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第6-2話 スキーと温泉に行こう

 

 次の日。

 俺と凛とエレンは、クルマに乗って神鍋高原のスキー場を目指していた。


 俺と凛が作成した、”エレンちゃん初めてのにっぽん満喫計画”に従い、スキー場と城之崎温泉を巡る一泊二日のツアーである。


 先月のスキー旅行(第3-2話参照)にリモート参加したエレンは、絶対スキーをやってみたい! と言っていたので連れてきたのだ。


 ちなみに、また遭難事件が発生しても嫌なので、今日は完全な初心者向けのゲレンデに向かう。


 スキーをした後に城之崎まで移動、温泉巡りとカニを堪能するという、完璧な計画である。


「すごい……こんなスピードで走れるなんて、クルマってすごいね!」


 よく景色が見えるように助手席に座ったエレンは、車窓に流れる高速道路に感動している。

 ん? そんなに珍しい光景だろうか……。


「あれ、エレン……この風景がそんなに珍しいか?」


「んんっ……私、マルタの山奥に住んでるから、高速道路とか見たことなくて」


 エレンは、あ! という顔をすると、少し逡巡した後、恥ずかしげに告白する。


 マルタと言うと……地中海に浮かぶ島国だったはず……またすごい所に住んでいるんだな……日本に比べて環境が違い過ぎるので、なかなか住んでる場所を言い出せなかったのだろうか?


 おっといけない、その人にはその人の人生があり、言いにくい事情もあるだろう。

 ここは話題を変えるべきだな。


「……そうだ、バレンタインチョコありがとうな! たっぷり堪能させてもらったぜ」


「あ、アタシにもありがとね! ちゃんとお返しさせてもらうから」


 後部座席より凛がひょこりと顔を出す。


「びっくりしたよな……高さ30センチはある巨大なチョコエッグが届いたもんな。 Am○zonてすげぇ」


「うんうん、チョコエッグの表面に花がたくさん飾り付けてあって、かわいかったよね」


 チョコの重さは1キロはあっただろうか……食べ過ぎたせいで久しぶりにニキビができてしまった。


「ふふ……私のくに……村では、収穫のお祝いにチョコレートで色々な像を作って飾る風習があるの……ネットで見つけてとても懐かしくなったので」


 そう語るエレンの表情は、本当に懐かしそうで。 俺はそれ以上何も言えなくなってしまった。


 その後、俺たちは[探検者になろう]の話題に花を咲かせつつ、スキー場への道を急ぐのだった。



 ***  ***


「すごい! これが雪……さらさら……本当に冷たい!」


 初心者用のゲレンデに到着し、ウェアとスキー板をレンタルした俺たちは、みんなでそろってゲレンデに出ていた。


 今年は寒かったので、3月でも雪はたっぷりだ。


 エレンは、ゲレンデの端にたまった雪の塊を持ち上げ、パラパラと落としては感動している。

 とても微笑ましい。


「よし、じゃあエレンちゃん! スポーツ万能少女アタシのスキー講座で1時間で滑れるようにしてあげる! ユウにぃも手伝いよろしく!」


「おぅ、任せとけ!」


「おふたりとも、おねがいします」


 見たところ、エレンはあまり運動が得意ではなさそうだが、スキーは運動神経よりバランス感覚が重要である。 


[探検者になろう]で動体視力を鍛えている彼女なら、すぐに滑れるようになるだろう。


「まず、これが大事……安全な転び方から教えるよ」


 ほう、凛のヤツ、イイ教え方じゃないか……凛の事だからいきなり「これがパラレルターン!」とか「モーグルに挑戦だ!」とか言い出すかと思った。


 それから小一時間、俺たちはマンツーマンでエレンにスキーの滑り方を教えるのだった。


「んん……リンさん、ユウ……これ、楽しいです!」


 エレンの飲み込みは早く、すぐにボーゲンが出来るようになった。


 現在はリフトで初心者用ゲレンデの一番上まで上がり、ロッジに向かって滑り降りているところだ。


 このゲレンデは傾斜が緩いので、スキーが初めての子でも恐怖感を覚えさせず、リラックスして滑ることが出来る。


 俺と凛も、エレンのペースに合わせて一緒に滑っている。

 毛糸の帽子からのぞく白銀の髪が風になびいて美しい。


「ふふっ……♪」


 エレンも気持ちよさそうだ……頬を赤く染めながら軽やかに雪上を舞う。


 …………ん? エレンが滑る先に、誰か転んだのか、雪のコブが出来ている……俺は、よけろと声を掛けようとしたが、間一髪間に合わず、


 彼女は雪のコブに右足の板をひっかけ、バランスを崩してしまう。


 危ない!


 ふわっ……ぱあぁ


 俺が声をあげようとした瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()、彼女の身体を支える。


 えっ? 思わず足を止める俺。 角度的に凛には見えなかったようだが……。


 無意識の行動だったのか、何事も無かったように滑り続けるエレン。


 ……アレは、なんだったのだろう? そういえば、エレンは一度も”バグスキル”を自分で装備しようとしなかったな……


 似たようなスキルをすでに持っているのかもしれない……俺はそう思いなおすと、ふたりの後を追った。



 その後、日が傾くまでスキーを堪能した俺たちは、叔父さん叔母さんと合流し、城之崎温泉の旅館に向かった。


 ちなみに、凛とエレンが同室で、叔父さん夫婦は別室なので、俺はシングルルームだ。


 当然の配置である。 俺が年頃の女の子ふたりと同室なんかしたら通報されるし、ラブラブなおじさん夫婦と同室なんて、色々な意味で気を使ってしまう。


 そうして俺は温泉に向かう。

 人生最大のピンチが待っているとも知らずに……。


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