表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/54

52話 神殿と加護と恩恵と

「おぉ……! これはこれは、ようこそいらっしゃいました、セイル・セインクラウス殿。お仲間の方々も、歓迎いたしますぞ」


 神殿に顔を出すと、長い髭のじいさんが笑顔で俺達を出迎えた。


 この神殿のお偉いさんらしいが……


「……覚えてねぇな」


 福祉、奉仕、社会的弱者の保護、個人能力のサポート……などなど。

 神殿というものは神様に対する信仰の場だけではなくて、様々な事を行っている。


 その中の一つに、個人の能力を調べる、測るということがある。


 本人の適性を調べて。

 正しい道、生きやすい選択を後押しするのだとか。


 自分の生き方なんて自分で決めりゃいいと思うが……

 ま、神殿に来てまで野暮はやめておこう。


 そんな神殿を頼る人は多く、いつも混んでいることが多い。

 適正検査となると予約が必要になることも。


 ただ、今回俺達はギルドが仲介に入ってくれて、スムーズに来訪することができた。

 その際、神殿やそこで働く人達のことも教えられたのだが……


「……やっぱり覚えてねぇな」


 悪人ではなくて、きちんと仕事をしてくれるのなら、他はどうでもいい。

 適当な性格のせいか、どうでもいいことは忘れたな。


「本日は適性検査と伺っていますが……」

「ああ」


 ユナとアズを見た。

 二人はこくりと頷いて、前に出る。


「えっと……私達の適性検査をお願いしたいんです」

「冒険者とか、治癒師関連とか、できればそういうのがあると嬉しいわ!」


 そういうのは自分で選べないと思うぞ。


「ふむふむ、なるほど……でしたら、まずは冒険者として有効なスキルを持っているかどうか。あるいは、どの方向が正しいか。それを確認いたしましょう」

「「お願いします!」」

「そちらの方は……?」

「あたしは付き添いだから、気にしないで」


 チェルシーは適当に頷いてみせた。


 チェルシーは魔法専門で、迷うということもない。

 これまでもこれからも魔法使い一筋だろう。


 アズとユナも、チェルシーのように迷うことがないように、いい検査結果が出るといいが……

 まあ、そこは神頼みしかないか。

 さすがにここは俺の出番はない。


「ねえねえ」


 チェルシーが、そっと小声で話しかけてきた。


「アズちゃんとユナちゃん、どんな検査結果が出ると思う?」

「エルフだし、魔法適性が高いんじゃないか? そうなったら、チェルシーが面倒みろよ」

「それはまったく問題ないけど、二人は、セイルにも教えてほしいと思うよ?」

「あ? 俺は治癒師だから、普通の魔法使いのことなんてさっぱりわからねえぞ。チェルシーが教えた方が何倍も効率がいいだろうが」

「はぁ……これだから」


 なぜか呆れられてしまうのだった。




――――――――――




「では、こちらの水晶に順番に手を」

「「はい!」」


 検査をする部屋に案内された。


 じいさんの言うことに従い、アズとユナは、部屋の中央に置かれている水晶に、それぞれ順番に手を置いた。

 水晶が淡く輝く。


「ふむ」


 良い結果なのか。

 それとも悪い結果なのか。

 じいさんは神妙な顔をしているため、後者の可能性が高いか……?


「ど、どうなんですか……!?」

「あたし達、どんな適性があるの!?」

「それは……」


 じいさんは目を逸らす。

 これは、悪い結果か……?


 ややあって吐息をこぼす。


「……特にこれといった適性は見つかりませんでした」

「えぇ!?」

「そ、そんな……」

「申しわけありません。こういうことはほとんどないのですが、裏を返すとたまにあり……その方面では、なんの適性もない、ということはなくはありません」

「「……」」


 二人は言葉を失い、絶望的な表情に。

 それを見て申しわけないと感じているらしく、じいさんが慌てた口調で言う。


「で、ですが、それは冒険者と治癒師関連だけという話です。他の分野を含めて、全方位で調べれば、必ず適正が見つかるでしょう」

「他の分野、って言われても……」

「そんなところでは……」


 アズとユナが喜ぶことはない。

 冒険者。

 あるいは、治癒師としてがんばりたいと思っていたのだろう。


 ……さすがにここまでくれば、俺でもわかる。


「二人共」

「わっ!?」

「ひゃん!?」


 わしわしと、アズとユナの頭を撫でた。


「あう、髪が……」

「な、なにすんのよ!?」

「気にすんな」

「「え?」」

「適正なんてどうでもいいだろ。指針のようなものだ。適正があろうとなかろうが、やれるヤツはやれる。できないヤツはできない。ようは、やる気の問題だ。アズとユナなら、まあ……適正なんて気にしなくても、色々とできるだろ」

「……セイルさん……」

「もしかして……あたし達のこと、励ましてくれているの?」

「しけた顔をしたやつが近くにいると鬱陶しいだけだ」


 気がつけば、チェルシーがにこにこ笑顔になっていた。


「あたし、セイルのそういうところが好きかな♪」

「うるせえ、黙ってろ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
下手に適正があるとその分野に特化してしまって他の事が出来なくなるのが困ります。 適正が無いならオールラウンダーになって、どんな場面でも対処できる技術を身に付ければ良いのですよ。
ものは考えようで、突出した適正が無いだけでまんべんなく適正が高ければどれが適正なのか言えない事も。何ができるでなく何がやりたいかが重要って感じかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ