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第12-1話 俺たち、今さら異世界に!?

 

 目の前に広がるのは巨大な石壁。

 天井までは高さ数十メートルはあるだろうか。


 その壁には巨大な魔法陣が描かれ、淡く点滅している。

 俺たちがいる大きな広間には複数の通路がつながり、全体で巨大な迷宮を形成しているようだ。


「ユウ……リンおねえちゃん……ハル……なんでここに?」


 目の前ではエレンが呆然と立ち尽くしている。


 ……ああ、ここが[探検者になろう]の迷宮だったらどんなにマシだったろうか?


 目に映る迷宮の圧倒的な存在感……鼻に感じるすえた匂い……靴の底に感じる石畳の感触まで。


 身体じゅうで感じる五感のすべてが……ここが()()()()()()()()()


 ……あの~。 俺たち異世界……エレンがいるアルフヘイムに来ちゃったと思われるんですが……いまさら異世界転移!?



 ***  ***


 事の始まりは数日前。 [探検者になろう]初の大規模イベントも、”ニーズヘッグの頭B”との激闘を経て無事終了し、ゴールデンウィークに突入した俺たちは、ひたすらまったりしていた。


 しばらくはのんびりと[探検者になろう]をプレイしながら、ゴールデンウィーク後半に来日するエレンと遊びに行くための準備をするかと考えていたんだが。


 きっかけは[探検者になろう]の新迷宮、”ヴァール”を探索していた時の事……


「のの? なんでこんな場所にマタタビが生えてるかにゃ~?」


「あ、こらハル! 勝手にどこかに行くんじゃない」


 例のごとくフリーダムなハルが気になるものを見つけ走り出す……慌てて追いかけた俺たちが見たものは……。


「おお! こんな所に”だんけちゅーるアゲルボタン”と書かれた()()()()()があるにゃ~! たまらんにゃ~! 押すのだ!」


「ま、待てハル! そんな怪しいモノを押すな……!」


「ぽちっとな」


 俺が止める間もなくボタンを押し込む欲望まみれの子猫ハル。


 その途端真っ黒な光が俺たちを包み……気が付いたらここにいたというわけである。



「なにこの雑な導入……」


「うう……下僕悠太ゴメンなのだ……」


 凛は呆れかえり、バツとして俺にデコピンされたハルは涙目で謝っている。


「ユウにぃ……ここってどう見ても[探検者になろう]のダンジョンじゃないし、現実だよね? それにこのでっかい魔法陣に……エレンちゃん」


 凛が呆然と呟く。


 そう。ここにいるエレンは来日するときの私服姿ではなく……黒のローブに黒のブーツ、魔法使いハットにマジックワンドという、ゲーム内での魔法使いの格好をしている。


「はい……ここはアルフヘイム王国、”王家の墓”最深部……私が”ニーズヘッグ”の監視と[探検者になろう]の管理を行っている場所……みんなは”こちらの世界”に転移してしまったようだね」


 エレンの口から改めて告げられた現実に、揃って俺たちは絶句するのだった。



 ***  ***


「あ、これ私がプレゼントしたぬいぐるみ! へへっ、飾ってくれてるんだ!」


「ふふ……この部屋は殺風景だから……ありがとうリンおねえちゃん」


 凛とエレンはさっそくなごんでいるが、俺たちがエレンに連れられ移動してきたのは大広間の端にある20畳ほどの広さの部屋。


 エレンの話では、彼女はここに寝泊まりしながら”ニーズヘッグ”の監視と[探検者になろう]の管理に励んでいるらしい。


 ここでエレンと共に、現状と今後の方針を確認することになっていたが……


「う~、おなかすいたにゃ~……”だんけちゅーる”は無いのかにゃん!」


 何故現実世界でもハルが()()()()()()()など、確認したいことはいっぱいあった。


「ふう、まずは現状確認を」


 部屋の中央にあるテーブルにみんなで腰掛け、エレンが入れてくれたお茶を一口飲む……なんというか不思議な味だな……。


「んんっ……最初に、ユウたちが転移してしまった原因だけど……世界間の転移は通常なら転移魔法でしかできない……なので、転移魔法の使える何者かがユウたちを召喚したと考えるのが自然だね」


「……まあ、”ニーズヘッグ”の仕業だろうな……」


 やはり俺たちは”召喚”されたのか……どうせ奴の仕業だろう。

 あきらめ気味に放った俺の言葉にエレンが頷く。


「うん。 魔力パターンの解析はまだだけど、ほぼ間違いないと思う……問題は……」


 気づかわしげに俺たちを見るエレン。

 ん? なにかあるのだろうか?

 転移魔法ならエレンも使えるのでは……現に何度も日本に来てるし。


「”召喚系”の転移魔法の場合、術者が意図的に元の世界に戻すか、術者が斃れない限り、元の世界に戻れないんだよね……」


「えっ!? マジ!! ということは……!」


 俺たちが日本に戻るための必要条件に気づいてしまったのだろう。

 ガタッ! と椅子を蹴倒し、凛が立ち上がる。


「そう……召喚騒ぎの張本人……”ニーズヘッグ”……おそらく残った頭の一体だと思うけど……を倒す必要がある」


「なるほど……奴は[探検者になろう]の中や、俺たちの世界側で俺たちを倒すのは難しいと判断し、自分のホームグランドに引き込んだという事か?」


「そうだとおもう。 だからみんなで対策を考えなきゃ……」


「は、はは……アタシたち、リアル異世界でリアルRPGか……」


 前途に待つ困難を想像し、俺たちは頭を抱えるのだった。


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