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「――――戦いは、やはり好みませんね」




 目の前の敵を排除すると、上条は重いため息をついた。


「さて――日向さん」


 振り向き、後ろにいる美咲に呼びかける。だが反応はなく、ただじっと、上条を見つめるばかりだった。


「――今は、眠って下さい」


 悲しみを含んだ声。

 今起きていることは、上条にとっては喜ばしいことだと言うのに。それを、素直に喜ぶことは出来なかった。


「アナタはまだ、時期を迎えていません。ですから」


 そっと、片手で美咲の両目を覆う。そして――。




「今夜のことは――忘れなさい」




 やわらかい、軽やかな声。その声と同時に、上条は美咲の目蓋を閉じさせた。

 すると、美咲の体は前へと倒れる。それを受け止める上条は、なんとも複雑な表情をしていた。


「薄々考えてはいましたが……こうして目の前に現れるなど」


 驚きましたね、とため息をもらす。


「本当に、アナタには驚かされます」


 優しく、美咲の頭を撫でる。眠る姿を眺めていれば、


「一体、何があったんですか!?」


 頭上から、声が聞こえた。見上げれば、叶夜と雅の姿が近付いて来ていた。


「ここらにまだ変な雰囲気があるし――って、リヒトさん!目、戻して戻して!!」


 まだ戦闘体勢の上条に、雅は言う。

 今の上条の力は強く、目を見ただけでも気力を持って行かれそうになるほどだった。


「これは失礼。――まだ、気が抜けなかったもので」


 いつもの濃い茶色の瞳へ戻すと、上条は再び二人に視線を向ける。


「念の為、この辺りを警戒していて下さい。人に害を与えるようなら、それなりの処置を」


 頷く二人。すぐさまこの場を離れたのを確認すると、上条は美咲を運ぼうと立ち上がる。だが上条が向かったのは病室ではなく――自分の自宅。このまま病室に一人残すのは危険過ぎる。かと言って、薬を絶ってる今、二人に任せるのも危険。だから上条は、結界を施してある自宅で、美咲を休ませることに決めた。


 /////




 ――やるなら、今しかない。




 彼女の元へ行き、本来の目的を果たそう。

 その為には、再び心を閉じる必要がある。




「本当――感情は余計だ」




 この時ばかりは、父親の言葉に頷いてしまった。

 この気持ちを理解すれば、俺は俺でいられない。護るべき人を護れず、恩を返すことも出来ないだろう。

 やることは簡単。ただ、彼女を差し出せばいいだけのこと。そうすれば、護りたい者を護れる。




 ――だが、本当にそれでいいのか?




 彼女は、それを望む人ではない。何より、差し出された彼女はどうなるか。

 他人など関係無い。そう教えられたはずなのに……。

 特別な思いを。

 特別な相手を。

 よりにもよって、抱いてはいけない人物に抱こうとしていた。




「――――失敗作、だな」



 なかなか、整理がつかない。このまま行って彼女に会ってしまえば、更に迷いが生じてしまう。

どうせ、戻らなければいけないんだ。今は頭を冷やす意味も込めて、自分の世界に戻ろう。


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