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「今日の叶夜君は、なんだか頑固です」
「そんなつもりは無い。――ただ、心配なんだ」
今、なんて言ったのかなぁ……。
一気に疲れが出たのか、強い眠気が襲う。目を開けているのも辛くなり、叶夜君に抱えられたまま、私は眠りへと落ちていった。
―――――――…
――――――…
―――…
――夢を、見ていた。
空は淡い桜色をしていて、とても、綺麗な場所。
そこで私は、森を目指し歩いていた。
理由なんて知らない。多分、目的らしい目的なんてない無いまま歩いているんだと思う。
「――、――!!」
「ッ――、-?!!」
雑音が耳に入ってくる。進んでいくにつれ、それが次第に、人の悲鳴だということに気が付いた。聞きたくない……このまま行ったら、嫌なものを見てしまうってわかってるのに。導かれるように、私の足はまっすぐ、声の方を目指し歩いて行った。
「化け物っ! アイツは、化け物だ!!」
開けた場所に出ると、そこにいる人はみんな、口々にそう叫んでいた。何を見て叫んでいるのかと思えば――そこにいたのは、一人の少年だった。
もしかして、あの子を見て言ってるの?
顔はよくわからないけど、背格好からして、十歳ぐらいの子供なんじゃないかと思う。
「従わない者は――排除」
感情の無い、事務的な言葉。その言葉を発したのは少年で、手には、刀のように長い刃物が握られていた。
少年の目の前には、子供を抱きながらうずくまっている女性がいる。どうやら足をケガしたらしく、逃げることができないようだ。
「この、子はっ……この子、だけは」
「なら、従えばいい」
「っ……、そんな、こと」
「では――排除する」
その言葉を最後に、少年は躊躇することなく、手にした刃物を女性に衝き立てた。
「あ、っ……、ば、け、……ものっ!」
少年を睨みつける女性。その瞳は暗く、憎悪と呼べる色が宿っているように思えた。
どうして……こんなもの。
夢にしては、音や臭いが現実味を帯び過ぎている。その場から逃げ出したいのに、足は動いてくれない。夢のはずなのに、思いどおりにならない現状。それに私は、地団駄を踏む気持ちだった。
「――――よくもッ!」
怒りに満ちた声。その声に振り向いた少年は――心臓を、一突きにされた。
「死ね死ね死ね! 死んでしまえッ!!」
涙を流しながら、少年に刃を向けた青年。その様子から、なんとなく、今殺された女性の関係者なんじゃないかと思った。
あの子……死んじゃったの、かな。
うな垂れたままの少年。即死だったのかと思えば――青年の首が、宙を舞っていた。
「――――まだ、終われない」
胸に突き刺さる刃物を抜くと、止血もしないまま、少年は歩き始めた。
ダメ、そのままじゃ……!
死んでしまうと思ったら、今まで動かなかった体はすんなりと反応を示し、私は少年に手を伸ばしていた。
「?――気のせいか」
虚ろな目で振り向き、そんなことを言う少年。
確かに少年の肩を掴んでいるはずなのに、少年には、私のことなんて見えていないようだった。
このままじゃダメ! 治療しなきゃ!!
何度も何度も、声を大にしているのに。少年は尚も、先へと進んで行く。
本当に見えないのか。はたまた無視されているのか。
今度は抱きついてでも止めようと駆けよれば――ぐらっと、目の前が揺れた。次に足に力が入らなくなり、私はその場に膝を付いてしまった。
ま、って――!
振り絞って出した声も、届くことはなくて。少年は私から、どんどん離れて行ってしまった。




