第2次ロイヤルスイートのキミ攻略作戦 3
屋上展望台の中央には更に3階建てくらいのタワーがある。その上は火災時の脱出ヘリポートで中は非常階段や機械室だから入れない。
その周りを反時計回りに回るのだが、俺達が降りたエスカレーターは正確には屋上の更に上に造られたデッキに出る。デッキとヘリポートタワーの間は吹き抜けで下にはテラス喫茶なんかがある。
外を見ながらデッキをぐるっと1周した後、階段を降り、下をもう1周するのが順路だ。それら全ての外側とヘリポート以外の天井はガラスで覆われている。ほぼ真下は見えないので俺達の部屋の露天風呂が覗かれる心配はない。
「あっちが第2東京湾だね」
第2東京湾は大深度地下に建造された直径80㎞の真空リニア環状線の内側が17年近近く前、成田隕石によって消失して出来た海だ。
学園研究都市のTKB大学で研究していた真空リニアは本来なら大都市間に真っ直ぐ引くべき物だ。環状線にして頻繁に各駅停車したのでは時速千㎞まで加速する間もなく停まるため意味がない。あくまで実験線であり昼間は都市交通システムとして使用し夜間は高速実験車両を周回させ加速実験をしていた。
一説によると夜間は魔導粒子の生成実験に使われ、その実験が成田隕石を引き寄せたとも言う。ソースは月刊モー。
「真っ青で綺麗だね」
極東のブルーホールと言われる第2東京湾を一望する展望台はこのリゾートホテルの目玉観光スポットだ。でも来夢の声は意外にも、とても悲しそうだった。
「この海には…今も大勢の人の魂が眠っているのね…」
両手を合わせて故人の魂の安寧を祈る彼女を見て、俺ははしゃいでいた自分が少し恥ずかしくなった。
このコは自分が生まれるより前に亡くなった人々の魂を悼んでいるんだ。なんて清い心の持ち主なのだろう。同じお嬢様と言ってもさくらとは大違いだ。
俺は彼女と並んで胸に手を当て、目を瞑り黙祷を捧げた。
「この海は私達が生まれる少し前に出来たのね?」
「そのハズだけど」
ってコトはこのコも俺らと同じ歳なんだな。
「じゃあもしかしたら私達、その方々の生まれ変わりかもしれませんね」
このコは転生とか信じてるんだな。俺も小学生までは信じていたが、中学に上がって月刊モーに裏切られたと感じるようになってから懐疑的になった。アストラル体とか幽体離脱とか転生とか、あの雑誌に書いてる事は全部ウソなのだ。でもココは話を合わせとこう。
「私達、前世では一緒にいたような気がする…」
「そうかもね」
ニッコリ、と最高の笑顔を見せて…と。とにかく彼女を部活に参加させて出に押し付ければ作戦完了だ。
「こうしたら…何か感じますか?」
そう言って彼女は俺の胸にそっと寄り添った。
「ああ…感じるよ」
適当に話を合わせて…と。
「嬉しい…」
こんな事を言っておいて裏では『結局入部駄目だって』『マジかあいつホント使えねー』『お前なんか最初から目じゃねーっつーの』『プゲラ』『あ〜ん出様〜』とか言うんだから女子って怖いよな。ま〜今回は入部決定済みだからそうはならないけど。
「あーっ!その人誰よ?誰〜?」
そんな時…俺の後ろから大きな声が上がって周りの観光客や親子連れがどよめいた。
「何だ何だ?」
「痴話喧嘩?」
「やだークスクス」
「カメラカメラ…」
「動画UPしようぜ」
展望台を上下2周してもう一度階段を上がり3周したのだろう。後ろからやって来た美奈は周りも気にしないで更に声を張り上げた。
「浮気よ浮気ー!」
「ママ〜うわきってなに〜?」
「しっ、見るんじゃありません!」
これはまずい。
「待て!違うんだ!」
「この方は?」
「俺の妹、美奈」
来夢は降ろした両手を合わせて軽く頭を下げた。
「はじめまして、美奈ちゃん」
「あなた誰?」
「私は来夢よ」
「どういう関係?どういう関係〜?」
「あの…私達、お付き合いしてるんです!」
は?
「「は〜〜〜〜っ!」」




