SCENE 24 * JENNIE * With Jack With Rian
二月十日、水曜日の朝。
いつもよりも少し早い時間にジャックと待ち合わせ、ジェニーは学校へ向かった。続々と生徒たちが登校してくる中、ふたりは二年E組とF組の教室の前にあるフロアに、柱にもたれて座った。ライアンを待つためだ。
このフロア、床は淡いクリーム色で、白い柱が数本建っている。ベンチも置かれていて、教室の向かいにはベランダがあり、休憩時間には生徒たちのちょっとした憩いの場になる。
「レナと揃いだって言ったら、つけない気がするんだよね」彼女の左隣でジャックが言った。「レナは?」
「どうかしら」とジェニー。「メッセージカードに書いたから、たぶんレナは明日、つけてきてくれると思うんだけど。でもさすがに、ふたつあるはずのがひとつしかないってなったら、変よね」
「ライアンのほうは僕らの台紙を使ったしな。それでもピアスはひとつだし。変に勘がいいとこあるから、気づかれたらつけない気がする」
「でもつけてもらわないと、おそろいの意味がない。どうにか説得しなきゃ」
「じゃあレナもだけど、もうひとつはって訊かれたら、“買った時はあったのに”って言う?」
「それで? どこかにひとつ落としたって言うの?」
ジャックが苦笑う。「そうそう。“家に帰ったらいつのまにかピアスがひとつ失くなってた”、みたいな。かなり無理やりだけど」
嘘がよくないということはジェニーにもわかっている。だが、どうしてもつけてほしい。それもどちらか一方だけではなく、ふたりにつけてほしい。
「じゃあ、それでとおす? つけてくれたあとなら、もしふたりが気づいても、大丈夫かもしれないし」
「うん、それでいこ。つけてくれたら、あとからホントのこと言う。で、明日かな。どうにかギャヴィンとマリーにも渡す。別々に」
先日、ジェニーとジャックは揃いでピアスを買ったのだが、せっかくなので、同シリーズの色違いをライアンとレナに、同じようにギャヴィンとマリーにも買った。それもやはり台紙を別々にして、ふたりの名前の頭文字を入れた。ジェニーとジャックからのプレゼントとしてだ。
「マリーたちの場合は別々にしなくても、ふたりならつけてくれると思うけど」と、ジェニー。
「でも黙って渡して、つけてもらって、あとから気づいてふたりで笑ってもらえたら、嬉しくない?」
彼女は笑顔になった。「すごく嬉しい」
彼が微笑む。「よし、決まり」
ジャックのこういう考えかたも、ジェニーは好きだった。
「ふたりして、朝っぱらからなにイチャついてんの?」
彼女たちは顔を上げた。ライアンが近づいている。
「おはよう」ジェニーは挨拶した。「あなたに渡したいものがあって」
ライアンは彼女たちの前にしゃがんだ。
「なに?」
ジャックはポケットから白く小さな紙封筒を取り出し、彼に渡した。
「バレンタインのプレゼント。ちょっと早いけど」
ジェニーは早くもドキドキしていた。変な意味で、だが。
「プレゼントって。バレンタインて」彼シールを剥がし、片目で中を覗いた。「──ピアス?」
「うん、そう。」彼女は少々そわそわしている。落ち着かない。パニックになりかけている。
ライアンはそれを手の平に出した。
「──ひとつしかないんですけど」
「失くなっちゃったの」と、ジェニーはすかさず言った。さすがに不自然だ。
ジャックが苦笑う。「そう。買った時はあったはずなのに、気づいたらひとつ失くなってた。まさに神隠し。バレンタインの奇跡」
だがその説明に、彼は探るような目でジャックに訊いた。
「なに企んでんの? なんでピアス?」
冷静に、冷静にと、ジェニーは自分に言い聞かせる。「なんかね、見つけて。ライアンに似合いそうだなって──ジャックが、あなたはそういう少し幅のあるの、持ってないって言うから」
ジャックがつけたす。「そう。それに肉まんだと、あとに残らないだろ? で、邪魔にならなさそうなものをと思って、ピアスを買ったんだけど──ひとつ失くなってた」
正解がわからないのだが、ジェニーは間を空けてはいけない気がした。「それね、裏にあなたの名前の頭文字が入ってるの」
これ、本当は、レナの“R”のつもりだ。それも、わざわざ彫ってもらった。だがそれを言うと、おそらく気づかれる可能性が高くなる。
信じたのか信じていないのか、ライアンは追求をやめた。「──なんか、よくわかんねえけど、つければいいわけ? 今?」
「今、じゃ、なくても──」それもまた正解がわからず、ジェニーはジャックに答えを求めた。
彼はいつもどおり、冷静だ。「今つけてるのがあるし、家に帰ってからでいい」
「はいはい。んじゃ今日、帰ったらつける」
「失くすなよ」
「わーかってるよ」




