表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/189

/6


 目を開ければ、ゆらゆらと光る水面。

 ゆっくり、ゆっくり。体が徐々に沈んでいく。




 ――あぁ、そっか。




 これから、返るんだ。

 日向美咲は消えて、別のモノが支配する。

 ゆっくり、ゆっくり。体が徐々に溶けていく。




 ――あと、どのくらい。




 【私】と言う個は、存在できるだろう。

 残るは思考のみ。全てが無になるなら、それまで――。


 *****


 蓮華が繋げた場所は、自分の世界。屋敷に上条たちを案内すると、門の先で、一人の男が立っていた。


「――ご無事でなによりです」


「相変わらず、心配症だな。これから重要な話をする。ここには誰も近付けるな」


 頷くと、男はすぐにその場から立ち去って行った。


「まずは、シエロを寝かせてくる。リヒトたちは、奥の部屋で待っていてくれ」


 言われたとおり、上条たちは奥の部屋へ進んだ。

 雅は蓮華と共に、別の部屋へ進む。

 雅が案内されたのは、六畳ほどの畳の間。家具は一切無く、生活感が感じられない部屋だ。そこに布団を敷きシエロを寝かせると、蓮華は自分が腕にしていた数珠を外し、シエロの腕に付けた。


「とりあえず、これでよいだろう。――運ばせてすまなかったな」


「いいですけど、どーしてオレに運ばせたんですか?」


「お前がスウェーテの者だからだ」


「……アンタも、オレのこと知ってるの?」


「お前と言うよりは、スウェーテが持つ力についてだな」


「力、ねぇ……」


 雅は以前、上条から一族のことを聞いていた。自分の一族は、いわゆる魔術のようなことが出来る存在。その力を使い、命華と似た力を得たのだと。

 しかし、魔術は万能ではない。いくら似たような力を使えるとはいえ、所詮は紛い物。それに、操るには才能も必要となる。今までそれを知らなかった自分に、そんな力があるのかと半信半疑だった。


「――力のことは、後で教えよう」


 立ち上がり、部屋をあとにしようとする蓮華。それに続かない雅を見て、行くぞ、と声をかける。ようやく反応を示した雅は、蓮華が何を知っているのかと、興味の眼差しを向けていた。




「――では、始めるとするか」




 上条たちが居る部屋に戻るなり、蓮華は早速話を切り出す。まず進められたのは、青年の素姓についてだった。


「話せる範囲でよい。答えてくれぬか?」


 予想外の言葉だったのか、青年は少し、反応に困ってしまった。


「話せぬなら、別に構わぬぞ」


「――いや、話しましょう」


 皆の視線が、青年に集中する。

 そしてゆっくり、青年は自分のことを語り始めた。


「私は昔、ある方に仕えていた。その方は、現世で日向美咲と呼ばれる方。私が主と接触するのは、主が生を終結させる時。他の誰にも邪魔されることなく、主の望みを遂行する為、私は仕えている。あの場でも、主はそれを行おうとした。だというのに……」


 ぎっ、と鋭い視線を叶夜に向ける。


「貴方が邪魔をしたせいで、主は捕らわれてしまった。貴方が出て来なければ、主は望み通りの死を迎えられたというのに」


「――望み通りの、死? お前、本気で言ってるのか?」


「主の望みを遂行する。それがどんな願いだろうと、私に拒否する術は無い」


「大事じゃないのか? 自分が使えるほどの相手に、そんなことを本気で望むのか!?」


 胸倉を掴み、叶夜は青年を睨んだ。

 しかし、青年は冷めた様子で叶夜を見ていた。


「――貴方には、わかりませんよ」


 その瞳は、まるで心を見透かすようだった。


「主が何を思い、どうして死を選ぶかなど――貴方には、わかるはずない」


「っ!――――?」


「話し合うことが先決だと、言っておるだろう」


 上げようとした叶夜の手は、蓮華によって制された。


「冷静になれなければ、助けに行くことは出来ぬぞ」


「…………ちっ」


 渋々ながら、青年を掴んでいた手を放す。

 頭を冷やす為か、叶夜はみなから距離をとった。


「――では、続けるとしよう。お前は、この世で生まれ変わるたび、主である美咲の前に現れるということか?」


「えぇ。しかし、いつもは私を呼ぶ力などない。そもそも、過去の記憶を所持するなど――今回の主には、不可解なことが多過ぎる」


「――不可解じゃないよ」


 今まで沈黙を貫いていた雅が、そんなことを口にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ