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魔法少女のお姉ちゃんは変質者-SER.とりあえず殺しておくか。  作者: モコ田モコ助
第3章 新しい敵

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2.パワーアップ! マジカルキューティ・キャスケット!

 光の園・長老会議室は熱を帯びていた。


「うむ、確かにその通りじゃ」


 顎髭を床まで垂らしたジジイ精霊が難しい顔をして腕を組む。


「しかし、そこは伝説の光の戦士。努力と愛と勇気と希望で乗り越えるのじゃ!」


「だからどうやって!」

 真円を描くよう心がけ、思い切り頭をはたいてやった。


貴様(あんた)ら、ちゃんと目で物を見てる? なんだったら、目玉をくりぬいて銀紙でも丸めて放り込んであげようか?」


「物を知らぬ愚者め! 清く正しい心を持っておれば、闇に負ける事は無いのじゃ!」


「浄化の光が届かなくても?」

「わららは正義。正義に勝てる悪などおりゃせぬわ!」


「前例はあるの?」

「これから前例を作ればよいのじゃ!」


 長老連中、全員が拍手をしている。


 これだから原理主義者は……。


 あー、なーっんか切れちゃったー!

 ゆっくりと合わせつつある両手が、黒と白の光を発し始める。


「時は来たれり。アブソぶきゅる!」

「待つですよー!」


 あ・た・し・に、跳び蹴りを食らわせたのは、だーれーだー!   


「あ! クレシェントちゃんだ! 可愛い!」


 妹の可愛い声で正気に戻れた。


 あれか? 光りの精霊アルフィスの巫女を名乗るクレシェントか?

 幼女を妹が抱っこして頬ずりしている。


 尊い。


「パワーアップの話しは、アルフィス様も迷っておられたですよー」


 クレシェントは、難しい顔をして首を横方向へ振っている。


「敵は強化されつつある。わたし達の技に、対策を取られているのよ」

 前置き無しで説得に入るブルー。相変わらず効率重視の女め!


「お爺ちゃん()はアタマ固いわ! ほんま、世界を守る気あんのかいな? ごっつ不安やなー!」

 レッドは、腕を頭の後ろに組んで立っていた。不真面目な態度と言動が、光の園の住人に対する不満を表している。


「大丈夫ですよー。へーきへーきですよー! わたしは、個人的にマジカルキューティーをパワーアップさせる為にやってきたのですよー」

 話の分かる子供だ。そうこなくっちゃ。

 ……ほんとうに子供か?


 こう……、マジカルでキューティーなキャッスル的な? キラキラした場所で、試練を乗り越えて、次の段階へ進むのだろうな。

 なんかオラわくわくしてきたぞ!


「ではマジカル・キューティ・フォートレスへ案内するですよー」


 え?


「キャッスルじゃなくて要塞(フォートレス)?」

「レッドとブルーとピンクの、マジカルキューティ3人は、変身してからこっち来るですよー」


 何も無い空間に、洒落た扉が出現。

 戸が開くと、目を射貫くまでの強い光があふれ出た。

 さすが原理主義の大元、城じゃなくて要s……


「ちょっと待て! 3人って何? あたしもマジカルキューティじゃん!」

「く、苦しいですよー。頸動脈を絞めるのは駄目ですよー!」


 締めが駄目と言われて、片手ネックハンギングに切り替えた。


「精霊の力で底上げするより、毎日町内を10周する方が……ぐふっ! それ以前に、お姉ちゃんは拒否反応で……ぐふっ、よー!」


 そんなことは無い! 


「うおーっ!」


 瞬歩の法を用い、光の扉へ突進!

 バリバリバリ!


「うみゃー!」

 悲鳴を上げた!


 全身から発生する雷光、火花! あまりの痛みに転がりまくった。

 香ばしい臭いがするが、まさかあたしの体からではなかろうな!

 おのれ、こうなったら光の園ごと自爆してくれよう!


「お姉ちゃんはレベルが高いから――」

 妹が背中を撫でてくれている。


「もっと激しい試練が必要なんじゃないかしら?」

 ……それもそうだ。妹が言う事はいつも正しい。正義だ。


 あとで自主練を考えよう。


「案内するですよー! 付いてくるですよー」

 クレシェントが無頓着に扉をくぐった。


「ほな、行ってくるわ!」

 変身したレッドが楽しそう、といったオーラを出しまくりながらドアをくぐった。


「ふー!」

 息を吐いているのはブルー。緊張の面持ちでドアをくぐる。


「大丈夫よ、大丈夫!」

 妹の真剣な表情が……たまらん!


 あれ? これって、初めて妹と別行動?

 不安だ!


 この世の終わりに匹敵する不安を抱くあたしを残して、妹は扉に飛び込んだ。

 そして、ドアが閉まった。 

 





 妹が入っていった豪奢な扉を怨念……、もとい。真心のこもった目で凝視し続けていた。


「遅いね?」

「今扉が閉まった所だニュ」 


 平坦なイントネーションで答えてくれたUMA。こっちを見ようとしない。


 あたしは携帯を取りだし、アプリを起動させた。

「だめだ。GPSが死んでいるわ」


「マジカル・キューティ・フォートレスは、防衛上、電波を含めたあらゆる物が遮断されているニュ。てか、GPS発信器を妹さんに仕込んでいるのかニュ?」


 さすが原理主義の要塞。極光勢力の城。


「むぅ!」

 あたしは唸った。


「だとすると、盗聴器も役に――」

「一度、人間の公的遵法組織に相談してみるニュ」


「地元の警察は止めておいた方が良いわね。幹部は私生活面における単純暴力に屈しているから、あたし関連の案件は通らないわ」


 最大の防御は、個人に向けた暴力なのだ。


「福岡県警に回すニュ」

「あそこだけは止めてくれ。何でも言うことをきくから」


「だったら、お姉ちゃん独自の、お姉ちゃんによるお姉ちゃんの強化策でも考えてろニュ」

「それもそうだ。第一、ここでじっとして、しかも妹の安否を気にしたままだと、つい暴れて光の園を破壊し尽くしてしまいそうだ。5分もあれば制圧できるかな?」

「お、お姉ちゃんは物理攻撃が得意なので御座いますから、そっちを伸ばすニュ。褒めて伸ばすニュ。お姉ちゃんは、やれば出来る子ですニュ」


 UMAの勧めもある。妹の無事を確認できたら、地上界で…… 

 隣町の893事務所を襲撃。経験値を稼いでレベルアップを図る。とか?


「何を考えているか解らないけど、もう少し過激レベルを落とした方が良いという予感がガンガンするニュ」




 扉が開いた。


()ったのか?」

「成し遂げたのか? という意味での『やったのか』で良いのだニュ?」


 三人が飛び出してきた。妹は無事だ。


 妹に飛びついた。

「よくやった! よくやったね!」


 クンカクンカ。うっすらかかれた汗の臭い。良い匂い!


 三人とも肩で息をしている。

 レッドは疲れが目立つし、興奮気味だ。大量の汗をかいたのか、上半身の色が変わっていた。


 ブルーは、腰を曲げ膝に手を置き、息を整えている。

 妹は、成し遂げた嬉しさからか、頬を紅潮させ、テンションが高い。

 相当厳しい修練があったと考えられる。


「どうだった?」

「うーん……」


 三人とも微妙な表情を浮かべている。


 最初に口を開いたのはレッドだ。

「一言で言うたら、YSJのジェラシーックパーク・ライド?」


 ライド?


「おい、ブルー?」


 ブルーはこっちを見もせず、ただ激しく、手をお断りの意思表示で振っていた。   

 中で何があったのだ?


 妹の顔を覗き込む。

「最後の急流滑りが怖かったねー!」


「まさか、あそこに急流滑りを持ってきよるとは! おかげで水しぶき浴びてもうたわ」

 レッドの服が濡れているのは急流滑り?


「おい、ブルー! 真実を話せ!」

 ブルーは、相変わらず俯いたままで手を左右に振るばかり。


 中で、どんな恐ろしい試練が行われていたのだ?


「はいですよー! お疲れ様でしたよー!」

 中途半端なエルフ、クレシェントが扉の向こうから出てきた。


 手には、キラキラゴテゴテした小箱があった。


「はっ! それはまさか!」

 UMAよ、語尾のニュが抜けているぞ。


「伝説のレアアイテム、『ファイナル・キューティー・キャスケット』ですよー!」


 うーむ、そうきたか。

 個のパワーアップじゃ無くて、アイテムによる火力の底上げか。


 あたしとしては、危険な修行で妹を危ない目に遭わせずに済んだかや、光の園を破壊する必要がなくなって良かったけど。


 試練って必要だったのか? つーか、そもそも、試練だったのか? という疑問は置いといて、まずは目出度い。




 目出度さも中途半端に75点。


 字余りか? 字余りじゃ無いのか?




 こうして、無事、お手軽にパワーアップ?を果たしたマジカルキューティーは、光の園を後にするのであった。






 その日の夜。


 我が身の鍛錬として、某組織を建築物ごと謎の戦闘力で地上より消し、構成員を半殺しにして河原に全裸で放置しておくという経験値稼ぎでレベルアップした気がする。



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