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神託少女は今日もテキトーを言う  作者: 絹田屋


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プロローグ


 死に方というのは、人の本質を表すと思う。


 わたしの死に方は、本棚に潰された。


 漫画の棚と、小説の棚。両方が同時に倒れてきた。体感では二秒くらい。二秒で全部終わった。痛かった記憶は、ない。気づいたら視界が真っ白で、なんとなく、ああ死んだんだなと思った。


 後悔は、あまりなかった。


 強いて言えば、積んでた新刊の続きが読めなかったことくらい。あとは概ね満足していた。


 本に埋もれて死んだ。まあ、本望か。



 転生してまず確認したのは、自分の髪の色だった。


 前世のわたしは髪が茶色だった。染める気力もなかったし、別に嫌いでもなかったが、ずっとうっすら思っていた。黒髪ロングに生まれたかったな、と。


 色白で、黒髪で、ストレートロングで。


 それはわたしが前世で読み漁った漫画と小説に、何度となく登場した姿だった。自分の体でやってみたかった。あの髪を三つ編みにしてみたかったし、片側だけ耳にかけてみたかったし、さらっとおろして窓辺に佇んでみたかった。


 少し経って、鏡というものを認識できる頃になって、わたしは自分の顔を見た。


 黒髪美幼女がそこにいた。


 思わず声が出た。泣き声ではなく、喜びの声だった。転生初の喜びの声だった。


 『やった〜〜〜!えっ、まって。今世のわたし、赤子時点からビジュ強すぎでは?』


 前世の望みが全部ここに詰まっていた。



 両親は、優しかった。


 父は穏やかで、母は朗らかで、二人ともわたしに会いに来るたびに何かを持ってきた。お菓子だったり、綺麗な小物だったり、見たことのない造りの絵本だったり。


 部屋は広くて、よく日が当たって、本が増えていった。


 外には出なかった。


 出てはいけないのではなく、出る理由がなかった。部屋の中に全部あったから。本があって、お菓子があって、鏡があって、両親が毎日来てくれた。


 『ここ天国では?前世のオタクが夢見た環境じゃん。家賃ゼロ、ご飯出てくる、本読み放題、外出義務なし。最高すぎる』


 本気でそう思っていた。


 鏡の前でポーズを練習しながら、本を読んだ。窓から差し込む光の向きを確認しながら、本を読んだ。黒髪を三つ編みにしてほどいてまた三つ編みにしながら、本を読んだ。


 とても良い日々だった。



 後になって知ったことだが、わたしの部屋は、世間的には座敷牢と呼ばれていたらしい。


 わたしは「忌み子」として届け出られていた。呪われた不吉な子、という触れ込みで。でも実際には、わたしにとってこの部屋は城だった。


 これはそういう話だ。


 何も知らない黒髪の幼女が、前世の漫画と小説の名言を呟いていたら、いつの間にか国を動かしていた——後に「黄金の世紀」と呼ばれる時代の、ちょっと間の抜けた始まりの話。

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