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第六話 「デス・キャニオン」04

 翌日、シュンたちはまた同じ入り口からデス・キャニオンの中に入った。


「今日は暇ね~」


 レイキュアが呑気に言う。

 昨日の掃討後なのでベヒモスの数は少ないので、今日はかなの奥まで進めるだろう。


「そのうちすぐ忙しくなるって」

「いましたね! 五体ほどです」


 アルバーが早速その【探査】の力で敵を発見した。


「そら来た! 今日は俺たちが先にやるからな」


 目の前に現れたのはワーウルフの群れだ。

 大柄な人間程度の大きさで二足歩行もするが、四脚での俊敏な動きから、凶悪な牙で噛み付きの攻撃を繰り出す。


 腕などに食いつかれれば簡単に千切られてしまう。

 強さは中の中だが統率のとれた群狼は侮れない。


「かく乱しつつ各個撃破だ」

「了解です」


 シュンとアルバーが群れの中に突っ込むと、ワーウルフは輪を作り二人の周囲を回り始める。


 本来なら背中合わせになり敵の攻撃に備えるのが定跡だが、シュンたちはそうはしない。


 それぞれが別方向のワーウルフに向かい狼の輪を分断しにかかる。

 必然的にシュンは三体、アルバーは二体の敵を相手にするが、それが狙いだった。


 シュンとアルバーは【移動】のスキルを使いワーウルフを凌ぐ俊敏さで機動し、隙をみて弱点の喉を()切る。


 ワーウルフは十体以上の群れになると、その集団戦法は脅威となるが、五体が更に分断されたので戦いは呆気なく終わった。


 群れるベヒモスに対応する為、ランツィアやスカーレッドは常に三、四人の編成で行動している。


「やっぱりランツィアのツートップは凄いわね!」

「はいっ!」


 レイキュアのヨイショにカノーアが素直に感心するので微笑ましいと思い、シュンは笑いを押し殺す。


 レアクリスタルを取り出し四人は更に奥へと進む。

 道が二つに分かれ、事前にギルドから指示されていた中心部への左の道へと向かった。


「この先に中程度ですが二十以上いる広場があります」

「そうこなくっちゃ! シュン、稼ぎ時ね」

「ああ、慎重にいくぞ!」


 レイキュアは軽く言うが、ここでの作戦も安全策だ。

 遠距離からカノーアが矢を放ち、シュンたちがスキルでサポートしてベヒモスは次々と射抜かれた。


 四人は残存掃討レベルで残ったベヒモスたちに止めを刺し、レアクリスタルを回収する。



 その広場からは三つの分岐路が先へと続いていた。

 どこに進めとギルドからの指定はないので、シュンはポケットから地図を取り出す。


「どうするかな……」

「中心に進む道は?」


 レイキュアが横から地図を覗き込んで言う。

 やはり脅威の多い場所へ進むのが得策だろう。

 帰路のこの場所で、他の道から来たベヒモスに遭遇するのは具合が悪い。


「こっちだ」


 シュンは幅十メートルほどの分岐路を指さす。


「行きましょうか」


 シュンを先頭にレイキュア、カノーア。

 最後尾にはアルバーが歩き、後方からやって来るかもしれないベヒモスを警戒した。


「シュン! 前方の岩陰にベヒモスが一体います。力は不明です」

「不明?」

「はい、なぜかは分かりませんが、力が見えません」


 道が開けて左右の崖が崩れ、大きな岩が散乱している場所に出る。

 シュンは左手を広げ後ろのレイキュアたちを制し、慎重に歩を進めた。


 岩の隙間にベヒモスの白い姿が見え隠れする。

 人の子供サイズの体で形は大型の兎だが尾は蛇の化身リリスのキマイラだった。


 そして驚くべき事に頭部には赤い大きなレアクリスタルが貼り付いている。

 それは素早く動き岩の陰に隠れた。


「おいっ! 見たか?」

「うん、初めて見たわ」

「驚いた……」


 シュンの問いにレイキュアとアルバーが応え、カノーアは無言で頷く。


「カーバンクルだ。ギルドの、いや、ディボガルドの目的はこれだったんだ!」


 その頭部に赤く輝いていたのは【火炎】のレアクリスタルだ。

 それはSクラスのベヒモス、サラマンドラの脳内で作られるが、一部の変種が頭部を破って外に出る。

 そして他のベヒモスの頭部に寄生し行動する。

 兎のベヒモスはその宿主となる場合が多いと言われていた。


 コンテナも希少だが持っていた場合、取り込めば【火炎】のスキルを持つことができる


「追いますか?」

「ああ、様子を見ながらゆっくりと進もう」


 カーバンクル自体も、【火炎】のスキルを使うベヒモスになっているので注意が必要だ。


 四人は周囲を伺いながら進むが、弱いベヒモスが五月雨に現れて、カーバンクルを完全に見失ってしまった。


「あ~ん、逃げちゃったじゃない」

「見逃してもらったんだ。俺たち四人で太刀打ちできる相手じゃないよ」

「でも……」

「無茶言うなって、そろそろ引き上げるぞ」


 レイキュアは不満顔だか仕方がない。

 全員が黒焦げにされかねない相手なのだ。

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