8th offense: Paint pain ACT.2
フォルモンシェ 中央街の創立記念公園にある、多くの年月を超えて身をボロボロにしながらも未だに残してある銅像。
創立以来、ずっとそこに立ち続けていた初代 国王の銅像。
黒き絵の具に滴らされて、全身痛み色に染め上げられた。
そして創立以来、幾多の天災を耐え抜いき、今尚痛みに耐え続けている像に終わりを迎えた。
公園の地面に鈍い音を立て、彼を支えていた足元から地面へと落下する。
落ちた瞬間、五体が満足できない状態に砕け散り、そのまま灰に変わっていく。
しかし白き焔を身に纏った王様は、何故か救われたような顔をしていた、ように見えた。
足元に、「イタズラしにきたよ」と残して。
◆
「像? 何だそれは?」
「創立記念公園に建てられた初代国王の銅像です」
フォルモンシェ 歴代で最も嫌悪されている最低の王様に、秘書は事件を告げた。
「あぁ……あの薄汚い像か。 どうでもいい。 それよりリジェン嬢はどうした?」
「いま、食事中です」
「わかった、いますぐ行く」
国王が私室の扉を荒々しく開け、油の乗った脂肪だらけの体で彼女のもとへと歩みだす。
秘書は小さく溜め息を付き、荒れた王の部屋を片付ける。
もし片付けていなかったら、「誰だ! 私の部屋を荒らしたのは!!」と殴りつけるのを知っているからだ。
「糞っ…」
秘書は誰も居ない部屋で小さく愚痴を零し、ぐちゃぐちゃのベッドを直した。
「リジェン……やはり、お前は黒が美しい……」
「ありがとうございます、王」
リジェンと呼ばれた女性は漆黒のドレスに身を纏い、朝食を黙々と口に運んでいた。
上品な手付きで食事を済ませ、その場を立ち上がる。
「待ちたまえ、リジェン。 話をしようじゃないか」
「……分かりました」
リジェンは再び椅子に腰を掛け、王の無駄話を聞かされる。
『芸術は〜だ』とか、『私は〜の天才だ』とか、何百回も同じような内容を聞かされる。
最後には『やはりお前は美しい』との口説き文句。 吐き気がする。
リジェンは、「そろそろお時間ですので」と席を立ち、私室へ戻る。
私室の戸に鍵を掛け、身につけていた黒のドレスを荒々しくベッドの上に脱ぎ捨てる。
しかし、クローゼットの中には全て痛み色に染め上げられた衣装ばかり。
下着の色すらも痛みを塗られた色しかないのだ。
彼女はとてもお洒落好きで有名だったが、それはもう昔の話。
親に多額の金を渡し、両親の了解も得ずに勝手に城に住まわされた。
彼女が持っていた服は全て燃やされ、今では同じ様な痛み色のドレスを着させられている。
深く溜め息を吐き、痛み色の毛布に包まれ、部屋の隅に座り込む。
「お嬢さん、お嬢さん。 どうしてそんなに落ち込んでいるんですか?」
咄嗟に聞えた声に驚き、全身を包んでいた毛布から顔を出し周りを見渡す。
その瞬間、窓から一陣の風が吹き出て、髪を靡かせる。
そこの窓際に立つのは青年と少女。
「な、何者です……!?」
「私は、貴方様の悲しき表情に呼ばれた旅人ですよ」
「それより……どうやってココに……・・・!?」
「いや……それより、貴方にはその色は似合わないですよ」
青年はベッドに脱ぎ散らかしたドレスを見て、そうリジェンに告げた。
「そんな事言ったって……他に色が、無いんですもの」
青年は彼女に笑顔でこう告げる
「大丈夫ですよ―――――――私が……着付けをしましょうか? お嬢様」
青年はゆっくり片膝を地に付けて、ゆっくり彼女の方へ手を伸ばす。
彼女は、戸惑いながらもその手を取った。
「貴方にはやはり白が似合う。だって貴方の――――――――――――」
彼がその言葉を告げ終えると、彼女はほんの少しだけ笑みを浮かべていた。
もう次でプロローグを含めて10話!!
でも、ホントはプロローグを含まないで欲しいんです。
だって、10話目にちょっとした話を入れたいからです!
なので、今はまで8話って事で……