↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/2

秋雨について

秋の雨ほど、僕を苦しめるものはこの世にあるのだろうか。


季節というものは、常にゆっくりと、波打ちながら巡るものである。

そのことは言葉の上では理解している。しかし、秋という季節においては、その言葉に納得するよりも先に、その場の秋が過ぎ去ってしまう。そうして、なんだかやるせない気持ちを抱えたまま、冬の寒さに耐えねばならないのだ。


そのことを友人に話すと、


「よくあることさ。誰にでもある。僕にだってあるさ」


と彼は言った。


「例えば?」


「蟻の戦争」


「なるほどね」


「言葉というのは本来、耳や目から入り込んで、側頭葉の中を駆け回り、居心地の良さそうな皺に飛び込んで、そのうちそこで眠り込む。けれど、そういう言葉たちは観光客気分で、君の側頭葉にあるウェルニッケ野を滑ったり、あちこちを観光したりする。そうして最後には、適当な穴から抜け出していってしまう。残されるのは、大なり小なりのオーバーツーリズムさ」


僕から見る彼は、かなりの切れ者だった。例え話の回りくどさを除けば、これといった欠点を見つけることは難しかった。


彼は生まれたときでさえ、自身の誕生を何かに例えてから泣いたと聞かされても、僕は決して疑いはしないだろう。


むしろ、そのことがまだ僕の耳に入ってきていないことに、むず痒さを覚えるほどだった。


秋の雨というものは、有ろうことか、僕の忘れていたどうしようもない悲しみを洗い流すどころか、わざわざ引きずり出してくる。僕はどう抗おうとも、最後にはそれに飲まれ、溺れてしまう。


それほどに静かで、乱暴なのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。