↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/189

.


『ただ死ぬだけなら、わざわざこんな手間を取る必要は無い』


「それは……痕跡を残さない為に」


『違う。あなたの魂は――壊れてる。だから半分しか無い』


 半分だけ――?


『フィオーレであるあなたは願った。でも、それには代償が伴う。それが魂の損傷だった。傷を負った魂では、まともに生きることが出来ない。だから半分はずっと遠く――死のそばで、修復を待っていた。生きている半分が死ぬこと。それが、あなたを起こすきっかけ』


「半分しかないなら、今ある魂を使い切っても……」


 もしかしたら、足りないんじゃないかと過った。傷により半分しかないなら、力だって半分ということになる。




『だから――ワタシが在る』




「?――それは、どういう」




 ドクッ、と心臓が大きく高鳴る。

 嫌な感覚じゃない。

 例えるならそう。これから楽しいことでも起こるような、高揚感溢れる気分。


『ワタシが有れば――自然と、理解出来る』


 光が、体にまとわりつく。

 思わず強張れば、何もしないからと、耳元で声がした。


『ここには――あなたに無いモノが在る』


「自分には、無いもの」


『ここには――【体】が在る』


 胸が、じわじわと温かくなっていく。

 こんな気分は……初めてかもしれない。

 まだ、体中が高揚する感覚はあるのに、それでいて落ち着く。静と動。相反する感覚が、体の中を巡っている。


『ここには――フィオーレが残した、体の記憶が在る。それがあれば、あなたはあなたを理解出来る』


 途端、一際大きく心臓が跳ね上がった。

 思わず地面に膝を付けば、左手は石碑から離れ、今まであった光も消えてしまっていた。




「あぅ―――あぁ…」




 思い……出した。

 これは、自分が招いた結果だ。




「好きに……ならなければ」




 あの時の自分は、一人の男性に好意を抱いていた。少しでも共にいたいと願ったことが、間違いの始まりだったんだ。

 箱から溢れる黒い液体。あれに叶夜が囚われたのも納得がいく。




 これ以上……間違いを放置してないけない。




 立ち上がると、数回深呼吸をした。

 近くに箱の気配がする。体はもう無いものの、ここの土壌と残留する力を得れば、厄介になることは確実。そうなる前に――。

 気配の方を向き、真っすぐ見据える。

 箱が辿り着く前に、自分の方から迎えに行こう。

 力強く、大地を蹴り走る。箱とは違う気配。それが叶夜だと直感し、急いでその大元へと向かう。




「――リヒトさん、アレッ!」




 大きな声。おそらく、雅が自分を見つけたんだろう。自分に向かって来る気配がする。




「引き返しなさい!!」




 先程よりも大きな叫び声。どうやら、先生も近くにいるらしい。

 どんなに叫ばれても、止まることはしない。自分はこれから――護る為に逝くのだから。

 首飾りを外し、足に、より一層の力を込める。

 黒い液体に足を踏み入れれば、小さく、女性の声が聞こえた。




「ワタシ、の――…」




 ゆっくり、体の周りを覆われ始める。




 もう……繋がなくていい。




 中に居るであろう彼に言えば、すとん、と胸の中心から抜けていく感覚がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。