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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
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09 ジークの力

 

 巨大な猪が雄叫びをあげながら突っ込んでくる。

 俺は臆する事なく身構え、衝突の瞬間左手を突き出す。


 ドンッ!!


 中々の力を感じたが、問題なく突進を受け止める事に成功する。

 防御力に不安があったが、ダメージはないようで一安心だ。

 前へ進もうとするも、進めない猪がジタバタしだしたので、空いてる右手で顔面を思いっきり殴ってやった。


 グシャッ!


 うん、攻撃力問題なし!

 巨大な猪の顔面は俺の手により陥没し胴体にめり込み、かなりグロい事になっている。


 ドォォォォォン!


 巨大な身体が横に倒れ、小突いてみるが反応はない。

 死んだみたいだ。

 こいつが強い魔物なら、やってけそうなんだが、わからん!

 あっ、そう言えばジーク投げたんだった・・・・・・


「ジーク! 悪かった、終わったぞ」


「うぅ、みてたよ。僕は大精霊で相棒なのにいきなり投げるなんて・・・・・・」


 半泣きのジークがフラフラと近寄ってきた。


「わ、悪かったよ、今度から一言声掛けてから投げるからさ?」


「何で投げる前提なのだよ!? お願いだからもう少し優しく扱って!」


 拗ねるジークの機嫌は中々戻らなかった。






 その後も、先程倒した巨大な猪を何度かぶん殴って、街へと向かう。

 道中、機嫌が悪かったジークは聖なるお菓子によって機嫌を直してくれたみたいで、今は俺が肩車している。

 ちっこい上に軽いから全然楽だからいいんだけどさ。

 それと、精霊王様から念話が届いて精霊王様と約束した事を必ず守るようにとの事。


【異世界から来た事を誰にも話してはいけない】


【時を遡った事を誰にも話してはいけない】


【レムレールに何が起こるか誰にも話してはいけない】


 他にもあるが、この3つは精霊王様から特に念を押された。

 理由はわからないが、何かあるのだろうか?? まぁ約束を破る気はないが、気をつけとこう。

 約束と言えば、機嫌が直ったジークにもう投げないと約束させられた。

 俺としては、ジークの安全の為にと良かれと思ってやった行動だったんだが


「いいかい? 精霊は基本的にあらゆる攻撃を受けないんだ。だから避難させなくてもいい。わかったね?」


 との事らしい。

 そんな事言われても、俺は普通に殴れたわけだし説得力がない。

 俺が怪しんでいると


「なんだその顔は!? 何を言いたいのかは大体わかるぞ! なら僕もあえて言わせてもらおうか、僕を殴れるダイスケが例外なんだ。契約を交わした今ならともかく、あの時殴れるなんてあり得ないんだよ。一体君は何者なんだ。人間って言っても僕は信じないよ? そもそも人間があんなに高く跳・・・・・・」


 例外って言われても普通に殴っただけだしなぁ。

 しかし、あれだな。

 ステータスといい、ジークといい失礼じゃないか? 俺を人間と認めたくないらしい。

 俺が人間じゃないんなら、俺よりも強かったじいちゃんはどうなるんだよ。






 ・・・・・・じいちゃん人間だよな?





 ジークがネチネチ何か言ってるが長くなりそうだし、無視していると


「こらぁ! 僕の話聞いてないだろ!」


「ちっ、ばれたか」


「素直に認めるなぁ!」


 俺の髪の毛をガシガシ引っ張るジークに聖なるお菓子を進呈すると大人しくなった。チョロイ大精霊だ。







 日が暮れたので今夜は野宿する事にして、不気味な色の木を集め、荷物の中からライターを取り出し火をつける。

 飯は持ってきたオニギリをジークと分けて食べた。

 本当は分けるつもりはなかったんだが、ジークが涎を垂らして見つめてきたので仕方なくだ。

 火を恐れてかは知らないが、魔物が寄ってくる事もなく、時間を持て余していた俺は、ジークから精霊について勉強させられた。

 それでわかった事が幾つかある。



 ジークは俺にしか視えないらしい。


 ジーク次第では俺以外にも視えるようにする事は可能らしいが、精霊は希少な存在でいらぬ騒ぎが起こるとか何とかで、基本的には俺にしか視えないスタンスでいくらしい。


 精霊という存在をまだよく理解していない俺だが、騒ぎが起こる可能性があるならそれでいいと納得した。

 補足だが、姿が視えたとしても触れる事はできないらしい。

 ジーク曰く条件次第で可能らしいが、普通は無理だとの事。



 それとジークの精霊力について。

 精霊力というのは、精霊が力を行使する為に必要なもので、まぁ簡単に言えばMPみたいなもんだろう。

 少しずつ回復していくが、時間がかかるとの事だ。

 回復には時間がかかり、精霊力が殆ど残っていないジーク。

 何も出来ない子・・・・・・と思いきや




「ふふふ、あまり僕を舐めないでくれたまえよ?僕は大精霊だぞ? 精霊力が空に近い状態でも簡単な空間なら自在に操れるぞ? どういう事か聞きたいかい? 聞きたいだろ? 仕方がないなぁ、まずだね、空間を・・・・・・」


 俺は聞きたいなんて言ってないのに勝手に喋り始めたジークの話は長かった。

 1時間くらい喋り続けたんじゃないだろうか?

 まぁでも、内容がわかりやすかったから無駄な時間ではなかったと思いたい。ジークが今使える力は2つだ。


 レムレールの世界で1度行った場所なら条件付きだが、空間を繋き移動できる。


 条件は、その場所に精霊力を使い精霊陣を刻む事。


 精霊陣は最大で2箇所にしか設置できない。

 2箇所以上設置すると古い場所から上書きされていくらしい。

 但し、精霊陣が何者かの手によって乱されると効果を失ってしまう。


 街中とか、人の出入りが多い場所だと、その危険性が増えてしまうので、色々考えて設置しないとな。

 精霊力が回復すればやりたい放題らしいが、暫くはこの程度が限界らしい。

 ジークは少し申し訳なさそうな感じだったが、気にする必要はない。

 何故なら条件付きでも便利だからだ。

 移動時間を大幅に短縮できるし、不足の事態も、この力があれば対処できる可能性が上がるだろう。

 素晴らしい力だ! 匍匐前進移動だけどな。


 そしてもう1つ、これも便利だ。


 ジークは独自の空間を創り出す事ができる。


 アイテムボックスだ!


 荷物の持ち運びが便利になるし、素晴らしいが、ジーク曰く欠点があるらしい。


 扉同様に入口が狭い・・・・・・つまり大きすぎる物は無理って事。


 後、命あるものも無理らしい。


 正直そんなに痛くない欠点だと思うし、こっちも素晴らしい力だと思う。

 物を出したい時はジークに言えば一瞬で出してくれるしな!


 大精霊様役に立つ子!


 長々と説明して、俺が誉めるとドヤ顔をしていたジークは疲れたのか俺の腹の上でアホ顔で寝ている。

 そんなジークを微笑ましく思い、俺も眠りについた。






 目が覚めると不気味な大樹に囲まれた森の中だった。

 ぼっーとする頭を時間をかけて覚醒させて、あぁそう言えば異世界だったなと思い出す。

 腹の上でアホ顔で気持ちよさそうに寝てるジークを腹からどけて、身体を伸ばし解していく。

 身体が解れたら日課の修練だ。

 持ち込んだ愛用の棒を取り出し、普段より時間が取れないので全力でひたすら振り続ける。



 ブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッ




「ひぃぃぃぃ!」


 折角いい感じで集中してたのに、ジークの情けない声で台無しだ。


「おはようさん、間抜けな声出してどうした?」


「あっ、ダイスケか。おはよう。不吉な音が聞こえたような気がしたのだよ。何もないかい?」


 不吉な音? 何を言ってるんだ?


「何もないぞ? 寝坊けたんじゃないのか?」


「そ、そうか、寝坊けただけか。いやでも確かに死を感じさせる不吉な音が聞こえたような・・・・・・」


 訳のわからん事を言ってるジークをいつもの様に無視して素振りを続ける


 ブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッブンッ


「ひぃぃぃぃ! そ、それだぁ! 何をやってるんだ!?」


「朝からうるさいぞ? 見てわかるだろ? 修練だ」


「人間の動きじゃないだろっ! 速すぎて目で追えないし、お、音の聞こえ方もおかしすぎるぞ!」


「ジーク、まだまだ未熟だな。俺を鍛えてくれた人は、素振りをしたら音が遅れて聞こえたもんだ・・・・・・俺もいつかあの境地に必ず!」


 じいちゃんは凄かった。

 俺なんてまだまだじいちゃんに比べたら未熟者だ。

 もっと早く・・・・・・音よりも早く、力強さを失わず更なる高みへ


「ダイスケも、ダイスケを鍛えた人もおかしいよ!! と、とにかくその棒を使う時は早めに教えて! 掠っただけで僕は・・・・・・」


 ジークを無視して、俺は棒を振り続けた。


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