SCENE 60 * RENA * With Rian
午後四時すぎ──レナはライアンと並んで彼のベッドの上に立ち、どうにか片づいた部屋を見渡した。
「すげえ」彼女の右側でライアンがつぶやく。「物がなくなった」
当然、彼女は疲れている。「なくなってないし。もともと家具置きすぎなのよ。家具があるからそこに入るだけ物詰めようとしちゃうの」
家具の上に家具を重ねるなどということもしていたせいで、圧迫勘があった。小物類も大量で、書けないペンや使わないメモ帳もたくさんあり、分別もちゃんとしながらあれこれ捨てていると、気づけば使ったトラッシュバッグは六袋半になっていた。
彼が言っていた、“元カノジョからのあれこれ”というのも出てきた。だがまじまじと見たわけではないし、レナはそれほど気にしなかった。ライアンは、それらを彼女の手でトラッシュバッグに捨てさせた。そしてそのたびに彼女にキスをした。おかげでレナはうまく乗せられ、おもしろいくらいにサクサクと片づけが進んだ。
「違うだろ。物を整理しようとして家具を置くわけだから」と、ライアン。
両手を腰にあて、彼女は溜め息をついた。
「それがダメなの。家具はできるだけ増やさないようにする。雑誌だって、溜まったら捨てるのが普通。じゃないと部屋が狭くなるし、キリがないじゃない」
「雑誌は最近は買ってねえよ。ギターとかバスケとかのだし」
見たので知っている。「その古い雑誌だっていらないっつってんの。どうしても欲しいページがあるなら、ファイル作ってそのページだけ切り取って保存しておけばいい。私も雑誌は買うけど、広告のページがものすごく無駄に思える。あとどうでもいい特集ページとか」雑誌は高確率で、読みたい部分はほんの数ページにしかない。
腕を組み、彼は笑った。
「それは言えてる。けどコミックとCDとゲームソフトはそうそう捨てるもんじゃねえ」
レナもCDは捨てないし、コミックやゲームソフトの類はレオがそうなので、気持ちがわからないわけではない。「だから完結済みのコミックとクリア済みのゲームはクローゼット。ハサミはこの部屋に五本もいらない」
「あれはびびった。ないと思って下から持ってきたり買い足したり、みたいなの繰り返してたのに、なくなったと思ったのがぜんぶ出てきたもんな」
バカだ。「もうあれよね。紐でもつけとけばいいんじゃないの?」
またも笑ったライアンは彼女のほうを向き、腰に両手をまわして彼女の身体を引き寄せた。微笑む。
「ハサミよりお前の首に紐つけといたほうがいい気がしてきた」
どうしたのだろう。「部屋と一緒にあんたの心まで綺麗になっちゃったの?」
「だといいんだけどな」
ライアンはレナにキスをした。ご褒美なのか、少し深くて長めのキス。だが一回だった。
唇を離して彼が言う。
「シャワー浴びたいな」
どういう意味だろう。「じゃあ浴びてくれば? 私は着替えて待ってる」
「アホ。お前が着替えるのが先。さっさとしろ。そんでホテル行く。覚悟しろよ。礼と褒美、あとこのあいだの、たいしたことないとか言った仕返し、まとめてしてやる」
言いかたが怖いとは思ったものの、とてもぞくぞくしてきた。そういうのを好きだと思ったことは、レナにはない。けれど彼には、なんというか、好きモノにされてしまいそうだ。
「手加減はしてくれないの?」
「絶対しねえ」
ふたりはまたキスをした。今度は嫌がらせなのか、レナが止まらなくなるキスだった。気づけばライアンの首に手をまわし、不覚にも、“今すぐここで”と思った。けれどそういうわけにはいかなかった。わかっている。
レナがメグの部屋で元の服に着替えるあいだに、ライアンは自分の服を用意していたのだが、それはなぜか彼女のバッグに詰め込んだらしい。チョコを見られた気がするけれど、最初からばれている気もするし、彼がなにも言わなかったので、彼女も気にしないことにした。
朝早くから家に来たらしいライアンのイトコ──レナも一度、今年の年明けに会っているケイラからもらったというチョコを持ち、ふたりはバスに乗ってセンター街へと向かった。




