後編
「よし、僕が先に突っ込むからアリスもその後に続いて欲しい、まずはあの翼を何とかしないと」
「オーケー、じゃさっそく行きましょう!」
「あぁ、行こう!」
二人はドラゴンに向かって走り出す。
「グオァァァッ!」
ドラゴンは激しい雄叫びを上げ、レインたちに突っ込んでくる。
「飛翔!」
レインは地面を蹴って空に舞い上がり、ドラゴンへと飛ぶ。
迎え打つかのように尻尾を振るわれるが、レインは片手を添えて回避した。
「はっ!」
そしてその尻尾を引っ掛けるようにして剣を刺し、それを軸にしてまた飛んだ。
「風よ、鋭い刃と為せ、彼の者を切り刻め! 風刃列覇!」
レインはドラゴンの背中に乗り、風で覆われた剣で右翼を思いっきり切り裂いた。
「ギャァーァッ!!」
ドラゴンのけたたましい咆哮が辺りに響き渡り、痛みで狂ったように動き出す。
「うぉーっ!」
続いて左翼の方に移動すると、右翼と同じように引き裂いていった。
「ギャァーッッ!!」
耳をつんざくような悲鳴を上げ、ついにドラゴンは地面に倒れた。
「レイン! 無事?!」
「なんとか! でもこれで終わりだ!」
両翼を失ってもなお立ち上がろうとするドラゴンに、レインは一気に距離を詰める。
「うぉぉっ!」
「はぁぁっ!」
反対側からアリスも駆けてくる、剣には炎が纏いつき、それに対してレインの剣は風の渦によって柄ごと隠されている。
「炎の精霊よ、我が剣に集え来たれ、そして我と共に敵を貫け! 炎剣矢!」
「大気よ、振るえ給え! 振音衝撃波!」
炎と風の攻撃がドラゴンへと振るわれる。
「ギャァァァァッ!!」
そして見事直撃し、頭を仰け反らせたのを最後にドラゴンは頭を垂れて動かなくなった。
「やった……の?」
「あぁ……僕たち、ドラゴンを倒したんだ」
アリスの表情が綻び、レインも自然と頬が緩んだ。
「レイン、お疲れ様」
「うん、アリスも」
レインとアリスは顔を見合わせてクスリと笑うと、倒れたドラゴンを眺めた。
「あの二人、なかなかやりますね」
「でしょー、将来はきっと五剣士と並ぶ最強の剣魔法士になりますよ、あの二人は」
少し遠く離れた小高い丘の上に、エリーゼと初老の女性がレインとアリスの様子をジッと見つめていた。
「そうかもしれませんね」
「でしょでしょ! それで今回は特例って事で、レインとアリスを剣魔法の特別科に転科させてあげたらどうかなーなんて」
「なるほど、抜き打ちテストと言って他の魔法生たちを騙し、頃合いを見てあの二人だけにドラゴンの相手をさせたんですね。 貴女らしい完璧な計画です」
初老の女性は淡々と感情のない声音で述べると、冷たいアメジスト色の瞳でエリーゼを映す。
「騙したなんて人聞きの悪い……あたしはただ、あの子たちの内側に秘められた才能をしかるべき場所で使って欲しいだけよ」
「……それが貴女の信念である事を祈りますよ、マグノリア先生」
女性はそう言ってその場から立ち去っていく。
「はぁー、ほんっと疑り深い人なんだから……校長は」
そんな女性の後ろ姿を見つめながら、エリーゼはフッと呆れたように笑ったが、
不意に初老の女性が後ろに振り返ると、そこにはもうエリーゼの姿は無かった。
「ねぇレイン! 学園からの賞品って一体何かしら?」
「うーん……遅刻しても一ヶ月は許される、チケットとか?」
「えー、せっかくドラゴン倒したのに?」
二人はまだ知らない
これから待ち受けているであろう
試練と出会い、そして別れ……
それらをどう乗り越え、
どんな道を選び歩んでいくのかは
誰も知らない……
物語は、今まさに幕を上げたばかりだ。




