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原初の魔人  作者: 彼岸花
第1章 転生と魔王
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06.試験

 パソコンをネットワーク込みで売るには資格が必要、そのため今日は魔法免許の試験を受けに行く。

 魔法免許取得試験は毎月21日、魔術免許取得試験は23、魔道具使用免許取得試験は25日、魔道具製作免許取得試験は27日、魔道具開発免許取得試験は29日にあるため、まずは魔法免許を取ろう、ということだ。

 私はまだ魔術が使えないため、魔法免許と魔道具使用免許、魔道具製作免許、魔道具開発免許を取る予定だ。


 五種の免許は共通して一~十級に分かれ、階級によって許可される魔法、魔術、魔道具の威力と範囲が上がる。

 試験は筆記と魔道具開発免許以外は魔力量検査と実技があり、しかも異能の使用が許可されるため、筆記の方は心配ない。

 実技の方も双生児性能力偏向症と【魔力支配】で心配はない。

 さらに言えば、飛び級制度もある…と言っても、受ける階級の一個上に行ける、というだけだが。


 という訳で、生後2年1か月、九級魔法免許飛び級取得試験に挑む。

 内容は十級と九級の筆記試験を合わせてほんのちょっと難しくしたものと、従魔魔術で従えた魔物との戦闘実技試験。

 筆記は【記憶管理】で問題ない、私の記憶から引っ張ってくればいいし、やらなかったが他の受験者の記憶を見ればいい。

 魔力量検査は専用の魔道具に手を当てて測定するのだが、これも聖霊級の魔力量を持つ私には問題なし。


 そして、実技試験。

 試験はとある学校を借りて実施されるのだが、実技試験はその学校の体育館…というよりは、訓練場のような建物で行われる。

 そこで用意されたフィールドで他の受験者と試験官の前で魔物を討伐する、これが条件だ。


「ほっほぅ…」


 そして今、私の目の前では別の受験者がその魔物…そんな生理的嫌悪感を催さない外見のゴブリンと戦っている。

 実は私ムーン以外で魔物を見るのはこれが初めてなのだ。

 この世界別にレベルもスキルもないからな、魔物を倒したところで大半が風化の魔素で消えるし、残った部位も普通に安全なものは買えるし…貴族が魔物を狩る必要がないのだ。

 そのため今までムーン以外の魔物を見ることなく過ごしてきたってわけだな。


 ダンジョンという魔物と財宝が無限湧きする魔力的異空間がある街とかなら従魔士とかがいて街中でも見かけるそうだが…我が領地にはダンジョンはないからな。

 ちなみに、ダンジョンの発生原因や原理は…何も分かっていない。


 いや、正確には誰かが解明してもそれを誰かに伝えようとすると、聞いた側の記憶が欠落するため直接話しても、喋った時間から推測することすら出来ない。

 こういうのは他にも魔術とかも含まれており、こういう事柄は焚書事項と呼ばれている。

 だからまあ、その辺が気になるのであれば、直接ダンジョンに行くなり、魔術を行使できるようになる必要がある訳だ。


「次、リコリス・フォン・インサニティ!」

「あ、はい!」


 と、私の番か。

 空間魔法でフィールドの初期地点に転移する。


「…空間魔法ですか、すごいですね…」

「え? あ、はい、まあ」


 ああ、私基本移動空間魔法の転移だから…《身体強化》で底上げしているとはいえ、精神的に動くのがきつくはあるし。

 多分これは双生児性能力偏向症が原因か。


「こほん、では、実技試験を始めます」

「よろしくお願いします」


 従魔士の人が新しいゴブリンを連れてくる。


「では…はじめ!」


 ゴブリンが突っ込んでくる。

 私はそれを…


「っ!?」


 【魔力支配】でゴブリンを構築する魔力を支配し動けなくする。

 初めての試みのため一応無属性の結界を攻撃の軌道上に設置したが必要なかったな。

 結界を解除、【魔力支配】を強め解析。


「ふむふむ…」


 やはりムーン…クレセントウルフよりも弱いな…まあ当然なんだが。

 構成する魔力の量も強度も低い、これなら…まあ、今実験することでもないか。

 ゴブリンを【魔力支配】で吹き飛ばし距離を作る。


 仕留めるのは…あれでいいか。

 使うのは水魔法、水魔法が操れるのは水素原子と酸素原子の化合物…ではなく、液体全てである。

 そして、私の【魔力支配】を併用すれば相手の体内で魔法を発動することも可能…つまり。


「!?」


 相手の血液を操り、槍の様に貫くことも可能だ。

 今のゴブリンは口の中から上に向けて、両の掌から左右にまっすぐ、股から地面に刺さる形で、太い自分の血液の杭に貫かれている。

 それはまるで十字架のようで、なおかつ全身の血管から血液で作られた棘が飛び出ている。

 これは私が考えた殺傷性水魔法、名前は…


「《血の(ブルート・)十字と(クロイツェン・)処女(ユングフラウ)》」


 ドイツ語で血の十字と処女である。

 モチーフはもちろん、十字架と拷問器具であるアイアンメイデン…鉄の処女だ。

 ドイツ語ってボールペンがクーゲルシュライバーになったり、鼻水がナーゼンシュライムになったり、かっこいいからな…深紅の死神がプルプルンゼンゼンマンになったりもするが。


 《血の(ブルート・)十字と(クロイツェン・)処女(ユングフラウ)》で貫かれたゴブリンは即死したようで風化の魔素で魔力に還元されていく。

 て、魔法で操った血の十字架と棘が残ってる…創造魔法以外の魔法で生み出した物はしばらく残り、後で風化の魔素で消えるが、そのせいで本来なら消えるはずの血が残ったのか?

 まあいい、だったら私のオドから風化の魔素を引っ張ってくれば…よし、消えた。


「そこまで!」


 試験官が試験終了を宣言する。

 ゴブリンがいた場所に残ったのは、魔力が凝り固まった結果風化の魔素の影響を免れた物体…つまり魔石だ。

 魔物は倒された瞬間風化の魔素の影響を受け始める、それはつまり生きている間は何らかの手段により風化の魔素の影響を取り除いているということ。

 それがあの魔石だ。


 生きてる魔石にはあらゆる魔素の効果を軽減する性質がある。

 これは魔素が有する魔力波長と逆の波長の魔力を魔石が持っているからだ。

 何だってそんなことになっているのかは分からない、魔物から離れた魔石はその性質もなくなり、ただの魔力の塊と化すため研究が進んでいないのだ。

 死んだ魔石は魔道具で魔力に還元して魔力電池に貯めるのが主な使い道となっている。


「お疲れさまでした」

「はい」


 この試験で出た魔石は受験者が記念に持って帰っていいことになっている。

 一応私の魔力量なら魔力の凝固石だって作れるが、天然物は初めて手にする、ありがたく受け取る。

 他の受験者の場所に転移して、【魔力支配】で構造を記憶にある私が作った人工魔石と比べる。


「ふぅむ…」


 天然魔石は…人工魔石と比べ、何か混じってるな…?

 魔力ではない…ああ、そうか…これが、魂の残滓か。

 エリサに聞いたが、なんでも天然魔石には魂の欠片、残滓とでも呼ぶべきものが混じるそうだ。


 なお、これを組み合わせて新しい魂を組み上げることは…膨大な魔力と魂の干渉する魔術…霊魂魔術があれば可能だ。

 分かりやすく言うと、魂はパズルで、魔石に残るのはその数ピース、つまり全種類集まれば魂を組むことが可能だ。

 無論、ピースが被ることはあるし、例えにパズルとピースを出したがそんなに明確に区分されているわけもないので、ほんの僅かなスペースの物が出ない、なんてこともある…まあ、ガチャだな。


 というか、魂の残滓は私の【魔力支配】の範疇なのか?

 実際に魂の残滓に対して支配を強めてみると…出来そうだな。

 と、言うことは私って魂を直接砕く、なんていう即死技も使える可能性があるのか…魔物に対しては普通に構成魔力を霧散させる即死技が使えるし…死神かな?

 まあ、まだできると決まったわけじゃないし…それは帰ってから実験したいことと同時にやってしまおう。

2024/03/05

《ブルート・クロイツェン・ユングフラウ》

血の(ブルート・)十字と(クロイツェン・)処女(ユングフラウ)

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