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「要らぬものは排除――そう、教えたはずだが?」


 パチンッ! と、乾いた音が響く。途端、叶夜は体の自由を失った。


「時間切れだ。今のお前は……必要無い」


 心臓を鷲掴みされたような痛み。叶夜の体は、指先すら動かせない状態になってしまった。


「っ!? こん、なっ――!」


 ぎっ、と歯を食いしばりながら、ディオスを睨む。けれどそれが楽しいのか、ディオスは尚一層、口元を緩めていった。


「ふふっ。そのようなことをしても無意味だというのに。――今まで自由に生きられただけでも、光栄に思え」


「あ、っ……、……ぐっ!」


 それは、叶夜自身一番わかっていた。

 自然に生まれたわけじゃない自分には、いつか終わりが来ることを。

けれどそれが、こんなにも早く来るなど、予想だにしていなかった。


「お前、一つ目の誓いを捧げたか。ふっ、それだけでは不十分だというのに。――安心しろ。ただ、戻るだけだ」


 連れて行け、と近くにいる者に指示を出し、叶夜を別室に運ばせる。そこは、様々な機器のある実験室。瞬間、これから何をされるのか、叶夜は悟った。




「…………かな、らっ」




 必ず、彼女の元へ帰る!

 その思いだけが、消えかける叶夜の意識を保っていた。


「もど、って――やくそ、っ!?」


 ドガッ、と鈍い音が響く。叶夜の頬が赤く染まり、苦痛に顔を歪める。それをディオスは、つまらなそうに見ていた。続けて乱暴に髪を引っ張ると、勢いよく床へ叩き付ける。何度も繰り返すディオスに、周りの者はようやく止めに入った。


「ど、どうかお止め下さい! ディオス様!?」


「唯一の成功作です。廃棄するなら……せめて、代わりが出来るまでは生かしていただかないと」


 尚も痛めつけるディオス。己の手が血で赤く染まった頃、ようやく、その手を止めた。


「余計なことを考えるようになったものだ。お前は、存在してはいけない者だというのを忘れたか?――共に生きようなどと、幻想を抱くのはやめろ」


 はき捨てると、ディオスは近くにいた男性に、指示を与える。


「感情は徹底的に消せ。元の人形の方がマシだ」


 頷く男性。ディオスが部屋を後にすると、言われたとおり、叶夜に様々な処理を施し始めた。


 ◇◆◇◆◇


 薬を絶って、三日目の朝。

 体はよくなってきたけど、私の心は、まだ沈んだままだった。

 原因は、昨日見た光景と、お姉さんのあの言葉。どうにかしたいけど、自分になにができるのかって。


「――――日向さん」


 ドアの外から、先生が呼びかける。返事を返せば、先生は食事を運んで来てくれた。


「気分がのらないでしょうが、少しは食べた方が、体の為ですよ」


「……わかっては、いるんですけど」


 やっぱりまだ、そんな気分には。

 先生にはもう、昨日のことを話してある。契約のことは予想していたらしいけど、お姉さんのことはとても驚いていた。


「では、机に置いておきますから、気が向いたら食べて下さいね」


「はい、ありがとうござます。――先生」


「どうかしましたか?」


「ちょっと、聞きたいことがあって……」


 言葉に詰まると、先生は急ぐことはないと、優しい笑みを見せてくれる。

 数回深呼吸した後、私はようやく、疑問を口にした。


「私には……何ができるんでしょうか? 命華なのに、花の作り方もわからないですし、自分の身を護ることだって」


 ぎゅっと、毛布を握る手に力が入る。

 自分の無力さに、嫌気がさしてしまう。


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