出会いについて
結局のところ、大きなものを得るために手放してきた小さな、見限ってしまったものの中に、僕の本当に欲しかったものがあるのだとするならば、僕を遠巻きに眺めていた奴らは、きっと大きく、けれど僕には聞こえない程度の声で、僕を笑いものにしていたのだろう。
なかなか寂しいことを考えてしまうほど、冬は冷たく、どんよりと冴えている。
「ねえ、きみ星高だよね。ここで降りないとまずいんじゃない?」
見慣れた制服。同じ学校の彼女が、僕の肩をぽんと叩いて起こしてくれた。
慌ててバスを降り、先ほど起こしてくれた彼女の後を追う。
丁寧さに認められたすっきりとしたシトラス。黒髪のショートヘアに、肩かけたスクールバッグ、左胸には一年生の校章があった。
「ありがとう。よく寝過ごして遅刻するんだ」
「気にしないで。私もたまにしちゃうし。ここのちょっと前のバス停で人がごっそり降りていくでしょ。立ちっぱなしだったところから急に座ると、一気に眠たくなっちゃうよね」
「このバスとは、ちょっとばかり相性が悪いんだ」
「面白い考え」
彼女はそう言って、くすりと笑った。
栗のようにつやとした瞳には、集中線のように細く束ねられたまつ毛が伸びている。
「春からバスで通学してたの?」
「してたよ。でも部活で朝練があったから、一番早い便に乗ってたの」
「きっと春から同じバスだったら、もう少し長く学校にいられたはずだよ」
「でも、きっと居残り掃除がなくなってしまうでしょ」
面白い考え。
彼女の言葉をそっと自分の頭の上に載せて、少し笑った。
「笑うのはへたっぴなのね。それとも、そんなに刺さらなかった?」
「前者だよ。意外と卑屈だね」
気づけば、見慣れた校舎の前まで来ていた。
「じゃあね」
「また明日も学校があるでしょ」
「じゃあ、またね」
彼女とはそのまま靴箱で別れた。
いつもより冴えた頭で、階段をゆっくりと登った。




