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朝露鬼譚-桜梅桃李-  作者: 猫祝 しわす
第1章 探し求めし鬼姫
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餌付けされる夜


結華(ゆうか)は、何日かに一度は天華(てんか)たちの顔を見に来て、家に帰るようになっていた。

「……今日も来ちゃったっ!」

 結華は玄関を開いて近代的なお菓子をいつも持ってきて夜に献上していくのだ。

 みんなの分を買ってきてはいるのだが、何故か夜のお腹に全て消化されていくのである。

「今日のお土産は、シュークリームだよ」

「……前、食べたあれまた食べたいです……」

 目を輝かせた夜は結華に声をあげる。

「どんなやつ??」

 結華は斜め上を見上げて悩む。

「えっと、甘くて、かりんとうのような……あ、考えてるとヨダレが……」

 じゅるりと夜はヨダレを腕で拭う。

「……いや、これも美味しそうなんですけど!!」

 夜は白い箱から漂ってきている甘い香りに待てをしている犬のようになっている。

「結華、頼むから夜を餌付けしてくれるな」

 結華から白い箱を月はため息混じりに受け取りながら呟く。

「……フロランタンかな?」

結華は悩む。

「お菓子の名前忘れちゃいました!」

「夜も夜だ、頼むなら名前くらい把握をしておけよ」

 テヘヘと笑う夜に月は呆れながら突っ込む。

「……美味しいものを食べれるのは幸せなことなんですよっ!」

 両手を握りしめて力説してくる夜に月は大きなため息を着いていた。

「まぁ、……飲み物を用意してこよう」

 月は箱を今の机に置いて台所に向かう。

「……食べてていいですか?!」

夜の声に月は「夜。待てだ」と声をかけてきていた。

( あー。今日も夜ちゃんの中に消化されちゃうのかもな…… )と結華は苦笑いしながら夜と月の掛け合いを眺めている。

「結華、おかえり」

 天華も少し遅れて居間に来ていた。

「天華ちゃん、ただいま」

「戻るころかと思っていた」

 月も人数分の湯呑みを持って居間に戻る。


 白い箱を開いて期待を込めて中身を覗き込んだ夜は怪訝な顔をして結華をみる。

「……なんですか、この油揚げみたいな……」

「甘そうな匂いはしてるな」

 夜と月は声を上げていた。

 結華は笑いながら食べ方を教えるためにひとつ持ち上げた。

「中にクリーム入ってるんだけど上手く食べないと全部こぼれ落ちちゃうんだよ」

 結華はシュークリームをひとつ綺麗に平らげている。

 それを見つつ天華と夜、月も食べていたが、夜の両手がクリームだらけになっている。

「……天華ちゃん達は綺麗に食べれたのになんでー!」

 結華は夜の惨状に頭を抱えて声をあげる。

「……うまっ!」

 シュークリームを平らげて声をあげる夜の口周りと両手にはカスタードクリームと生クリームに塗れていた。

「……幼児みたいな食べ方になってるよー」

 笑いながら結華は夜の手をティッシュで拭っていた。

 見た目は20以上の女性の夜なはずなのに何故か幼児みたいな扱いをしている結華。

「この白いのとこの肌色のとろっとした甘いの! 油揚げもカリカリしてて美味しい!」

「油揚じゃないよ」

 結華は訂正を重ねているが聞いてない。

「夜ちゃんって、生クリームもしかして気に入った??」

「……そのようだな……」

 馬のシッポが元気よく振られている幻影を見た月はため息混じりに呟く。

「というか、結華が持ってくる近代的なお菓子がお気に入りなんだと思いますよ」

 苦笑いをしている天華に結華は頭を搔く。

「……天華さまっ」

 シュークリームの舌鼓をしていた夜が真剣な表情になって天華を見た。

 口の周りはクリームだらけのまま。

「……ひとまず口の周りを拭こう……」

 天華は夜の顔に着いたクリームを拭う。

「……森の外に、不穏な気配をかんじました!」

 真剣な声に月も気配を読むようにしている。

「……2人か……」

「はい!」

 月の言葉に夜は力強くうなづいていた。

「……夜の危機管理能力は折り紙付きだからな」

 月は箱からひとつシュークリームを持ち上げ「俺が行く、その間に結華を送っていけ」と森の外へと向かって行く背中。

「……月って甘いもの好きだったんですね」

 真剣な顔で歩いて行く月の背中にしみじみと夜は呟く。

「……次からは、月の分も残しておこうと思います」

 夜は次回達成できるか不安な決意を呟いていた。

「今のうち結華を送りましょうか」

 天華は夜を見た。

「……私がいってきます!」

元気に宣言した夜に背負われる結華に天華は心配している様子で「……当分は、こちらに来ない方がいいかもしれない…… 」と結華に伝えていた。

「……当分ってどのくらい??」

「……安全か確認できたら来ていいよ」

 結華の言葉に天華は笑って答えていた。

「では、行ってきます!」

 夜は鬼灯の家へと走って行く。

 霧に紛れていく2人を見送る天華はため息を吐き従者2人の帰りを玄関先で待つ体制を整えていた。

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