表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/189


「今日の叶夜君は、なんだか頑固です」


「そんなつもりは無い。――ただ、心配なんだ」


 今、なんて言ったのかなぁ……。

 一気に疲れが出たのか、強い眠気が襲う。目を開けているのも辛くなり、叶夜君に抱えられたまま、私は眠りへと落ちていった。


 ―――――――…

 ――――――…

 ―――…


 ――夢を、見ていた。

 空は淡い桜色をしていて、とても、綺麗な場所。

 そこで私は、森を目指し歩いていた。

 理由なんて知らない。多分、目的らしい目的なんてない無いまま歩いているんだと思う。


「――、――!!」


「ッ――、-?!!」


 雑音が耳に入ってくる。進んでいくにつれ、それが次第に、人の悲鳴だということに気が付いた。聞きたくない……このまま行ったら、嫌なものを見てしまうってわかってるのに。導かれるように、私の足はまっすぐ、声の方を目指し歩いて行った。




「化け物っ! アイツは、化け物だ!!」




 開けた場所に出ると、そこにいる人はみんな、口々にそう叫んでいた。何を見て叫んでいるのかと思えば――そこにいたのは、一人の少年だった。

 もしかして、あの子を見て言ってるの?

 顔はよくわからないけど、背格好からして、十歳ぐらいの子供なんじゃないかと思う。




「従わない者は――排除」




 感情の無い、事務的な言葉。その言葉を発したのは少年で、手には、刀のように長い刃物が握られていた。

 少年の目の前には、子供を抱きながらうずくまっている女性がいる。どうやら足をケガしたらしく、逃げることができないようだ。


「この、子はっ……この子、だけは」


「なら、従えばいい」


「っ……、そんな、こと」


「では――排除する」


 その言葉を最後に、少年は躊躇することなく、手にした刃物を女性に衝き立てた。


「あ、っ……、ば、け、……ものっ!」


 少年を睨みつける女性。その瞳は暗く、憎悪と呼べる色が宿っているように思えた。




 どうして……こんなもの。




 夢にしては、音や臭いが現実味を帯び過ぎている。その場から逃げ出したいのに、足は動いてくれない。夢のはずなのに、思いどおりにならない現状。それに私は、地団駄を踏む気持ちだった。




「――――よくもッ!」




 怒りに満ちた声。その声に振り向いた少年は――心臓を、一突きにされた。


「死ね死ね死ね! 死んでしまえッ!!」


 涙を流しながら、少年に刃を向けた青年。その様子から、なんとなく、今殺された女性の関係者なんじゃないかと思った。

 あの子……死んじゃったの、かな。

 うな垂れたままの少年。即死だったのかと思えば――青年の首が、宙を舞っていた。




「――――まだ、終われない」




 胸に突き刺さる刃物を抜くと、止血もしないまま、少年は歩き始めた。

 ダメ、そのままじゃ……!

 死んでしまうと思ったら、今まで動かなかった体はすんなりと反応を示し、私は少年に手を伸ばしていた。


「?――気のせいか」


 虚ろな目で振り向き、そんなことを言う少年。

 確かに少年の肩を掴んでいるはずなのに、少年には、私のことなんて見えていないようだった。

このままじゃダメ! 治療しなきゃ!!

 何度も何度も、声を大にしているのに。少年は尚も、先へと進んで行く。

 本当に見えないのか。はたまた無視されているのか。

 今度は抱きついてでも止めようと駆けよれば――ぐらっと、目の前が揺れた。次に足に力が入らなくなり、私はその場に膝を付いてしまった。

 ま、って――!

 振り絞って出した声も、届くことはなくて。少年は私から、どんどん離れて行ってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ