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white prank  作者: Muk
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4th offense: Never move ACT.4

「どういう風の吹き回しですかい? オルディオ殿」

「殿付けはやめてくださいよ」

ある喫茶店の中での会話。

貴族らしくない服装に身を纏ったオルディオ大臣は優雅にコーヒーをそそる。

「もう一度言いますが、何故僕を呼んだのですか?」

「いや、まさか本当に神にお子様が居たなんて…と思ってね」

「面白いジョークと受け取らせて頂きますよ」

向かいの席に座るのは先ほどの青年。 そして隣の席ではデザートに食いつく先ほどの少女。

「まったく……せっかく楽しい悪戯が見られたとは…台無しですよ」

「大丈夫ですよ、他の人には告げてませんから」

「……ならお願いですが、ある御方に合わせて頂きたいのですが」

「……私にと言うことは、あの大臣の誰かと言う事ですか?」

「そうですね」

青年は手を組み、笑顔でそう告げる。

オルディオは沈着な目で、視線を隣の少女に向ける。

「この子、 横線(ダズライン)入りですね……この子に関係が?」

「まぁ、そこまで分かれば…誰か分かるでしょう?」

オルディオは険しい顔に変貌し、2人から眼を逸らす。

息を呑み、一旦呼吸を整え、笑顔でこう告げる。

「その方の、道のりだけなら」

「ありがとう、あと出来れば立会人としてもあの方も」

「頼み事が多いですね……出来る限りの事は勤めさせて頂きますよ、神のお子様」

そして一枚のメモ帳に書かれた簡略化された地図を青年は握り、少女に「もう行くよ」と告げ席を立たせる。


「名前ぐらい、教えてくれませんか?」

オルディオは問いた。

少女の隣に並んだ青年の名を。

彼は微笑みながらその場を誤魔化しては、去って行く。

「また、今度」

彼はそれだけを言い残して。




          ◆




「早く…早く、あの反信者を見つけなければ……」

ローディウムは塔内の研究室と化した自室で、落ち着きが無い様子でソファの上に座り込んでいた。

「バレたら…終わりだ……」

絶望色に染まった表情で頭を掻き毟る。

息はどんどん荒くなって行き、足がリズムを刻みだす。

「まず、反信者の情報をいち早く手に入れなければ……」


「大丈夫ですよ、私が知ってます」


ローディウムがその声を聴き、咄嗟に後ろを向く。

蔓延の笑顔をした青年と、見覚えのある顔つきの少女。

「お…とうさん?」

少女はローディウムの顔を見て、小さな声でそう言った。

少女の顔を見た途端にローディウムの顔は険しくなり、眼を逸らした。

「……誰だ、お前ら?」

「おやおや、まさかの感動の再会? 遠慮しなくて良いですよ、おとうさま。 ハグぐらいしたらどうです?」

「誰だと聞いている」

青年の棘のある言葉を無視して、ローディウムは告げる。

「名乗るほどの者ではありませんよ、ローディウム=グルヴァン殿」

「では、貴方達は反信者という扱いでよろしいな?」

「信者でも反信者でもありませんよ、只の神の子供です」

その言葉を青年が伝えた瞬間、ローディウムが机に置かれた一丁の銃を手にした。

そして青年に向けて引き金を引き抜く。

「あれ?……殺しは貴方様の御宗教に違反なのでは? ローディウム=グルヴァン殿」

青年は銃弾を最小限の動作で避ける。

青年の言葉を聴いて、ローディウムは銃を力無く下ろす。

「そうだな、ここでは死刑はいけないな。 たとえ、国を脅かす悪党だろうと―――」

ローディウムは、輪郭をなぞる様に掻き毟る。


神ノ拘束具(ネバームーブ)だ」


ローディウムは両手を大きく広げ、不敵な笑みを浮かべながらそう告げる。

彼は腰から、鎖が繋がった奇怪な形をした銃を引き抜く。

銃は他の片手銃より一回り大きく、銃口を突きつけられる時の圧迫感が一味違う。

「罪状を告げよう、名も知らぬ学の無い愚かな餓鬼よ。 宗教侮辱財、加えて放火罪……不動刑だ」

「それ銃じゃないですか。 確かに、死ねば身動き一つ拘束出来ますがね」

「違うな、コレは。 打ち抜かれた罪人は先ず全身に激痛がほど走り、やがて体が硬直していく。 最後には全身を拘束しえ、最後には心音すらピタッと拘束だ」

「なるほど、だから貴方は焦っていたんですね? 銃だから」

彼はその台詞が癇に障ったのか、眼が見開く。

それと同時に銃口を青年に向け、ローディウムの右指が引き金に掛かる。


そして、引き金は引かれた。


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