ネクストステージ
「お前さあ、ちゃんと確認したのか?」
「はい、それはもちろん」
「ふーん」
高木のこの呆れたような顔も見飽きた。人を見下したような顔面と態度と言葉がとにかくムカつく。誰もがこいつのグループの部下になる事を避けたがっていた。俺ももちろんその一人だった。しかし今年不運にも俺は高木のグループに配属されてしまった。
「お前、もっかい行ってちゃんと説明してこいよ」
「何度も説明しました。それは出来ない事だと上司や本社にも確認をとった上で、対応は出来るものではないとちゃんと説明しました」
「で、説明した結果が一度上司を連れてこいと」
「直接上司の方からも説明頂きたいと」
「断れ」
「え?」
「そんな事している暇はない。俺も忙しいんだ。お前の尻ぬぐいに時間を割いている余裕はない」
「でもじゃあなんて説明したらいいんですか!」
「脳みそ入ってんだろ、そこに。考えろよそれぐらい」
「いや、でも……」
「もういいか。ほんと時間の無駄だわ」
こんな調子だ。こいつの言う通りに伝えたら客は激昂する事だろう。何故こんな事に自分が精神をすり減らさなければならないのか。
「おい」
「…はい?」
その場を立ち去ろうとした高木が何故かこちらに戻ってきた。
「お前今なんつった?」
「え、いや、何も」
「嘘をつけ。脅すような声出しやがって。しかも死ねよだと?」
「いや、言ってないですよ! 本当です」
「お前、あんま調子乗ってるとこっちにも考えがあるぞ」
「いやだから……」
「クソが」
そう言い残して高木は今度こそ去って行った。
ため息が漏れる。いい加減もう辞め時かもしれない。だが生活する為には金がいる。金を得るには働かなければならない。所謂社畜だ。
現実はクソだ。だからこそどこかでそれを吐き出せる場所が必要になる。自分にとってそれがネット配信だ。働きながらも次はどこのスポットに行こうか。どんな風に配信しようかとイメージする。それだけでも少しばかり心がほぐれる。しかし内容が内容だけに人にあまり大っぴらに言える趣味ではない。二十八の男が週末に一人で心霊スポットに行くのが唯一の楽しみだなんて言えばドン引きされるだろう。
しかしそれも一度ネットの世界へ出ればそんな自分を受け入れてくれる多くの人間がいる。本当は需要があるのに、現実世界ではそれを口にする事すら憚られる。
――くだらねえ。
現実がこんなんじゃ、人々がネットの世界に居場所を求めるのは必然だ。
現実が嫌になったから、俺は向こうの世界に興味を持ちだしたのかもしれない。そう考えると思わず苦笑が漏れそうになる。
そろそろ次の配信ぐらい、思い切った事をしてみるか。




