14 泣いている、子供達
泣いている。
幼い自分が泣いている。
信じたい、でも信じきれない。その葛藤の中で泣いている。
真っ白な空間の中で泣き続ける子供をぼんやりと見つめていたキリエは、まるで師匠達と出会った頃に戻ったようだと自嘲した。
途方に暮れていたところを、偶然拾われただけの関係。傭兵になると言っても、師匠も自分も信じられないほどひ弱だった身体。
弟子にしてくれるというのは嘘で、本当は売られてしまうのではないかと疑っていたあの頃。顔色をうかがいながら、びくびくと慎重におとなしくしていた。
そんな自分を笑い飛ばすかのように、あの人達は容赦なく知識と技術を叩きこんでくれた。
生きるために。大切なものを守るために。
もう二度と、喪わないために。
……信じていいの? 本当に?
ギブロスのこと、嘘をついていたのに?
教わったこと全てが偽りに思えてしまう。
自分を支えてきたものが、音を立てて崩れていくような感覚になる。
泣き続ける子供を、キリエはただ見つめることしかできなかった。
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キリエがいない屋敷の中は、いつもと変わらないはずなのに何故かやけに静かに思える。
目覚めかけたキリエに睡眠薬を飲ませ、傷の手当ても終えたディラックは、小さくため息をついた。白いベッドの中で静かに呼吸をする、細い身体を見下ろす。
色白の肌。
けして滑らかとは言えないが、それでも本人が手入れを怠っていないため、傭兵とは思えないほど荒れが少ない。
長い睫も柔らかそうな唇も、そして人目を惹く顔立ちも、全てが傭兵らしからぬ少女。
だからこそ、遠い昔に別れを告げた妹を思い起こさせる。つい重ねて見てしまう。
「キリエ……無茶すんなって」
腕前は一流なのに、どこか危なっかしくて見ていられない。
小さく苦笑して呟いたディラックは、しかし次の瞬間表情を変えた。
「……ドミニゴ?」
表情を険しくして呟き、ちらりと横たわるキリエを見る。──キリエが動けない今、自分一人で相手をしなければならなかった。
「……二軍である事を願うな」
二軍程度なら、ディラック一人でも対応はできる。だが、精鋭の一軍が来ていたならば──勝算は必ずしもあるとは言えなかった。
自然、奥歯に力が入る。
もう一度キリエを一瞥し、彼は身を翻した。
「キリエ──守るからな」
お前の命を。




