いて来るぞ! だったら正面からぶつかる前に、お前に有利な状況を整えろ!』


 なんか凄く恐ろしい事を言われた気がするけど、今だけは気にしない様にしながらとにかく走った。

 こんな行動をしていれば、相手に此方の場所を教えている様なものだが……結局、いつかはぶつかるのだ。

 だったらコソコソしながら待っていても、此方が不利になるだけ。


「ココが良い!」


『判断早いな!? 大丈夫か!?』


「多分これ以上調べるのは無理! 相手は私以上に速く動けるから――」


 なんて、叫んだ瞬間。

 バリンッ! と派手な音を立てながら、相手が窓の外から飛び込んで来たではないか。

 窓ガラスを蹴破る様にして、此方に両足を伸ばした状態で。

 いや何だソレ!? とか言いたくなったけど。

 声を上げる間もなく厚いブーツの底が此方の身体を蹴飛ばして来て、こっちはド派手にふっ飛ばされてしまった。

 部屋の扉を破る勢いで廊下まで押し出されたが、すぐに身体を起こしてからハンドガンを構えてみれば。

 相手もまた、此方に銃口を向けていた。


「ヤッバ……っ!」


 一気に駆け出し、姿を隠しながら廊下を突き進んでみたのだが。


「シックス、みぃ~つけたぁ!」


 ガルルルルッと、何だか他の銃より軽い音を立てながら……乱射された。

 いや、待って!? 滅茶苦茶壁貫通してくるんだけど!?

 慌てて廊下に這いつくばってみれば、壁を抜けた弾丸が頭の上を通り過ぎていく。


『リペリング降下とか有りかよ!? 早乙女さん、このフィールドの事前情報をsevenにリークしてたんじゃないだろうな!?』


「なにそれ!?」


『ロープ使って一気に降りるヤツだよ! 今は気にするな! 相手の視界に入っていない間に走れ!』


 兄の声を聞きつつ、再び起き上がって他の場所へとダッシュ。

 とはいえ、sevenを倒すなら……さっきの部屋が一番都合が良い訳で。


「シックス~? どこ行っちゃったの~?」


 えらく楽しそうな声を上げながら、未だにそこら中に向けて発砲して来る対戦相手。

 間違い無く、誘っている。

 いい加減に弾をバラ撒きながら、リロード時間さえしっかり教えて来ているかの様。

 相手が望んでいるのは、近接戦闘。

 私の得意分野で、向こうは戦おうとしているんだ。

 だからこそ、“攻めて来い”と言わんばかりに派手な行動を取っている。


「……行く」


『正気か夢月!? 完全に相手の罠だぞ!?』


「けど、あの部屋じゃないと、多分勝てない」


 それだけ言って隠れていた場所を飛び出し、姿勢を落としながら先程の部屋まで走り抜ける。

 その際、手近にあった花瓶を手に取って。


「ホラホラ、私はここに――」


 またsevenが声を上げた瞬間に、思い切り窓に向かって花瓶を投げた。

 窓ガラスと花瓶がぶつかり、両者は派手な音を立てて砕け散っていく。

 こうすれば、きっと。


「え、ちょっ!? マジかい! 絶対に誘いに乗って来ると思ったのに!」


 すぐ近くの室内から、慌てた様な声が聞えて来た。

 向こうはラペ……リペ? 何とか降下ってヤツを使って此方に接近したのだ。

 だからこそ、窓の外でさえ“移動範囲”と認識している筈。

 なら硝子の割れる音がすれば、私が外へ向かって飛び出したと認識すると想像したのだ。

 彼女の真似をしたとか、それとも緊急で思いつく行動として筋は通る。

 この予想が的中したのか、相手がバタバタ慌てて移動し始めた音が聞えて来た瞬間。

 思い切って、室内へと飛び込んだ。


「フッ!」


「うそぉん!?」


 ふざけた様な声を上げる彼女が視界に映った瞬間飛び掛かり、相手の銃を掴んだまま身体を滑り込ませる様にしてグルッと回転させた。

 こんな事をされれば、銃を掴んだままでは普通引き倒される。

 だからこそ相手は、パッと手を放して此方から距離を置こうとする。

 でもそれ、私の“予想通り”なんだけどね?


「ぐっ!?」


 向こうの銃を奪ってから、身体の横回転をそのまま使って片足を突き出した。

 結果、sevenのお腹に叩き込まれる此方の踵。

 苦しそうな声を上げつつ後退する彼女に向けて、奪った銃を構えながら引き金を引いてみたのだが。


「残念、セーフティが掛かったままだぜ? ってね」


 引き金からは、カツッと“引き切っていない”音が鳴り響き。

 相手は腰に装備した、もう一つのマシンガンへと手を伸ばしている。

 これ……やっばぁぁ!? 向こうの方が一枚上手だった!


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