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おまたせしました。エピローグです。
これまでお読みくださり、誠にありがとうございます。最後に後書きも是非お読みいただけると幸いです。
〜 エピローグ 〜
その次の日、二人は互いのの両親に本当の気持ちを告げた。
「はあ、やっとその気になったのね。あんた達いつになったらくっつくのかと思って最近ちょっと心配だったのよ。」
と澪の母が畳み掛けるように言えば、
「家の娘はいかず後家になるかと思ってそろそろ流星くんにせかそうと思ってたんだよ。」
と父も嬉しそうに正直な心の内を白状した。
流星の両親はといえば、
「あんた、おっそいわよ。でも、よかったわね、あんな美人他に持っていかれなくて。奇跡よ奇跡!あんたにしては上出来よ。まあ、何はともあれよかったじゃない。想いが遂げられて…。」
と、母が弾むような声でからかいながらも楽しそうに言えば、流星の父は、
「長くかかったなあ。よく澪ちゃんが待っててくれたよな。おまえ、やること遅いんだよ。まったく誰に似たんだか…、まあ、よかったかな。おさまるところにおさまってくれて…。」
と穏かにマイペースでそう言って笑った。
最初から、周りは二人の気持ちに気付いていて知らん顔してくれていただけだったのだ。さすが親である。
週明けに会社に行くと、飯田はもとの通りどころか、ラブラブな二人を見て週末悩んだ自分があほらしくなった。人を巻き込んでハラハラさせた上、勝手に仲良くなって…。それでも、なんだかこの二人は憎めないのである。二人とも愛すべき先輩なのだから。
そして、その週の水曜日。倉元がやってきた。倉元は何事ともなかったかのように、それまで話してきた企画に対しての正式な返事をくれた。さらにタイアップの話は別冊の付録として独立した形で、さらに当初より大幅にページ増とすることを約束してくれた。また、プレス発表時に澪たちスタッフととクノチアキ&結城ななえ密着取材を申し入れてきた。
あまりに何事もなかったように仕事に徹する倉元に、なんだか、身につまされて思わず澪は話しかけた。
「あの…。倉元さん。その節は本当に申し訳ございませんでした。」
倉元はふっと寂しそうな顔をした。
「いいんだよ。僕は君と言う人に出逢えただけで本当に幸せだったよ。なんだか、いまだに惜しい
気持ちは多分にあるけどね…。彼と想いが通じたんだろ?」
「えっ?あ…。はい…。」
澪がはにかみながらうなづくと、倉元は涼しげに笑った。
「なんだか、僕がキューピッドになって君達の縁をつないだだようなもんだよね。皮肉なもんだな。本当は昨日までは君にどんな顔して合えばいいのかわからず、随分落ち込んだんだ。でも、今日、こうしてあってみるとなんだか嬉しかったよ。君が幸せそうな顔して笑っていてくれて。僕も少しは君の役にたったって思えば本望かな。確かにまだ心は痛いけどね。」
「倉元さん…。」
澪は少し心苦しい気持ちで倉元を見上げた。
「さあて、忙しくなるぞ。絶対この企画は成功させて見せるから。一緒にがんばろうな。」
倉元はそういって澪に笑いかけた。澪も笑顔で大きく頷いた。
その週末に流星の両親が澪の家に顔を出した。久々に夕食を一緒にということで澪の母が流星の両親を招いたのである。お酒もはいって両家いりまじって、澪と流星を酒の肴にして盛り上がっている。
「うちの澪はまだ歩けもしないうちから好奇心旺盛だったから、目を放すとすぐハイハイして玄関から出て行こうとするぐらい、女の子のクセに勝気で思い込むとまっしぐらなタイプだったわ。流星くんがいつも澪の服を引っ張りながら泣いて知らせてくれたものね。ほんと、流星君いなかったら、あんたとっくに事故でこの世にいなかったかもよ。」
澪の母がほろ酔い加減で思い出し笑いをしながら楽しそうに話している。
「おかあさん、もう!それ何度も聞き飽きたって!」
澪が真っ赤になって怒っている。
「あら、うちは澪ちゃんに感謝しているわ。流星ってば、昔っからほんと澪ちゃんしか興味ないもんだから、進学する時だって志望校なんてないに等しかったんだから。澪ちゃんがいく学校に興味があったのよ。ねえ、流星?澪ちゃんがいい学校行ってくれたから流星も自動的に行けたのよ。家としては感謝だわ。まだあるのよ。流星はほんとバカだから、就職の時だって…。」
「ばっ!かあさん!いい加減にしろよ!」
流星が真っ赤になって焦って立ち上がる。流星の母はおもしろがって話を続ける。
「澪ちゃんの就職活動を調べまくって、同じ会社に受けに行って、澪ちゃんが採用をいくつかもらったってわかったら、どこにするか聞いてくれって必死でたのむのよ。笑っちゃうわよね。ほかのどんなことも適当で関心ないくせに、こと澪ちゃんのこととなると俄然必死になるのよね。」
「かあさん!」
流星の母はそれでも面白がるように話を続けた。
「ほんと、あんたはあけてもくれても澪ちゃん一筋だったもんねー。これで他の男に取られようもんなら、目も当てられないわよね。よかったじゃない。ははは!あーすっきりした。どう、全部暴露してやった♪」
流星が真っ赤になって母親を睨んでいる。澪は驚いて呆然としている。
「偶然じゃなかったの?」
澪が流星に視線をやると流星は真っ赤になってバツが悪そうに膨れっ面をするとさっと目を逸らした。澪は流星がいつもすましたように自分の傍にいて、そんな気配はまったく感じたことはなかった。今はじめて聞かされた話だった。流星はずっと澪を見ていたのだ。いつも澪の傍にいたのに気付かなかったのは自分の方だった。澪はつくづく自分の鈍感さに呆れた。
食後も今だから言える暴露話が続いて、いたたまれなくなった二人は、流星の部屋に避難した。4人の話は随分盛り上がり、いつの間にか自分達の幼い頃の話に移り変わって行った。
「あいつら、当分飲んでしゃべりまくってるよな。」
流星が照れくさそうに笑いながら言う。
「うん、久しぶりだしね。」
澪が穏かに笑いながら応える。
「あの…、流星?」
澪は少しぎこちなく話しかけた。
「ん?」
「ごめんね。」
流星を上目遣いで見上げた。
「何が…?」
「だって、私が鈍感で、ぜんぜん流星の気持ちに気付かなくって…。でも…、すごく嬉しかった。流星も私と同じ気持ちだったんだって、わかって…。」
澪がほほを赤らめて照れくさそうに言った。
「ばか…。」
流星も照れくさそうに笑って、澪の唇にゆっくりとやさしくキスを落とす。唇を離すと澪の閉じていた目が開かれる。澪は流星をじっと見つめた。
「流星…。愛してる…。」
二人の瞳にはお互いの顔が映し出されている。どちらからともなくそっと唇を重ねた。二人だけの長く甘い夜がはじまる…。
「愛してる…。澪…。」
ようやく二人は心の糸を手繰り寄せた。溢れ出す想いを確かめるように優しく時を紡いでいく。いつしか身も心も溶け合って二人は甘い夢の中へと落ちていった。
= FIN =
<お知らせ>
最後までお読みくださり誠ににありがとうございました。
いろいろありまして、続編「素直になれなくて2」の連載をスタートさせました。
※詳しくは後書きをご覧ください。
皆様、素直になれなくてをお読みいただきまして誠にありがとうございます。
いかがでしたでしょうか。
ラブノベからいらしてくださった方もこのところ増えているようで、お読みくださって本当にありがとうございます。
また、多くの方から感想や暖かいコメントを頂きたいへん嬉しくとても励みになっております。
本当に感謝感激です。
お待たせしていた続編もようやく開始しました。今度は波乱万丈あって長編になる予定です。
まだまだ、続く「素直になれなくて」。
是非今後もお付き合いくださいますようお願い申し上げます。
皆様本当にありがとうございました。
では、また『素直になれなくて2』でお会いしましょう。(2007.11.19)
篠原悠哩