うち猫ジーニアス
ジーニアスは、年齢不詳のオスの黒猫だ。だけど白髪交じりだからおじいちゃんかな?
お腹に丸い白い毛が生えているから、白黒猫だ。ジーニアスは頭がいい猫。
「ジーニアス!」
「にゃあ!」
「おいで、ジーニアス!」
「にゃあ!」
「待てだよ、ジーニアス」
「……(待つ)」
「おいで!」
「……(トコトコ歩いてくる)」
犬みたい。
呼ぶと彼は何処からともなく現れ、ちょこんと足元に座って見上げる。
ジーニアスは雨の降る夏の日に駐車場のすみで、足を怪我していた。彼は怯えた目をしていたけど、助けを求める目でもあった。野良猫の彼を保護してからは、怖がってなかなかケージの中から出てこなかった。
でも、紐を角からヒョロヒョロ出すと、爪がニョッと出た丸い手が紐をちょいちょいしてくる。紐を遠くへ投げるふりをすると、投げたと思われる方へ行ってキョロキョロ辺りを探し始める。持ってんだーって、ぱっと紐を見せると、なーんだみたいな顔をして、両手をぐーっと前に伸ばしてお尻をつんとあげる。
犬なのか、猫?、猫なのか。
もう今では立派なうち猫だ。
朝方窓辺に寝そべって、スズメが飛んでいるのを見るのが好きだ。そして、大好きなお菓子をねだる。
うち猫ジーニアス!
これからも一緒だよ!
にゃあ!
***
私はもうそろそろ現実の世界へ戻りたくなっていた。
今いるこの森は別世界だとはっきり認識していたわけではない。どこかで、これは夢であってほしいと願っていたに過ぎない。
そもそも私は何を持ってきたんだっけ?
ズボンのポケットが膨らんでいる。出してみると500mlのペットボトルくらいの大きさの瓶だ。
けっこうな重さのある大きめの瓶が、こんな小さなポケットに入っていたとは。
透明の瓶のなかに液体が半分くらい入っていた。
何だろう、これは?
現実の世界へ戻るための薬なのか?
喉が乾いていたから、それを飲んで見ることにした。




