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原初の魔人  作者: 彼岸花
第3章 魔術
39/40

39.魔石

 その日は気絶から目覚めたばかりということもあり、一日開けて二日後。

 魔術デバイスの構想を練る。


 魔術デバイスを作成するにあたって、まず魔法デバイスについて振り返ろう。

 魔法デバイスは前世の銃器の形をしていて、マガジン型の魔力電池、銃身付近にセットする魔法が記録された魔法メモリー、その魔法を発動する魔法発動面、そしてそれらを起動するトリガーが最低限存在する。

 銃身が長い魔法デバイスだとライフリングに値する部分に魔法を強化する魔法陣が刻まれていたりする。


 さて、そこで魔術デバイスだ。

 これを作成するにあたって、問題点が二つある。


 一つ、魔力の漂白。

 魔術師は魔術を行使する際、魔力に含まれる属性や大いなる魔素を漂白し、なんにでもなれる万能属性にしている。

 これをどう再現するか…魔力を漂白する素材はあるが、全て高価なものだ。

 市販するなら私以外でも入手・生産可能で、ある程度安価な素材が理想。


 二つ、魔術の自由度。

 魔術は属性に縛られた魔法と違い、とにかくできることの幅が広い…というか、人間の想像力=出来ることと言っていい。

 これをどうするか…魔法デバイスと同じ形式だと、魔術作成ソフトがえらいことになるし…

 理想は想像した魔術を魔法…魔術メモリーに刻む形…なのだが、想像の読み取り方が…脳を読み取るにしても妖精種等の魔力体の種族は脳を持ってないし。


 やはり《精神魔術》で読み取るか…この辺はデータ採取のため協力者が…いや、ここは《精神魔術》の大家、資料なりなんなりがあるかもしれない。

 魔術師になったし書庫の奥に入る許可ももらえるはずだ。


 問題は魔力だ。

 魔術師はその魔力操作技術と、魂の輝きを以て魔力を汚染し、捻じ曲げ、改変する…

 魔法デバイスはトリガーが引かれ、魔法メモリーから式参照、要求魔力を魔力電池から引っ張り出し、魔法発動面で発動する…


「ぬぅ…」


 ベッドの上で考えながら唸る。

 高精度の魔力制御、魔力を染め上げる強い何か…

 魂はだめだ、私以外作る術を持たない。


「…ん?」


 魂…いけるか?

 思いつたらさっそく起き上がり、《空間収納》を探る。

 私はうだうだ考えるより、さっさと試す派だ。


 《空間収納》から天然魔石…魂の欠片が入った魔石を取り出し、創造魔法で適当な素材を創造し、魔道具を組み上げる。

 正直部の悪い賭けだ、なんせこの魔石は私が生み出した魔物が落とした魔石、年季が一切入っていない。

 だが…


「出来た…」


 マジか…

 私が作ったのはボタンを押している間、取り付けた魔力電池から少量の魔力を引っ張り出し、はめ込んだ天然魔石に通すだけの魔道具。

 だが、その通した魔力が漂白された。


 一応ほかのパターンでも試してみる。

 まず魔道具にはめ込んだ魔石に込められた魂の欠片を取り出して、魔道具を起動。


「あれ?」


 漂白された?

 てっきり魔石に残った魂の欠片が漂白してるのかと思ったが…

 次に取り出した魂の欠片を魔石と同じ形状の普通の物体、鉄に封入、魔石の代わりに魔道具にはめ込み、起動。


「ふむ…」


 漂白されない。

 ということは、魔石は魔力を漂白する効果がある…と。

 魔石の効果と言えば、生きている状態では風化の魔素の影響を相殺すること、魂を一部とはいえ留めて固定することができる。

 予想では風化相殺機能が関係してると思うんだが…今度は天然魔石の状態に戻し、それをはめ込んだらボタンを長押ししつつ、魔力の動きをよく見てみる。


「なるほど」


 どうやら予想通り、風化の魔素を相殺する機能が魔力を漂白しているようだ。

 無論、この魔石は死んでいる…風化の魔素を相殺する機能は動いていない…が、動いていないだけで残ってはいる。

 それが流れた魔力の性質を漂白しているようだ。


 次は耐久性の検証だな。

 徐々に魔道具に流れる魔力を増やしていき…お?

 いきなり割れるんじゃなく、徐々に漂白しきれなくなった分が魔石を素通りしていく感じなんだ。

 いやまあ、魔力力学的に考えたらそれが普通なんだが…どうにも前世の創作の影響が…


 次はサイズによる違いか。

 今度は魔石をはめ込むソケットのサイズが違う、魔道具をいくつか作成する。

 そして徐々に魔道具に流れる魔力を増やしていく。


 …なるほど、サイズ…いや、表面積の大きさか。

 どうやらマナと接触する部分が多い魔物の魔石ほど、多くの魔力を漂白できるようだ。

 だから理論上は、スポンジみたいな多孔質の魔物が一番効率よく、小さなサイズで多くの魔力を漂白できる、と…


 後は耐用年数の測定だな。

 銀の鍵で魔界への門を開き、それに幾つかの魔道具を向けた状態で魔力電池セット部分を改造し、無線で屋敷の前にある彼岸桜と接続、その魔力を使い魔道具を常時発動状態にする。

 彼岸桜は私が毎晩余った全魔力を投入してたこともあってか、かなりの量の魔力をため込めるようになっている、その魔力を使わせてもらおう…今の私の魔力は既に漂白されてるからな。


 そうすると魔道具から銀の鍵で開けた門を通して、漂白された魔力が撃ち込まれ始める。

 そうしたら異能で時間を操り、魔道具と無線接続部分の時間を早めると同時に、タイマーで時間を図る。

 時間の速度は大体一秒で一日、86,400倍、六分で一年の速度に早める。

 魔石以外は私が異能でオドを支配し、状態を維持する。


 そうすると魔道具から打ち込まれる魔力が一気に超高濃度になる。

 一秒間に丸一日掛けて漂白された魔力が一気に放出されるからな。


 物体には…何の影響もない。

 そりゃそうだ、通常の魔力と違い、漂白された魔力はいくら高濃度でも生き物以外に影響を与えない。

 生き物は圧を感じたり、何かを感じたりはするが…だからこそわざわざ生き物がいない魔界に向けたわけだし。


 さて、後はタイマーを映す状態でカメラセット、放置で。

 とはいえ、異能での時間操作は慣れていないし、ぼーっと眺めるぐらいで、他に何かやったりは出来ないが。


 6分…1年、異常なし。

 12分…2年、異常なし。

 18分…3年、異常なし。

 24分…4年、異常なし。


 48分…8年、異常なし。

 96分、1時間36分…16年、異常なし。

 192分、3時間12分…32年、異常なし。

 384分、6時間24分…64年、異常なし。


 ご飯を挟みつつ、観察していたが…かなり持つな?

 だが…648分、10時間48分…108年辺りから試作魔力漂白魔道具に異常が出始める。

 魔石が振動を発し始め…


 パキッ


 割れた。

 それも、常時魔力を流していたやつ全てが、同時に。


「んん~っ…なるっ、ほどぉ…」


 長時間同じ体制だった体を伸ばしつつ、考察する。

 魔石を魔力漂白の目的で使用した際、108年間魔力を漂白し続けることが可能。

 それも、魔石の大きさ、漂白作用の性能は関係なく、一律で108年。


「こっちは…」


 それと、魔力を流す頻度を変えた魔道具も同時に試験しているのだが…こちらはまだ大丈夫そうだ。

 となれば、流した時間の累計が108年になったら割れるのか…?


 ・・・


 パキッ


 ・・・


 パキッ


 ・・・


 パキッ


「なるほどぉ…」


 魔石は死んでいる状態だと流れた魔力を漂白する。

 その性能はマナと接する面積の広さで決まる。

 そして、魔力を108年間続けて漂白すると限界を迎え割れてしまう。

 断続的に流すと、一回流すと13.6秒間機能が稼働を続けてしまい、実際に流した時間よりも早く壊れてしまう。


 まあ、それでも累計108年…3,408,220,800秒間は大丈夫だし、魔法デバイスと同じような設計にするなら、一回当たりの魔力が流れる時間は0.1秒+13.6秒だ。

 大体…2億5千万回は使える

 使った回数をカウントして、壊れそうな回数になったら警告するような機能つけるかなぁ…?

 ま、その辺は明日だな。

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