↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/189

/////


 気付けば――そこは黒一色。

 何処までも闇が続くそこは、どうしようもないほど、絶望という念を押しつけられる場所。

 じわり、体に何かがまとわりつく。自分を見ても、光が無いから、今どんな状態なのかが分からない……。




〝――――ヴァン〟




 音がした。

 でも、それはオレが知らない言葉。




〝――――ヴァン〟




 もう一度、同じ言葉が聞こえる。何度も呼びかけるそれは、どうやら、俺のことを呼んでいるらしい。




「――――みさ、き」




 呟けば、胸が締め付けられた。それは内側からくるものではなく、外からくる刺激。




〝私を――――見て〟




 悲しい声。

 その主を知っていると、何故か頭に浮かぶ。




〝私を――――見て〟




 懇願する声。

 確かこの声は――。




「フロル……?」




 思い浮かんだ名前を口にすれば――覚えのない光景が、目の前を駆け抜けた。


 *****


 ディオスの前から、矢のような物が放たれる。それが当たることは無かったが、気分を害されたディオスは、それを放ったであろう人物を睨みつけた。




「元人間が、私に敵うと思うのか?」




 現れたのは木葉。まっすぐにディオスを見据え、無表情のまま、次の攻撃に備える。


「お前では敵わぬ。たかが数百年しか生きておらぬくせに、私に挑むなど、命知らずもいいとこだ」


「笑っていられるのは今のうちです。貴方たちには出来なくとも、人には出来ることがあるというのを、身をもって体験するといい」

 その言葉に、ディオスは口元を緩めた。

 楽しんでいるのか、ゆっくりと、木葉との距離を縮めていく。




「――炎よ」




 ぽつり、木葉は呟く。

 そして弓を放つ構えをし――神経を、指先へと集中させる。


「ここら一体、火の海にでもするつもりか?」


「安心して下さい。狙うのは、貴方のみですから」


 言い終わると同時。木葉は、ディオスに向けて弓を射る。それは回りに炎を纏い、ディオスの周りで無数の矢に分かれ、まるで生き物のように飛んでいた。


「ほう。お前、元はただの人間ではなかったか。――〝鬼〟と化しても、他の者とは違う、という訳だな」


 木葉の正体がわかったディオスは、周りで飛び交う火矢の一部を掴む。それをそのまま握りつぶし、己の力を木葉へ見せ付けた。


「この程度か……つまらぬな。やはり、元人間では勝てぬということだ」


 笑みを浮かべるディオスに、それでも木葉は、冷静に言葉を返す。


「私は、あくまでも護衛です。あの方の為なら……捨て駒にでもなりますよ」


「その身を捧げる、と? ふんっ。馬鹿なヤツだ」


 目にも留らぬ速さで、ディオスは距離を縮める。手を伸ばし木葉に触れようとした途端――体が、言うことを利かない。




「――ようやく効きましたか」




 周りを見れば、火の玉に混じり、何かが浮遊している。よく見ればそれは蝶。どうやら、まかれる鱗紛りんぷんが不調の原因らしい。




「シエロ様からきお聞きました。――貴方は、私と同じだと」




「――――そうか」




 ゆっくり、地面に腰を下ろす。

 そこにいたのは、殺気が感じられないディオス――いや、レフィナドが現れていた。


「何か――話があるのか?」


「しいて言うなら――本当に同じなのかを確かめたかった、と言ったところでしょう」


 木葉は、シエロからその正体を聞いていた。それと同時に、彼は自分と同じだということを。


「同じ、か。何をもって、同じだと判断する」


「貴方の目的です。貴方がここまでするのは、何の為ですか?」


 レフィナドは、これまでの王華の長がしてきたように、自分の魂を分けていた。

 半分だけ生まれ変わるということは、半分は他人となる。全く同じではないものの、自分の半身とも呼べる存在が、蓮華のそばにいたことに胸を撫でおろしていた。


「ふっ。そんなこと、わざわざ口にすることではない」


 立ち上がり、まっすぐ木葉を見つめる。




「同じなら――早く行け」




 歩き出すレフィナド。

 真横に来た時、木葉は静かに告げる。




「本当に――同じですね」




 歩き出す木葉。

 振り向くことなく、それぞれが目指す場所へ足を速めて行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。