お友達が出来ました
「なぜ助けたのかと聞かれれば、そうですわね。自分のためですわ」
答えたのはパトリシア様だ。
「自分のためですか……?」
「ええ、わたくしが許せなかったから割り込んだだけですわ。そのお株もヘンリエッタ様に奪われてしまったのですけれどね」
じっとりとした視線を受けて、わたくしは明後日の方を向いた。心情としては口笛を吹きたいが、淑女なので我慢する。
「わたくしは最初はパトリシア様が動いたから、ついて行ったのですわ。途中から暴走したのは否定しませんが」
「ではスタンホープ侯爵令嬢はなぜ」
「貴族の義務ですわ。まあ、薄っぺらい言い方をするのなら正義感でしょうか。あの方達が気に入らないからです」
パチクリ、とキャンベル男爵令嬢は瞬きをする。
「私ではないのですね」
「貴女を排他的にするあの方々の気がしれませんわ。ちゃんと教育を受けていれば、陛下が貴女のような方も救済できるようにしていると言うことを理解するはずです。ある意味、陛下を愚弄しているのと変わりませんもの」
パトリシア様も頷く。
「あの方々の考えは保守派の考えですもの。今は改革している途中。反対派が現れるのは当然です。この対立もいずれなくなるといいのですけれど。それよりもヘンリエッタ様は流石に追い詰めすぎですわ」
「あの程度で折れる方が悪いのですわ。わたくしの地雷を踏み抜いておいてむしろ甘い方でしてよ? わたくし、家にも報復しようかと思いましたもの」
「学園は平等なのですからおやめなさい」
「ええ、パトリシア様のおかげで踏みとどまりました。ありがとうございます」
「全く、ヘンリエッタ様は家族のことになると見境がなくなるのだから」
「当然ですわ」
「そこで胸を張らない」
クスクスという笑い声が聞こえる。キャンベル男爵令嬢を見ると、慌てて姿勢を正した。
「あ、申し訳ありません。とても仲がよろしいのですね」
「そうでしょう? パトリシア様はとても愛らしいのですよ。その姿はなかなか見れないのですけれど――」
「ヘンリエッタ様?」
慌てて口をつぐむ。威圧感がすごい。
「羨ましいです。私、今まで友達と呼べる人がいないので」
「ふ、ふんっそれならわたくしたちがお友達になっても宜しくてよ」
パトリシア様はそっぽを向きながら言った。顔が赤い。可愛い。
わお、まさかパトリシア様からいうなんて。昔はわたくしが言っても、モゴモゴしているだけだったのに。
でもこのチャンス、逃すわけにはいかない。
「ああ、パトリシア様に先を越されましたわ! ねぇ、わたくしのことはヘンリエッタと呼んでくださらない?」
「え、え?」
「わたくしもパトリシアと呼んでも構わなくてよ」
キャンベル男爵令嬢は目を白黒させている。
わたくしはニコニコと、パトリシア様はそっぽを向きながらもチラチラ見ている。
「私でよければ喜んで。私のことはどうぞ、メアリーとお呼びください」
そう、おずおずというメアリー様はとても可愛らしかった。なんというか、線が細いのも相舞って庇護欲をこれでもかとそそる。
気がついたらわたくしは抱きついていた。
「可愛いですわ! 愛らしいですわ!」
「@#%^*&⁉︎」
メアリー様は声にならない声をあげている。
はしゃぐわたくしに、パトリシア様の雷が落ちた。
「だからヘンリエッタ様は、興奮すると抱きつく癖をおやめなさい‼︎」
「まあ、ではパトリシア様も抱きしめて差し上げます!」
「そういうことじゃ……ちょっとっ」
2人まとめて抱きしめる。
パトリシア様が扇子でわたくしの脳天をチョップするまであと10秒。
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