生命を救う場所
生命を救う場所
病院の敷地内に転がり出た龍成は着地と同時に夜間受付に駆け込んでいくのを夜は止血しながら見ていた。
「……おれ、……たすかる?」
始はぼんやりと夜を見上げて弱々しい声で問いかけてきた。
「……助かるから、意識を失っちゃダメだよ!」
夜は必死に声を掛けている。
「……けど……ねむい……や」
「ダメだって!」
夜の声に始は目を開くがゆっくりと目を閉じかけている中、龍成が数人を引き連れて駆け戻ってきていた。
「速攻で処置するわ」
白衣をきた女性が始の様子を見て連れてきた看護師に指示をする。
看護師達は始をストレッチャーに乗せ処置室へと駆け込んでいくのを女医は眺めつつ「君らは待合室で待ってな」と夜と龍成に言いおいて遅れて処置室へ消えていった。
「頼むぞ」
短く龍成は女医の背中に声をかけた。
龍成の言葉は祈りにも似た響きを残して薄暗い廊下の奥に消えていった。
静まり返った院内で祈るように額に両手を当てて椅子に座っている龍成。
始の処置が始まって数十分も経過していくのを夜も感じている。
「龍成、……あなたのせいじゃないですよ」
ぽつりと夜は龍成に声をかけていた。
「……別にそんなんじゃないけど……」
いつものように返したつもりなのだろうが、夜には少し違っているように感じたのだ。
「……だけど、俺の作戦での事だろ? 戦力外は引いてろくらい言えなかった自分自信に怒ってるし嫌悪してる」
竜成の雰囲気に夜は頭を抱えた。
「反省できるのはいいことだね」
「どうなったんだ? 樹喰……」
急に降ってきた声に龍成は顔をあげる。
「……手こずったけど成功はしたよ。あとは、あの子の生命力次第じゃないかな」
樹喰の言葉に「そうか……」と龍成は安堵の息をつきつつうなづいていた。
「……にしても、私がいるときで良かったわね」
「だからこその奇跡の医院に期待した」
夜だけそっちのけにして話が続いていた。
「……どおいうことですか?」
夜は首を傾げて龍成を見た。
「……同じ鬼灯の一族ね」
「樹喰真季と申します。よろしく。」
龍成の隣で自己紹介をし夜に手を差し出してきた。
「よろしくお願いします」
おずおずと差し出された手を握り返した夜を見て笑っていた。
「まぁ、あなたの医者は別に居そうだけどね」
夜に対して笑いながら真季は言う。
「まぁ、あんたたち今すごい格好なの気づいてる?」
真季は夜と龍成に声をかけている。
闇に囲まれたガラスに映る2人の姿を見た時、龍成は絶句していた。
「あの子が目を覚ます前に衛生面とか諸々を考えて着替えてくることをおすすめするけど? どうする?」
真季は満面の笑顔で2人を見ている。
「いやー……、車をとある場所に置いてきていてさ」
「……当直室のシャワールームはかしてあげれるし、服1式は前のがあるから全部ながしてきたら?」
龍成に真季は鍵を投げ渡している。
「夜さまは、一旦帰ればいいんじゃない? あいつは俺らで見ておくから」
鍵を受け止めた龍成はのほほんと現在進行系で戸惑っていた夜に声をかけていた。
「……大丈夫よ。監視の目はあるから」
不敵に笑っている真季の言葉にうなづいて夜は来た時と同じように影に入って消えていった。
真季はカルテを作成しながら、意識の戻ってはいない始の病室を探しながら行く気配に気付かされた。
「……落ち着いて書類作成もさせてくれないのね」
やれやれと言う様に無言で立ち上がり真季は始の病室に向かっていった。
「……」
運良く真季が先に着いて待ち構える状態になり病室の扉に立ちながら窓ガラスから見える月明かりに照らし出され進み出てくる人物を見た。
「医院長……!」
今日、遅番として入っていた看護師が真剣な顔で声をかけていた。
「見回りありがとう、けどこっちには何も無いでしょ?」
真季はのんびりと答えた。
「生命を救う場所で生命を奪うことはないとは思うけど?」
真季の厳しい言葉に看護師は急速に青ざめて行く。
「もし、生命を奪うつもりならば、おわかりよね?」
真季の言葉に看護師は隠し持っていた薬瓶を取り落としていた。
「……私に任せていただきたかったです」
夜を叱責した看護師が始の病室からひょっこり顔を出した。
「……1番危ない方法を取ろうとしてたのかしら?」
「違います。あなたが来たので出る幕が無くなっただけです」
不承不承に真季の言葉に返してきた勝気な看護師であった。
「まぁ、この子は今からでも立派な雪月の看護師精神に鍛え上げます」
首根っこを掴んで行く看護師に真季は首根っこを掴まれて連行された看護師に合掌を送っておいた。
「あら? 事件が一段落した感じ?」
遅れて龍成が真季の前に現れていた。
「……安全な場所が必要ね」
「……連れていくのは抵抗あるけどまあ、1箇所だけ安全地帯はあるよ」
真季の言葉に龍成は伝えていた。
「ここまで処置してくれてたら生命力を高めてくれる人を知ってるからね」
「じゃあ、頼んでいいかしら?」
龍成の言葉の真剣さに真季はうなづいていた。
龍成は始を背負い風の力を使い姿を消し、天華のいる館へと駆けていた。




