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魔法少女のお姉ちゃんは変質者-SER.とりあえず殺しておくか。  作者: モコ田モコ助
第3章 新しい敵

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3.地平線の先っぽにて

「隣町のややこしい噂が絶えない金融業者が、建築物ごと消えたって、大騒ぎになってるわよ」

「へぇー」


 ブルーから、近くの喫茶店への出頭命令が出ていた。

 心細いので妹を伴って喫茶店へ。

 すでにブルーはレッドと共に待ち受けていた。いまココ。


「構成員、もとい、社長から平社員まで、重傷を負わされて差穂川河原に放置されてたって話よ。しかも全裸で」


「ちょっと、なあ、二人とも――」

 レッドがおろおろしている。


「先に注文しようよー!」

 気の利く可愛い妹は、ブルーの魔の手よりお姉ちゃんを守ってくれた。


「お姉ちゃんは炭酸以外が飲みたいな」

「なに、あなた、まだ炭酸飲めないの?」

 今日のブルーは良く絡むブルーだ。 


「あのしゅわしゅわが駄目なんだ?」

 リンゴジュースを注文した。妹はクッキーセットだ。


「お子様ね」

「なんだー? 今日はよく絡むねー? あー?」


「犯人はお姉ちゃんね。うん、返事は要らないわ。決定事項だから」

「証拠はどこにあるのよ? それに、経験値がふえてレベルアップしたんだから。これは良い事なのよ!」


「自供って言葉知ってる? いいえ、返事は要らないわ。こんな小学生用語を聞いたわたしが悪いんだから!」

「おいおい。あたしに向かってそんな口聞いて良いのかな? あー?」


「自分の能力に胡座掻いて、増長してるわね? ああ、返事はいらないわ。私がお姉ちゃんならとっくに増長してたから」


「なあ、ちょと、ブルーさんの言ってる意味が深そうなんやけど?」


 レッドのボケはもういい!

 あったま来た!


「よーし、よく言った。表出ろぃ!」


 ブルーに掴みかかろうと手を伸ばした。


 その時だった。


「もう止めときてー!」

 レッドがあたしとブルーの間に体をねじ込んできた。






 プロノク=レイマーには3つの名がある。


 一つは、機動城塞。

 一つは、侵略要塞。


 最後の一つは、魔王の城。


 軌道城塞(パレス)の名に恥じず、プロノク=レイマーは、厳かにマーゾン空間を移動している。


 侵略要塞の名を表すご如く、プロノク=レイマーは、平行世界軍を闇に染めていく。


 魔王の城の名なればこそ、―― ネガ・クライマーがそこに棲む ――。




 30過ぎの男が、プロノク=レイマー奥の通路を急いでいた。苦悶の表情を浮かべながら。


 彼の名はルッセーナ。ネガ・クライマーの親衛隊長。

 そしてサタノダークとナグールの兄。

 第一王子だ。


 美丈夫なのだが、痩せぎすの体躯と青白い肌、ご丁寧にグレーの髪が、彼に病的なイメージを持たせている。


 だが、きびきびした動きが彼の侮れぬ戦闘力を証明していた。

 プロノク=レイマーの最深部、そこが彼の目指すところであり、この軌道城塞の主の居場所である。


 暗い通路に入り込み、いくつもの暗い部屋を通り過ぎ、空間を仕切る黒いカーテンを押しのけ、一切光の届かぬ世界へ足を踏み入れた。


 後一枚、カーテンを押しのければ、彼の親にして主が住まう場所。

 手をかけて、彼は静止した。息を殺し、一切の気配を立つ。


 ――主が、誰かと会話している――



「……言いたい事はそれだけか?」

 一瞬会話が途切れたが、すぐに話が続いた。


 気のせいか? 気づかれたか?


「ならば話は……いずれ、相まみえ……」


 部分部分が聞き取れない。いや、盗み聞きするつもりは毛頭無い。


「ルッセーナ。何をしておる。話があるなら済ませよ」

「はっ! 申し訳御座いません、ネガ・クライマー様!」


 切れの良い動作でカーテンを撥ね、音を立てる事なく、ネガ・クライマーの前に進み出た。


 片膝をつき、臣下の礼をとる。

 親とは言え、主として仕えているのだ。


 ……まったく、主の姿が、見えない。


 この部屋に光が全くない、だけでなく、ネガ・クライマーが放つ陰の気配が読みをより黒く塗りつぶしている。


 彼が苦悶の表情を浮かべていたのは、このプレッシャーを嫌がっていた為。

 とてもじゃないが長くは耐えられぬ。


 闇に住まう者なのに、闇の波動が強すぎて体を壊してしまいそうだ。

 ルッセーナの頭の中に、先ほどの会話は綺麗に消えて無くなっていた。

 唾をごくりと嚥下する。


「例の、反逆者共の資料を集めて参りました。これを……」


 手のひらサイズの異物を差し出した。それは、磨き上げた黒曜石にしか見えない。

 静まりかえった時間が、ただただ過ぎていく。


「ふふふ、面白いな。このような生命がいたとは。いや、これを生命と呼ぶのか? ふふふ、謎だな。ほほう、他の平行世界にも生息しておるか。ふふふ」


「ふー」

 ルッセーナは主の機嫌が優れている事に安堵した。


「ルッセーナよ」

 だからいきなり名を呼ばれ、心臓が跳ねたからと言って彼の責任ではなかろう。


「この巣、まだどこかに穴があるようだ。探して塞げ。下がって良し」

「はっ! ははーっ!」


 額を床に押し当て、拝命する。

 黒い石状の記録媒体を回収。そのまま膝行りつつ後ろへ下がる。


 どうにかカーテンの所まで後退し、素早く立ち上がって踵を返す。


 命を長らえた。

 そのことを実感しつつ、走りさる。






 ナグールは黒曜石を手にしていた。

 出所はルッセーナだ。 


 長い間、怖い顔をして覗き込んでいた。


 光の園が消滅した第2世界。そこでネクライマーと戦うグループが映し出されていた。

 彼らは光の戦士ではない。


 1人目は、邪なる者。巨大な刃物を振り回す、中心戦力の1人。


 2人目は、聖なる者。巨大な銃器を振り回す、もう1人の中心人物。


 残りは、やや劣る者が6人。

 ――聖邪2つを合わせ持つ少女剣士。攻撃を全て無効にする邪なる少年。少年の背を守る聖なる獣。複数の武器を扱う聖なる筋肉男。天才的な采配をふるう、邪な少女。


 どうやらこの連中、自主的に戦っているらしい。


 ようやく、ナグールが黒曜石から目を離した。


「第4世界を鎮圧したら、全軍で第2世界へ攻勢をかけ、一気に殲滅占領する」


 手の中の黒曜石を強く握る。

 指の間から、黒曜石の粉が流れ落ちた。






「もう止めときてー!」

 レッドがあたしとブルーの間に体をねじ込んできた。


「仲間割れしてる場合ちゃうやろ!」


 ったく! 何してるのかな、この子。


「あのね――」

「本気で喧嘩するわけないでしょ!」


 あたしが言い返す前に、ブルーが言い返していた。


「お姉ちゃんには、むしろ恩があるの。腹が立つけどね。だから本気じゃないの」


 いちいちカチンと来る言い方だなー。

 こいつ昔からこうだったよなー!


「こっちだって、この女の下心くらい理解してますですよ! 将来、国家公務員を狙ってんでしょ?」


 きっ!

 首からブレーキ音を立て、こっちを睨み付けてんじゃないよ!


「いつも仲が良いよねー、お姉ちゃんとブルーは」


 のんびりした声。妹だ。

 かじり掛けのビスケットを手に持って揺らしている。


「え? なんやのん? 二人はそう言う関係なん?」


 二人を交互に指さしながら、レッドがあきれ顔を晒していた。


「違う! 少なくともあたしは本気でこいつの事がっ!」

「はいはい、チュッチュチュッチュ!」

「だから違うって!」


 ブルーは両手を軽く挙げた、それって降参の意味だよね! 

「違……、お姉ちゃんは特別だから」

「ん?」


 レッドの眉が歪む。何か気になるところがあったようだ。

 ブルー、てめぇ口が軽いぞ!


「まあ、……仲が良いんならかまへんねけどな」

「だから――あ?」


 ガシャーン!


 テーブルにのっていた食器類が割れる音。

 あたしがテーブルを立てたからだ。


 バシャーン!


 喫茶店の窓ガラスが全部割れた!

 ガラスのジャワーを浴びるお客さん達。


 あたしが咄嗟にテーブルを立てたおかげで、妹たちに被害は無い。


「この気配!」

 マーゾックの奇襲を食らったようだ。 




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