上層レストラン階、江戸前寿司「八房」1
「もう!お兄ちゃんたら!あむあむあむあむ」
初日の夕食は美奈の要望でホテル上層階の回らない寿司で大将おまかせコース。ただし美奈だけはヤケ食いと称して勝手に注文したヤツだ。
「あの…これ1貫いくらですか?」
この寿司屋は全部時価なのだ。もう1度言おう。全部時価。
「地元の天然ヒラメのエンガワで1貫千円ってトコかな」
じゃ10貫乗ったゲタで1万円?
「海老まだー?」
「ヘイお待ち」
「これは?」
「旬の天然車海老で2千円だね」
10貫で2万円かよ。
「あと大トロ10コにウニ軍艦10コ」
「あいよ!」
「他にオススメはー?」
「旬の穴子と鮑でいいのが入ってね、煮穴子に煮鮑でどうだい」
「じゃあ両方!10コ10コ!」
「10万超えたー!」
さくらはいつものジト目でニヤニヤ顔。真っ青になった俺にあっさりトドメを刺しに来た。
「あに言ってんの20万超えよ」
「マ?」
「マジ」
「マジか〜っ!」
「良く食べるわね〜アンタの妹」
「大将、さくらにつけといてくれ」
「アタシから山田に請求まわすから」
「やめろや〜」
1食20万超えとか有り得ねー破産するわ。
「ま、ちゃんと仕事をしてくれればウチで持つけど?」
「たのんます」
「漫画の方はちゃんと進めてるんでしょうね?」
「お…おう…」
さくらは全員でやれっつったけど、実は追加ボーナス目当ての飯田さんとサポートの優介で全部やってるから俺は全くタッチしてない。
でも飯田さんにボーナス全額回すのは不公平な話だからな。出の采配でさくらには秘密なのだ。
言葉につまってると出が代わりに説明を始めた。助かる、出。
「賢人も合間合間にやってくれてるから順調さ、さくら」
「出アンタには聞いてない。山田、ちゃんとやってる?」
「お、おう。ページ進んでるんだから文句ないだろ?」
「山田アンタねぇ…塗れと言われてただ塗りましたじゃ仕事になってないのよ?この仕事の目的はより良い本にして完売させること。わかってる?」
「わ…わかってるよ」
「じゃあ塗り終わったら何べんも舐めるように見直して修正する、わかった?」
「わかった…」
「僕がちゃんと監督するから」
「出、アンタも計画通りにやるのよ?計画通りに!」
「わかってるよ、お姫様」
「んで山田、アンタ例のお嬢様、逃しちゃったんだって?」
「まあな」
「か〜っ、使えないわね〜」
「その話だけど浮気ってどういう事?」
「ぐっ」
黙って寿司を口に運んでいた真由美が遂に横槍を入れて来た…参戦の意思表示だ。
「私がうたた寝してる間に何してたの?」
重い…
「美奈が言た通り向こうが妙に積極的で…てっきり出が目当てだと思ってつい」
「は〜っ、またライバルを増やす〜。いい?ケンちゃんはモテるんだから油断しちゃ駄目じゃない」
「ケンちゃんモテるもんね〜」
「飯田さんまでからかう〜。俺がモテるワケないだろ〜?実際出のファンばっかじゃん女子〜」
「確かに昔から多いけどねそういうコ。でも学年トップ3レベルになると何故か賢人なんだよね」
「は?」
出、お前は何を言ってるんだ?
「中学では清水さんに、今は別の組の加藤さん」
「中学の時は飯田さんいなかったからトップ3美少女つったら3位加藤さん、2位清水さん、1位が私ってトコね」
「は?」
「あによ山田その目は」
「いや…さくら…正気か?」
「客観的事実ね。今なら清水さんが3位。美人だけどとっつきにくいって噂よ?んで可愛さで飯田さんが2位。美しさと可愛さを兼ね備えた私が1位ね」
「んでな、彼女来夢っつーんだけどさ、何とか誤解を解いて部活に誘ってみる」
「話そらすな山田」
「とにかくやりゃいーんだろやりゃよ」
「ちゃんとやんなさいよ〜」
話がまとまった、そう安心した所に美奈の声が響き渡った。
「シメに黒毛和牛の炙り20個!」
「失敗したら山田が払うって事で」
「鬼!悪魔!さくら!」




