50話 新しい生活
「オンッ!」
「ごほ!?」
突然、腹部に重い衝撃が。
慌てて起きると、なにやら誇らしげな顔をしたソルが乗っていた。
「……お前かよ」
「オン! ハッハッハッ」
「あー……起こしてくれたのか?」
「ワフッ」
「……サンキュー」
適当に、わしわしとソルの頭を撫でておいた。
本当は、もう少し寝たかったが……
「ま、たまには早起きも悪くねえか」
もう一度ソルを撫でつつ、俺はベッドから降りた。
――――――――――
「あ、セイルさん!」
「おはよ、セイル」
ユナとアズは、すでにテーブルについて朝食を食べていた。
ユナはトーストとサラダ。
アズは、朝から分厚い肉。
食べるものでも性格が現れているな。
俺も席について、注文をした。
「二人は早いな」
「ふふん。特訓しないといけないからね!」
「朝は、自由に使える時間なので」
「よくがんばるな。俺は、朝は寝ていたい」
「セイルは怠け者ね」
「ダメだよ、アズ。セイルさんは、日々、色々なことで疲れているんだから」
「ま、それもそっか。休める時に休んでおかないとね」
「そういうこった。体力にはそこそこ自信はあるが、それでも無限じゃねえからな。いざって時に動けないんじゃあ、話にならねえ。自身の体調管理も治癒師の仕事だ」
言いつつ、運ばれてきた肉料理を食べる。
朝から、多少は重いかもしれないが……
今はガッツリと食べたい気分だ。
「チェルシーは?」
「見てないけど……」
「まだ寝ているんじゃないでしょうか?」
「んだよ。俺よりも、チェルシーの方がねぼすけじゃねえか」
「チェルシーはいいの」
「なにか研究をしているみたいで、最近、夜更かしが多いみたいです」
なんの研究をしているんだ?
チェルシーは、かなりの常識人ではあるが……
魔法に関することになると、リミッターが外れる傾向にあるんだよな。
なんだかんだ、あいつは、研究者の気質がある。
「おはよぉ……」
ちょうどいいタイミングというべきか。
目をごしごしとこすりつつ、チェルシーが二階から降りてきた。
あくびをしつつ、席につく。
「みんな早いねぇ……」
「二人は朝練してたらしいぞ」
「朝練……すごいね。あたし、朝起きるのがもう練習だよ」
「意味がわからねえ」
そういえば……
チェルシーは、朝がけっこう苦手だったな。
クライブとパーティーを組んでいた頃、何度も何度も俺がチェルシーを起こしていた。
「ねえ、セイル。朝、ちゃんと起きられるような治癒を施して?」
「ざけんな」
「だよねー……」
「そんな都合のいいものに頼るんじゃねえ」
「ん? その言い方は、あるの?」
「あるな」
「「あるの!?」」
アズとユナが驚いていた。
「眠気覚ましの治癒、って……それは治癒の範囲なの? なんかもう、別の存在とかに聞こえるんだけど……」
「戦場とかだと、ずっと稼働しなくちゃいけねえからな。眠くてやれませんとか、手元が狂うとか、最悪だろ。だから、眠気覚ましの方法もあるんだよ」
「なるほど……そう言われてみると、そうかもしれないですね」
「もっとも、かなり強引な方法だからな。目は覚めるには覚めるが、後で、その分の眠気が襲ってきて、二日三日くらい寝ることになるぞ」
「あはは、意味がないですね……」
「そういうこった。眠気とか、自分でなんとかできる範囲は自分でなんとかしろ。甘えてばかりいたら、なんとかしよう、っていう気力がなくなっていくぞ。それは、心の病と似たようなものだ」
「うー……セイルは厳しいなあ。あ、このきのこソース美味しい」
チェルシーは不満そうに言うものの、パスタを食べて、すぐに機嫌を治した。
単純だな。
ただ、言い換えれば純粋ということだ。
そんな彼女にどれだけ助けられてきたことか。
「「うーん……」」
ふと、アズとユナが難しい顔に。
「どうしたんだ?」
「……ううん、なんでもないわ」
「はい。大したことじゃないので、気にしないでください」
「そうか?」
はいそうですか、と納得できないくらい、二人がなにかを隠しているのはまるわかりだったが……
ただ、危険なことを考えているわけじゃないだろう。
多少の無茶はするかもしれないが……
若いうちは、無茶をしてなんぼだ。
あえて俺が口を出す必要もないか。
本日から第二部スタート! ・・・というか、更新を再開します!
みなさんに応援いただいたおかげで、がんばって続きを書こう! と思えました。
ありがとうございます!
少しでも楽しんでいただければいいな、と思いつつ・・・
こちらもよろしくお願いします。




