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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
1章

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第15話 兄は心配性


「夢月~ちょっと話あるんだけど良いかー?」


「はーい」


 本日は早めに帰って来たお兄ちゃんと、一緒に夕飯を食べた後。

 キッチンで片付けをしているところで声を掛けられ、パタパタとリビングに戻ってみると。


「会社の方で、お前を“ガンサバイブオンライン”の宣伝キャラクターにしようって声が上がってな? 良い?」


「へぁ?」


 思いっ切り、間抜けな声が出た。

 私を、宣伝キャラクター? 何故?

 完全に思考を停止させながら首を傾げていると、兄は動画サイトをタブレットに表示させて此方に見せて来た。

 そこに映されていたのは……昨日の、私の戦闘映像。

 正しくは“6key”というキャラクターのおじさんな訳だが。


「撮られた!?」


「ん、まぁ。そこは別に問題な訳じゃないんだけどな? ちょっとこの動画が注目を集め過ぎたのと、賞金首で顔を晒しちゃってるのお前だけなんだわ」


「問題じゃん! というか他の人どうやって戦ったの!?」


「普通に顔を隠したり、とかだな? あと夢月、お前は非常に肝心な事を忘れている。銃って、基本的には遠距離武器な? ここまで接近して戦う方が稀な?」


 ……そっか、それもそうだ。

 物凄く今更過ぎる答えに辿り着き、思い切りため息を零してしまった。

 むしろ私の戦闘方法の方が異常なんだよね、普通鉄砲のゲームで接近戦得意にならないよね。


「という事で、晒されたモノは仕方ないって方針。お前の戦闘映像とか切り貼りして、PVの素材に使って良い? それからお前のアバター使ってポスターとか作って良い?」


「う、うん……それでお兄ちゃんの役に立つんだったら、別に良いよ……頑張るよ」


 なんかもう、ゲーム内ではより一層狙われるキャラクターになりそうだけど。

 今後も同じようにクランばかりを相手にするかと言われると、多分違うだろうし。

 だって賞金首は“イベント”なのだ。

 だったらユーザーを飽きさせない様に、色んな所で定期的に使われることだろう。

 そう考えると、先が思いやられると言うものだが。

 こういう使い方なら、どうしたって今後は増えていくだろうし。


「あっ、そうだ。お兄ちゃん、私も一つ我儘言って良い?」


 ここで一つ、思い付いた。

 昼間学校であった事、それを実行する為にはどうしても兄の了承が必要なので。

 不思議そうに首を傾げる兄に対して、ゴクリと唾を呑み込んでから。


「新規アカウント、もしくは新しいキャラクター……作っても、良い?」


 ポツリと呟いた瞬間に、兄はタブレットを取り落とした。

 ガツンッて、結構痛そうな音を立てて床に転がったソレに対して見向きもせず、お兄ちゃんはプルプルと震え始め。


「ど、どうした夢月!? “6key”飽きちゃったのか!? 今後登場しないキャラクターになっちゃうと、この案件通せなくなっちゃうんだけど!?」


 物凄く慌てた様子で、こちらの肩をガシッと掴んで来た。

 どうやら、また私の言葉の少なさが誤解を生んでしまったらしい。


「ち、違うよ!? これまで通りあのキャラは育てていくし、お仕事ではそっちを使うよ!? けどね、そうじゃなくて……えぇと、“普通のプレイ”でも……遊んでみたいなぁって。協力プレイとか、普通のオンラインっていうのも、経験しておいた方が良いのかなぁって……」


 どうにか声を返してみれば、兄は再びプルプルと震え始め。


「妹が……やっと、やっと社交的に……」


 なんか、涙を流し始めてしまったではないか。

 いや、うん。なんかゴメンね? コミュ障で。


「が、学校でね? ガンサバをやってる人が居て、一緒にやろうって誘われたから。これを期に、私も普通のオンラインっていうのもやってみたいなって。それにお兄ちゃんの作ってるゲームは、基本的にプレイヤースキルがモノを言うもんね。だったら、私の経験が第一なのかなって……」


 もっともらしい言い訳、普通に遊びたいって言うだけの願望を叶えるための理由作り。

 だってオンラインで初めて、“友達”が出来るかもしれないのだ。

 この機会を逃したら、間違いなく私は一生ぼっち道を突き進む事だろう。

 だからこそ、フレンドになってくれるとリアルで言われた相手を逃すまいと、必死に言葉を紡いだのだが。

 こちらの言葉を聞いた兄は、ピタッと動きを止め。


「ほほぉ? 学校で、つまりリアルの友達って事かな? もちろん女の子なんだな?」


「え、あ、え? うんと、友達って言ったらおこがましいって言うか……今日、初めて喋ったばかりだし。それから、えぇと……男の子、かな?」


 そう言葉にした瞬間、なんだろう。

 兄が、壊れた。

 ムンクの叫びみたいな体勢になって、奇声を上げているんだけど。


「だめぇぇぇ!」


「えっ!? 駄目なの!? 会社の規定とか、ゲーム的な違反になっちゃう?」


「違うけど駄目ぇぇぇ! 確かにサブキャラOKなゲームだけど、そもそもあのキャラは運営管理だけど、個人で作るの何も問題無いけど、駄目でーす!」


「え? え? OKでも、駄目なの?」


 はて? と首を傾げて問いかけてみれば、相手は再び此方の肩をガシッと掴んでから。


「夢月、相手は男の子なんだな?」


「う、うん。そう、だね?」


「今日初めて喋ったんだな?」


「そう、です」


「駄目ぇぇぇでっす!」


 そんなぁ!?

 だって新キャラでゲーム始めたら声掛けるって約束しちゃったし!

 明日なんて言えば……いや、学校では今後喋るか分からないけど。

 けど約束を放置したままっていうのは気まずいよ!?

 などと考えながらも、アワアワと慌てていると。


「まずはお兄ちゃんが居る時にウチに呼びなさい……いや、待て。それじゃ住所が知られるな……よし、今度有給取るから、お兄ちゃんとも会わせなさい。相手を見て、俺が判断する」


「え、え? え?」


 よく分からないけど、お兄ちゃんと合わせればOKという事だろうか?

 だったらまぁ、相手が了承してくれれば良いだけなんだけど。

 ゲームとは違う所でお願いしてしまうのは、正直忍びない。

 けど、これをこなさないと新キャラは駄目って言うのなら……仕方ないか。

 という事で、相手に相談しようとスマホを取り出してみれば。


「なっ!? 夢月! 連絡先教えたのか!?」


「う、うん。だって、連絡手段無いと一緒にゲーム出来ないし……」


「お前っ、おまっ! あぁぁもうっ! 連絡取るのは俺の前でやりなさい! オンラインは色々危ないの! というか思春期の男子はマジで危ないの! もうちょっと警戒しろ!」


「えぇ……?」


 よく分からないが、兄の見える範囲で相手……黒沢君と連絡を取る事となり。

 頭捻りながら文章を作ってみたのだが。

 普通の連絡って、これで良いのだろうか……?


 夜分遅くに失礼いたします、白川です。

 本日お話したガンサバイブオンラインの件なのですが、マルチプレイをするのであれば一度黒沢君とお話したいと保護者から条件付けを頂きまして。(保護者とは言っても、私の兄です。両親ではありません)

 大変お手数なのですが、学校外で多少お時間を頂く事は可能でしょうか?

 心苦しいのですが、どうかお願い致します。


 という、とても固い文章を送信してみた結果。

 既読の表示はすぐに付き、その後数分待ってから。


『わかりました! ガンサバは結構ハード系というか、確かに偏見がありそうなゲームではありますからね。俺の方で、お兄さんを説得してみせます! 頑張って許可を捥ぎ取るので、白川さんは楽しみに待っていて下さい! 絶対に一緒にゲームしましょう! 本当に面白いゲームですから! 日程などは其方に合わせますって、お兄さんに伝えてもらえると助かります。バイトとかあっても、休んで説得に向かいますから!』


 という内容の返事を頂いた。

 これを見て、兄はウ~~~~ム……と長い声を上げてから。


「良い子じゃないか……いやしかし、面接は実行だ」


「あ、はい……」


 よく分からないけど、兄にも譲れない何かがあるらしい。

 という事で、相手には『また追ってご連絡致します、よろしくお願い致します』とだけ返事を送っておいた。

 まぁ、うん、なんとか……なりそうかな?

 などと思いつつ、改めて食器を片付けようとキッチンへと向かった所で。


「あ、すまんもう一個。他の“賞金首”がお前に会いたいって言い出しててな? 今度の休みとか、予定の空いた時で良いんだけど……ウチの会社、一緒に来てもらって良いか? マジで軽い顔合わせみたいなもんだけど」


 物凄く軽く、そんな事を言われてしまったではないか。

 いやそっちの予定はアッサリ決めるんですか!? というのと。

 全然知らない人と話すの? 本気で?

 同じ賞金首ですって言われても、私全く喋れる気がしないんですけど……。


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