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「――許しを、頂けますか?」




 もう一度、ゆっくり問われる。それにようやく、私は静かに、はい、と返事をした。


「では、誓いの刻印を」


 すると叶夜君は、自分の指を口に当て、血を滲ませる。

 驚く私をよそに、血で滲んだ指を私の手の甲当て、何か文字のようなものを書いていく。そして書き終えるなり、そっと、唇を落とした。


「っ! あ、あのう。これは――?」


 途端、手の甲に書かれていた血文字が淡く光る。目を見開きしばらく見ていれば、静かに、光と共に文字も消えてしまった。

 途端、体から徐々に力が抜けていく気がした。

 倒れてしまうとわかるのに、体は反応を示してくれない。このまま床に、なんて考えている間にも、体は傾いていく。


「――大丈夫」


 支えられる体。優しい声と共に、ふわりと体が持ち上げられた。


「疲れさせてすまない。――ゆっくり、休んでくれ」


 背中がやわらかい。周りを見ると、どうやらベッドに運んでくれたらしい。

 それから叶夜君は、なぜかとても嬉しそうに、私の頭を撫で始めた。


「……あまり、こういうのは」


 恥ずかしい、と小さな声で告げれば、頭を撫でる手が、頬へと移動した。


「っ、……そ、それも」


 頭より、恥ずかしいよ。

 撫でるわけではなく、ただそっと、触れているだけの手の平。

 次第に目蓋が重くなっていき、話すのも億劫おっくうになってきた。




「――――必ず」




 目蓋を閉じた途端。ふと、顔の前に、気配を感じた。でも、もう一度目蓋を開けれないほど、体から力は抜けていくばかり。

 だけど不思議と、嫌な気はしない。




「君を――護ってみせる」




 むしろ心地よくて。その感覚に、身を委ねていった。


 *****


 人里離れた山奥。

 上条は木葉に連れられ、長い長い道を進んで行った。周りは高い木々で囲まれ、月灯りが無ければ見えないほどの暗い道を歩いて行けば――突如として、開けた場所に出た。

 目の前にあるのは、大きな武家屋敷。そして木で作られた頑丈そうな門の前には、屈強な男性が一人ずつ、左右に立っていた。


「――通せ」


 木葉の一言で、門が重い音を立てて開かれる。しばらく進むと、ようやく、屋敷の入口に辿り着いた。


「相変わらず、こういう場所が好みなのですね」


「えぇ。蓮華様は基本、お一人で過ごされたいようですから。――ここが、長の部屋です」


 とある一室に着くなり、木葉は床に膝を付いた。


「蓮華様、客人を連れて参りました」


「――――入れ」


 小さな返事。

 静かに戸を引くと、木葉は軽く頭を下げ、その場から立ち去った。




「――何をしている?」




 面倒そうな声。早く入れと言われ、ようやく、上条は部屋へ足を踏み入れた。


「お久しぶりです。まだ体が思わしくないと聞きしましたが……本当、アナタは無理をしますね」


「――お互い様だ」


 布団に横になったまま、蓮華は口元を緩める。


「やはり、美咲のそばにいたか。予知は正確だったらしいな」


「私の行動も……全て、お見通しだと?」


「いや。知っているのは限られている。私が封印されること。子が生まれる時期。そして――お前が、いつ現れるか、だな」


 ふう、と息をはき、蓮華は体を起こす。

 背中を支えようとする上条だったが、構うことはない、と蓮華に言われてしまう。


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