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 確か、クラスでよく話すのは――。




「みーさきっ!」




 どんっ、と勢いよく背中に誰かがぶつかった。振り向けば、とても嬉しそうな顔をした女生徒の姿が。おそらく、この人が日記にあった倉本さんという人だろう。


「もぉ~。なかなか来ないから、心配したんだからね?」


「すみません。心配をかけて……」


「これからは、ちゃんと連絡入れるのよ? 何の為のスマホよ!」


「本当にすみません」


「いや、そこまで本格的な謝罪はしなくていいから。――ってか、また敬語に戻るとかやめて。私、そこまで怒ってないんだから」


 忘れていた。

 確か、倉本さんとは親友だから、敬語はしないようにしていたのか。


「ごめんごめん。ずっとそれで話してたから。つい癖で」


「たまにならいいけど、ずっとだと、お姉さん拗ねちゃうからねぇ~?」


 背中から抱き付きながら、倉本さんは笑う。

 本当に、日記にあったとおりの人。

 明るくて面白い。姉御肌でしっかりとした人だと。

 日向美咲は、彼女に憧れていた。自分にはないものを持っていて、輝いている彼女と一緒にいれることが、美咲には幸せだった。

 今の自分にその実感はわかないが、こうして話すのは、嫌な気はしない。

 席に座って話をしていれば、隣に叶夜がやってきた。

 どうやら、顔色はいいらしい。


「具合、よくなりましたか?」


「――おかげさまで」


 振り向くことなく答える叶夜。まだ悪いのかと聞けば、大丈夫だという答えが返ってくる。


「どうして――叶夜は目を合わさないんですか?」


「「っ!?」」


 叶夜に言った言葉なのに、何故か倉本さんも反応していた。


「美咲……アンタいつから月神くんのこと名前で呼んでんの?」


「それは昨日っ」


 続きの言葉は、隣にいる叶夜の手によって塞がれてしまった。


「倉本さん、そこは聞かないでくれ」


「えぇ~普通は気になるでしょ?」


「とにかく、変な想像は無し。――あと、美咲さん借りるから」


 手を引かれ立ち上がれば、そのまま強引に、教室から連れ出された。

 まだ来たばかりなのに、何処へ行くつもりだろう?

 黙っていると、連れて行かれたのは屋上。


「見られると悪い。上に行こう」


 抱えると、ここより更に上にある建物に飛び上がる。周りを囲まれているから、ここからなら見られる心配はないだろう。


「――どうして、普通に話せるんだ?」


 下ろされると、聞こえたのは戸惑いの声。

 別に、自分は叶夜を避ける理由などない。


「普通ですよ。叶夜こそ、何をそんなに気にしているんですか?」


「――俺が昨日何をしたか、覚えてないのか?」


「発症のことですか? あれはしょうがないですよ。それを気にしてるんですか?」


「当たり前だ。オレは美咲さんを……」


 ぐっ、と悔しそうに言葉を飲み込む。

 そんなに責任を感じる必要はないのに。


「自分は無事です。だから、もう忘れましょう」


「っ!? 忘れる、って……」


「自分は気にしていない。だから、この話は終わりです」


 本当に、叶夜は真面目だ。

 自分がいいと言っているのに、まだ気に掛けるのだから。


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