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気紛れな猫長



 深夜も更けた頃。

 天華(てんか)の前に白い虎柄の大きな猫が軽い音を立てながら着地してきた。

「……猫鬼の族長ですか……」

 緑色の差し色のある黄金色の瞳を天華に向けて「お久しぶりです」と頭を上げてきた大きな猫を見上げて天華は声をかける。

 肯定するように彼女の耳がぴこぴこと動くのを夜と月は天華の側にいながら見ていた。

「何か厄介ごとが?」

「我が一族のちびっ子たちが数名行方不明になってしもうて……」

 天華の言葉に猫の彼女はゆっくりとうなづいて話を始める。

「……探していた最中だったんだけど、天華様の気配を感じたのできちゃいました」

「……えっ?ちびっ子たちを探してたんじゃ?」

 夜は思わず声を上げていた。

「そうそう、愧焔(きえん)様にちょっと話に行こうかと思ってたんだった」

 肉球と毛むくじゃらの手の甲をぽむっと合わせて声を上げていた。

「……天華様でも問題ないのか……」

「問題、大有りだ」

 猫の族長は名案だっというように目を開いて天華を見つめたが、月がそれを許してくれなかったようだ。

「久しぶりに猫鬼の族長とお話ししますけど、なんか……」

 夜はため息をつきつつ1人愚痴るように呟いていた。


 猫だから気紛れであるが、この族長は輪をかけて気紛れの振れ幅が広すぎるようだ。


「当事者から愧焔兄様にも報告して欲しいので……」

「えー、貴女様でも愧焔様でも同じでしょ?」

 天華の言葉に彼女は縁側に寝転がりながらキョトンと天華を見上げている。

「貴女様にお伝えしたら貴女さまが愧焔様へ耳に入れるはずだし……」

 猫鬼は天華を見て「違うの?」と猫長は首を傾げて居る。

「今から私は寝る時間なのですー」

「……寝転ぶなー!」

 夜は慌てて寝転がって居る猫を抱え上げて座らせようとしているが身体が柔らかすぎて起き上がらせることができずに奮闘している。

「えー、もう寝るー」

 夜は尻尾で弾き飛ばされて中庭に尻餅ついて座り込んでいる。

「……はぁ。」

 月がため息を吐きながら、猫鬼の首根っこを引っ掴み持ち上げた。

「オレ、こいつを愧焔様のところに連れて行ってきます」

「えっ、ちょっ!」

 首を掴まれた猫鬼は目が点になって月を見て居る。

「流石のあんたも愧焔様の前に出されたら気を張って報告してくれるだろうしな」

 月は猫鬼を見下ろして悪役の笑顔を作って、猫鬼を連れて行ってしまった。

「……月って、月ってばあんな顔もできたんですねー」

 夜は「いってらっしゃーい」と手を振りつつ天華に話しかけていた。

「……私も初めて見たんですよ」

 天華は夜に話していた。


 月は、煉華が見つけて育てた牛鬼だ。

 とある事件で煉華(れんげ)を失って、月は身の振り方を悩んでいた。

 別れはあるとは理解していたが、早い時期にその別れが来るとは思ってもいなかった月だった。

 愧焔が行くところで困って居るならば、自分の従者としてはどうかという勧誘もあったのだが、月はそれを断り夜と一緒に天華の従者にと頼んだようだった。


「姉様が見つけて従者になってもらってた」

 天華は、月の消えた方へ目を向けていた。

「……多分、私についてくれてるのは姉様が頼んだからだと思う……」

 天華は月が煉華への絶対の信頼を持っていたのを知って居る。

 天華の言葉に月の性格を鑑みた夜は「月はそんな性格じゃないです」と言いながら笑う。

「月は、煉華様の頼みだとしても、愧焔様の命でも嫌なら嫌だというと思います。天華様の従者になったのは月の意志だと思う……」

 夜は申し訳なさそうな表情の天華を見て夜は言いつつ、「あっ!」と明るい声を上げた。

「……遊びに行きましょう!」

 天華の手を引っ張り、庭から森の方へと歩き出す。

「私、食べてみたいのがあるのです!」

「えっ!?」

 夜の言葉に天華は空を見上げて夜を見た。

「……この時間は、大抵のお店しまってますよ?!」

 天華の言葉に夜は止まる。

「……叩き起こします!」

「だめー!」

 キリッと決めた顔で答えた夜に天華は止める。

「……えー」

 夜は駄々っ子のように両手を上下に振る。

「夜ちゃん。閉店後に押しかけていくのは昔も今もダメなのです」

 天華は夜に向かって教える。

「……医者は駆け込んでも問題ない感じでしたよ?」

 人間界の様子を見ていた夜は首を傾げていた。

「あの赤いクルクルの白い箱?……あれは、閉店してるところに入り込んでました」

 夜の急患を病院に運び込んだ話に天華は片手で軽く頭を抱えていた。

「それは状況が違うので……ともかく普通のお店は、閉店と書かれて居るところは入れませんよ」

 天華は夜に“わかりましたか?”というように見て言う。

「う、うん」

 納得してない表情の夜だが、うなづいて居るのを見て天華はほっと胸を撫で下ろしていた。

 

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