その54
「いやあー、毎回の事だけど調査って言うのは心が躍るよね! 誰も知りえないかもしれない未知との出会い、本当に楽しみだ」
ダンジョンに足を踏み入れるとネモは嬉々として語りだした。
「考えてもみなよ、これから僕達は誰も触れた事のない謎に触れるかもしれないんだよ? 人類初だよ? こんな幸せな事は無いよ!」
ギルドマスター室でまともな人物だと思ったがどうやらそれは間違いだった様だ。イライザとは違うがネモもまた一癖も二癖もありそうだ。
「先ずはワシが飛ばされた転移のトラップのある十階層のボス部屋の前で良いのじゃな?」
「そうだね、先ずはそのあり得ないはずのトラップを確認したい。今までの記録と照らし合わせてもそんな浅い階層に転移トラップがあったという例は無いからね。今回のリッチの件とは関係ないかもしれないけれど未知を放っておくことなんて出来ない」
そう語るネモもそうだが他の調査隊四人も期待に満ちた目で頷いている。学者ではあるのだろうが未知に対する気持ちは冒険者とそう変わらないみたいだ。
先頭にアシュリー、調査隊の護衛にメリルが付きワシは殿を務める。ワシが殿なのはダンジョンの道を良く分かってないからでは断じてない。
そしてアシュリーの先導の元、ワシ達は十階層のボス部屋の前に問題なく到着した。
「到着だね、それでは早速始めるとしようかな」
十階層のボス部屋の前につくとネモ達調査隊は荷物を下ろし何やら荷物から取り出すと地面を調べ出した。
「トラップがあったのはここだね? どれどれ……うーん痕跡らしきものは見当たらないな」
調査員の一人が背負っていた道具を地面に設置すると、その前に五人は顔を突き合わせるように集まり口々にぶつぶつと話している。
「アシュリーはあれは何かわかるかの?」
「いえ、私もああいった魔道具を見るのは初めてです」
アシュリーも知らないとは珍しい道具なのだろう。そして視線をメリルに向けると調査隊にも負けないぐらいの期待に満ちた目でその魔道具を見つめていた。大人の女の子の大人という部分はどこへ行ったのだメリルよ?
「残念だけどここでの収穫はなさそうだね」
ひとしきり調査を終えたネモは荷物を片付けだす。
「それじゃあ次はリッチが居たという四十一階層に向かうとしようか」
調査隊の出発の準備を確認するとネモが次の調査ポイントへの出発を促す。
「では行くとしようかの、アシュリーよろしく頼む」
アシュリーは頷くとボス部屋の扉を開け先へと進みだす。そして十階層のボスは先導を任せたアシュリーに瞬殺されることになった、さすがアシュリーである。
そしてワシ等調査隊は十五階層、二十階層へと進んで行く。
遭遇した魔物は先頭を行くアシュリーと、アシュリーから少し離れた調査隊に付き添うメリルの魔法で倒していく。調査隊護衛の前にダンジョンに潜り試していた通りに連携も問題なさそうだ。
そして四十階層のボスを倒しワシ等はボス部屋の先にあるセーフティーエリアへと辿り着いた。
「リッチと戦ったのはこの階段を降りた先のホールじゃ」
ワシは調査隊に目的地に着いたことを告げる。
「ついに到着だね、どんな未知が待っているのか楽しみだよ」
ワシの言葉にネモが隠せない好奇心を見せる。
「ここから先は魔物の強さが一段階上がります、調査隊の方々は気を付けてください」
アシュリーがセーフティーエリアに入り一息ついたところで声を掛ける。
「無茶はしないよ、僕達も命は惜しいからね」
「では行くとするかの」
全員の準備が問題ないのを確認するとワシ達は四十一階層へと階段を降りていく。
そして階段を降り切ろうとした時、先頭のアシュリーが足を止め腕を横に上げる。
「止まってください、何かいます」
アシュリーは抜刀するとゆっくりと階段を下りていく。
「師匠どうやらまた現れた様です、リッチです!」
ワシは階段の一番下でホールの様子をうかがうアシュリーの横へと進む。
「異常種というのはこう何度も現れるものかの?」
「普通ならあり得ませんね、どうします師匠?」
視線をリッチに向けたままアシュリーが訊ねる。
「決まっておろう、斬る!」
そしてワシとアシュリーは一気にリッチの徘徊するホールへと走り出した。




