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第八十三話 長谷川のメール

 長谷川未理緒は直ぐに長期休暇を取って、その後、人事異動で東京支社へ転勤した。しばらく遠くに行く。つらい現在が恥ずかしい過去になるまでと言って。


 しばらくして東京支社の彼女からメールが来た。

 あの陸橋の上で残った彼女はポーチに入れていたカミソリで髪の毛を切って風に飛ばしたのだとメールに書いてあった。自分の身代わりにこの世界からいなくなってもらったんだという。

 あのとき俺は気になって遠くから見ていたのだが、五分もしないうちに駅の方に歩き出したのでほっとしたのだ。


 長文のメールには、『他人に許してもらっても、自分を許せないなんて言ったけど、違ってた。今はそう思える。出河睦人が私を許してくれたから、私も私を許さなきゃいけないような気がするんだ。ありがとう。それと、気がないからなんでも話せるだろってのはちょっと違うよ。あなたは私のほんとうのことを見てくれて認めてくれるような気がしたから言えたんだと思う。決して男として見てないとかって失礼なことじゃないからね。出河睦人をコンパから外したのも、実は加納君って私のかわいい後輩の彼氏候補にはイマイチだと思っていて、加納君の友達二人の方を後輩二人に紹介したかったの。あの娘たちには、出河くんの渋い良さは分からないかなと思って。出河睦人の良さは分かりにくい良さなのよ』なんて書かれていた。


 おまえの良さは分かりにくいという言葉は、果たしてほめ言葉なのか、けなし言葉なのか微妙なところだ。

 俺もメールを返した。


『もしも、きみと、きみの過去を知らないで、どこか別の場所で出会っていたなら、きっと好きになると思う。そして好きになってから君の過去を聞いたとしても、やっぱり好きなままなんじゃないかと思うんだ。だから、きみはきっと、この先出会う誰かに愛されるだろうし、幸せになれる可能性は絶対にあるよ。ほんとうにそう思う』


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