上層レストラン階、江戸前寿司「八房」2
「あ〜っお兄ちゃんアレなにアレな〜に〜?」
「何だようるせーな」
恐ろしい額の回らない寿司を腹に収めた美奈は、やっと気付いたのか窓の外を指差して大声で騒ぎ始めた。
「奇麗キレイ〜」
「学校でやっただろ」
「やってないやってな〜い〜」
「あっちは第2東京湾ね。成田隕石由来のウラン235による海底天然原子炉の光よ」
「正解だね、清水さん」
出てめーサラッと真由美に話しかけてんじゃねーお前の幼馴染はアレだろうが。
「ったく…同じ小学校行ってやってないワケねーっつーの」
「でも例年より強いわね、光」
俺を挟んで真由美の反対側に座ってるさくらは肩を擦り合わせ俺の前に身を乗り出して美奈の指差す方を覗き込んだ。
人がメシ食ってるのに何だよ邪魔だ。つかさくらの向こう隣に座ってる出の目が怖いんだが?少し距離を取らないと…
「あぎゃーっ!なにすっだ山田ぁーっ!」
さくらのヤツ、出に遠慮して椅子を下げたら俺とカウンターの間に出来た隙間にスポッと落ち込みやんの。両足に当たる控え目な胸の感触…誰得。
「早く立てよ。あっ、変なトコ掴むな」
ホント誰得…
いや訂正、出の俺を見る視線が凄い。眼力だけで殺す気?ってくらい殺気がこもってる。出の目には俺が物凄く得してるように映っているのか。スマン出、明日はこのお得な役、お前に譲るわ。
「さくらちゃんは家のイベントで毎年来てるもんねー」
「光が強くなってるって事はプルトニウム239が増殖してるっとコト?」
イカン優介が絡むとまたSFネタに走るぞ。
「増殖?」
「飯田さんは知らないか〜。オスロの天然原子炉も作動してた頃はプルトニウム239を生成しててね、発見当初は大騒ぎになったんだよ。『どっかの国が核兵器を製造してる!』って勘違いして」
アカン手遅れ感半端ない。
「やだ怖い…汚染増えてるの?」
ホラ怖がらせちゃったじゃん。
「でもさ、今日会ったきたかみさんって釣りの人が言ってたよ、第2東京湾の海水に放射能汚染はないって」
「ソレは本当ね」
ああっ、せっかく丸く収めようとしたのに今度はさくらの眼鏡が光った!
「私のバイオ企業のラボでモニタリングしてるけど第2東京湾の海水に核反応生成物はないわ。それどころか元々海水に含まれる天然のウランやトリウムも消失してるのよ」
「良かった〜」
「それはどういう原理なんだい、さくら」
聞くなよ出。さくらSFっポイ話になると長いんだから〜
「第2東京湾の海底物質には強力な吸着作用があるって事ね」
さくらの言葉に優介までが眼鏡を光らせた。
「つまり第2東京湾は旧東京湾から流入した海水のウラン・トリウムを完全回収する高性能の資源収集システムになってるってコトだね」
「強力な水冷システムも完備した増殖炉よ」
「生成核種が見つからないってコトはそのエネルギーまで完全回収してるハズ…」
「もし意図的に形成されたとしたら凄い技術ね。誰が何のために…」
「あ〜っ、コッチも光ってるよ光ってる〜」
「こっちは太平洋側だね」
「私達が泳いだ方?やだ怖い…」
「ああ、コッチは海蛍ね。陸上養殖して放流してんのよ。だいぶ殖えたみたいね」
「見た事ない!凄いすご〜い!」
「子供の時見ただろ?清水さんと3人で」
「小さかったから覚えてないのね」
「まあ2コ下だからな」
「私も…見たことある」
「飯田さんも?綺麗だよな」
「わたし見た事ない!見たい見ーたーい!お兄ちゃん行こ!」
「食い終わったら浜に行くか」
「すぐ食べて今すぐー!」
ったく妹がいると本当にせわしないな。しょーがねー、ちゃっちゃと食うか。




