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第一七話 「孤児院での暮らし」02

 何食わぬ顔で子供たちと朝食を済ませた後、シュンは兎を持ってカンパーニの街に向かう。

 夕方まで往復するならばギリギリの時間だ。


 これを肉屋に売って安売りのパンを買うのだ。

 場合によっては、兎は解体して干し肉にする場合もある。


 その間にマヤは売れる山菜を天日干しにして、食事の支度、掃除洗濯と大忙しで働く。


 シュンは肉屋で兎を売り、現金とハムを切り取った後の骨を手に入れた。

 格安のスープ素材だ。


 その後はパン屋で売れ残りのパンをたくさん買い込む。

 店主もシュンを施設の子供と知っているので、何か言わずともパンの耳などを出してくれるのだ。


 古いパンはカチカチに乾燥させ、保存食に加工したりするので一応の需要がある。


 バックを背負って大きな袋を二つ持ち、シュンは帰りを急ぐ。



 息を切らせて、なんとか陽が落ちる前に帰り着くと、マヤは洗濯物を取り込んでいた。


「ご苦労様!」

「汗だくだよ」

「水浴びして着替えて」

「うん」


 マヤはパンを受け取って台所に走る。

 シュンは水浴び場に行って服を脱ぎ、井戸から水を汲んで頭からかぶって体を洗った。


「シュン、新しい着替よっ!」

「うわっ!」

「これ、洗っちゃうから」


 そう言ってシュンが着ていた服を持って行く。

 忙しすぎて相手が裸だろうがお構いなしだ。


 水場を出るとマヤは洗濯をしていた。


「次から次へと洗い物がでるから切りがないわ」

「ごめん」

「あはは、シュンのことじゃないのよ」

「手伝うよ」

「うん」


 シュンも手慣れたもので、洗い終わった服を絞ってシワを伸ばして物干しに掛ける。


 次の仕事は夕食だ。

 子供たちの食事を運んでテーブルに並べる。

 マヤは哺乳瓶に入ったミルクを持って赤ん坊を連れ自室に引っ込んだ。


 人が大勢いると時には興奮するようで、面倒を見るマヤには個室が与えられていた。


 シュンは素早く自分の食事を済ませる。

 そして台所からマヤの食事を運ぶ。

 部屋をノックすると返事がした。


「食事だよ」

「うん、ありがとう」


 マヤはローベッドの上でミルクをやっていた。

 シュンはトレーを机の上に置く。


 夜泣きもするのでこのような措置になったそうだ。

 この部屋で二人は本当の母と子のように暮している。


 赤ん坊がミルクを飲み終わり、マヤは手慣れた動作でゲップをさせた。


「食事の後は機嫌がいいのよ。可愛いでしよ?」

「うん、交代するから食べてよ」

「ありがとう」


 シュンはマヤから怖々と赤ちゃんを受け取る。


 これが可愛いのかどうかシュンにはピンとこない。

 しかし、いつまにやら父親役をやらされているような気がしてきた。



 マヤの食事が終りシュンはトレーを台所まで運んで、洗い物の仕事を手伝う。


 次は子供たちに水浴びをさせて体を洗う。

 赤ん坊が寝たとマヤも加わった。

 ついでに自分も済ますのだ。


 そして子供たちを寝かしつけて、取り敢えず一日の仕事が終わる。



「明日の獲物は干し肉にしていい?」

「ええ、来週は行政から支援のパンが届くのよ。大丈夫……」


 マヤの部屋で二人は明日の予定を話し合う。


「明日の朝は俺一人で行く。寝不足だよ」

「……うん」


 マヤはトロンとした目でうつらうつらしている。


「助かるわ、眠いのよ……」


 赤ん坊がグズリ始めたので、マヤは必死にあやすがついには泣き始めた。


「ミルクが足りないんじゃないの?」

「量は決まっているのよ……。村のお母さんに聞いたの。足りないのは……」


 マヤは半分眠っているような状態だ。

 そう言って上半身をさらけ出した。

 シュンは突然で驚き、硬直して息を飲む。


「見ないでね……。でも恥ずかしいことじゃないのよ」


 そして赤ん坊の口に含ませる。

 必死に出ないミルクを飲もうとするが静かになった。

 まるで生きる為の本能が満たされたようだと、シュンは思った。


「ん……、あっ、シュンもついこの間までやってたのよね……」

「ずっと前だよ……」

「あはは、そうね……」


 赤ん坊は満足しながら眠りに就き、マヤも壁にもたれ掛かって眠り始めた。


 とんだ母親だとシュンは胸を見ながらマヤを揺り動かす。


「やだ……、ごめん」


 そして、二人で赤ん坊をベビーベッドに寝かした。


「名前……付けなきゃね……」

「うん、僕ももう寝る」


 年上、母親、お姉さん役のマヤは頑張り過ぎなのだ。


 既にマヤは寝ていた。

 シュンは子供たちとの大部屋に帰る。


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