第16話 ほう、ついに襲撃イベントですな。-前編-
なんとか構成ができましたので前後半に分けました。
翌日、目が覚めてからマーブルと挨拶を交わして朝食を食べたあと、早速ムラを出発する。カムドさんからムラのみんなには話しは伝わっていたが、今生の別れではなく、あくまで長期のお出かけみたいなものだから普段通りでとお願いしておいた。それでも会うたびに「行ってらっしゃい。」と言われて笑顔で手を振ってくれたのは嬉しかったので、こちらも手を振って応えた。
ゴブリンのみんなと一緒に探索してまわって、ある程度の範囲はわかっているので、以前のように方向を定めてそっちに一直線に進むことにした。
久しぶりにマーブルだけとの旅だ。ゴブリンのみんなと過ごす日々も楽しくてよかったが、マーブルだけとの旅もやはり楽しい。そりは背に紐をかけて引っ張る感じで動かしている。自分が馬車馬のような感じだ。接地面は水術で凍らせてあるので重さはほとんど感じなかった。そりも頑丈にできておりゴブリンの職人の腕の凄さがわかる。探索でもちょくちょく使っていたのでもう慣れたものだ。
ただ進むのはつまらないので、マーブルといろいろと探知を使っていろいろ探索しながら進んだ。私の探知能力もかなり上がっており、本気で勝負するとかなりの距離を進んで確認しないとならないので、300メートルくらいの範囲で行っていた。範囲を絞ると、探知できる内容も濃くなるのである程度対象は絞ってある。対象は食べられる且つ美味しいもの、敵意のある存在、人間とそれに準ずる者の3つに特定してある。
人の反応がないまま進み、そろそろお腹が空いてきたので食事にする。採取した木の実と今回はなんと芋類が数種類手に入った。鑑定しても名前は出てこなくて『ジャガイモみたいなもの』とかそんな曖昧な結果しか出てこなかった。アマデウスさん、あんたどれだけ食に頓着ないんだよ。まあ、美味しいものでひっかかったので味は大丈夫だろう、ということで木の実を食べながら芋も試しにかじってみて、ジャガイモやサツマイモみたいなものは蒸かしていく。生で食べられたものはやはり醤油をつけたり、すり下ろしてご飯と一緒に食べるべきものだったので、今は土に返しておく。ジャガイモやサツマイモみたいなものは、いくつか種芋としてとっておいてムラに帰ったときに栽培してもらおう。蒸かしたジャガイモはやはりジャガイモだった。サツマイモの方はそれほど甘くない種類で主食ようの種類っぽいものだった。いくつか種類がありそうなので、見つけたら掘ってみますか。
食事を終えてモフモフを少し堪能してから再び進み出す。方角はマーブルが覚えているのでそれに従う。そしてしばらく進むとマーブルが「ミャッ。」と鳴いた。この鳴き方は食べ物でも敵襲でもない、ということはついに人発見か?
胸をわくわくさせながら探知の範囲をかなり遠くまで広げてみてようやくこちらでも確認できた。これは獣人ではなく間違いなく人間だ。人の集団は数カ所で探知できた。一つは前に進んでいるが、残りの集団はそれを追うような形で進んでいる。進み方は徐々に近づくような形となっているので、影の護衛では無さそうだ、ということは襲撃する気満々なのだろう。って、なんでこんな事まで分かるようになったのだろうか。水術恐るべし。放っておくのも一つの手だが、今は情報が欲しい。また、襲撃イベントなんていうお約束事を見逃すのも勿体ない、というわけで、予定としてはもう少し近づいて襲う側と襲われる側の関係をつかんでおきたい。汚物は消毒だ-、にしても実は襲われる方が汚物だとしたら寝覚めが悪いからだ。それとひそかに鑑定されたくないので、ステやスキルはある程度押さえた状態を表示しておく。では加速しましょうかね。
ある程度進むとさらに人の集団を探知した。待ち伏せ部隊もいるようだ。ここまで近づいてくると、新たに探知した部隊はともかく、最初に探知した集団の装備がある程度確認できた。前を進む集団には人の他に馬が数頭確認できた。荷馬車のようだ。荷馬車の集団は武具は探検程度で防具は何も身につけていない人が2人、それを囲むようにある程度武装している人が5人くらい、一方追いかけている集団は一つにつき10人くらいで武装しているが、離れていても変なにおいが少し伝わってくる。土いじりの臭いではなく、汗や糞尿の臭いだ。これは盗賊の類いで間違いないだろう。というわけで、我々のターゲットが決まった。作戦、というほどでもないけど、私達は後ろを追いかけている連中を倒す。左右にそれぞれ集団があるので左には私、右にはマーブルでそれぞれ遠距離攻撃からの突撃。殲滅したら水術で待ち伏せ部隊を凍らせて拘束、そのあと荷馬車を襲っている連中を倒すという感じだ。荷馬車を護衛している人たちがどれほど強いのかわからないけど、これで大丈夫だろう。
「マーブル隊員は右の集団を攻撃してください。殺してはいけません。右の集団を倒した後、私と合流してください。次の指令はその後です。よろしいですか?」
「ミャッ!」
マーブルは承知して右手を挙げた。しかも敬礼っぽい。か、可愛すぎる。もだえるのを我慢して、戦闘準備を整えて号令を発する私。
「バーニィ起動。では、作戦開始!」
「ミャッ!!」
マーブルは私の肩から飛び出して左の集団に向かい、私は右の集団に向かった。
「バンカーショット。」
不意打ちの定番は飛び道具だ。バンカーショットを左右7発ずつ放つ。今回は腕や足をつぶすのが目的なので威力は弱めにしておく。狙い通りに盗賊(確定)達の腕や足に命中させ突撃する。
「な、どこから攻撃してきた?」
「ぎゃー、う、腕がーーーー。」
「な、何が起こった。手と足がう、動かねえーー。」
盗賊達はいきなり攻撃されて転倒した者が続出し部隊の足が止まる。
「な、なんだてめぇは!!」
部隊長らしき人物が問いかけてくる。
「さあ、誰でしょうね。」
私は簡単に返すと、立ち止まった者達に攻撃をしかけていく。バーニィバンカーで打ち抜いていくが、杭は爆破させなかった。次々に倒れていく者達。残りは部隊長らしき人物のみ。周りの状況を確認すると、右の集団は動いていなかった。すでにマーブルはが全員倒したみたいだ。死者も出ていない。流石。念のため、倒した連中を鑑定すると、全員が称号の部分に『強盗』や『殺人』など見たくもない文字が出てきた。やはり倒して正解だったな。
「さて、あとはあなた一人です。で、何か言いたいことはありますか?」
「て、てめぇ何者だ? お、俺たちを敵に回してただで済むと思っているのか?」
おお、定番の台詞いただきました。やはり盗賊にはこういった台詞がないとね。
「私はただの旅人ですよ。で、あなたたちを敵に回したところで大したことはないと思います。」
「お、俺たちの仲間はここにいる連中だけじゃないぞ。俺たちはここら一帯を支配している『ヘルハウンド』だ。俺たちに逆らえば命はないぞ。い、今なら見逃してやる。」
「ほう、『ヘルハウンド』ですか。聞いたこと無いですね。その程度でヘルハウンドを名乗るのはヘルハウンド、いや、ワンちゃん達に対して失礼ですよ。せめて『生ゴミ団』とかならまだしも。あ、生ゴミに対して失礼でした。あと、別に見逃してくれなくても結構ですよ。どうせここであなたたちは倒しますので。」
「て、てめぇ。」
口調は勇ましいが、体が震えているのがわかる。実は私も体が震えています。恐怖なのか武者震いなのかわかりませんが。心では人同士での命のやりとりに恐怖しているのかもしれません。でも、汚物は消毒するに限る。というわけで、これ以上は時間の無駄になりそうですし、何より臭いです。この臭いは勘弁して欲しいのでさっさと倒しますか。
「話しはそれだけですか? では、いきますよ。」
「ま、まてっ。俺たちと手を組まないか? 俺たちと手を組めば、食べ物も女もあさり放題だ。悪い話じゃないだろう?」
「非常に悪い話です。何であなたたちと手を組まなければならないのですか? 食べ物は間に合ってますし、無理矢理襲っても何もいいことはないですしね。何よりその臭いが無理です。とはいえ、定番の台詞ありがとうございました。今度こそいきますよ。」
盗賊は何か言おうとしていたが、うるさいのでフックを一発入れて黙らせる。掌底の方でね。この程度の相手に拳を使って怪我したくないし、基本私は拳ではなく掌で攻撃する。最近はバンカーがメインだけど。今まで鍛えていただけあって、盗賊は思いっきり吹っ飛んでいった。意識が飛んでいるみたいだったが、楽に別世界へ旅立たれても殺された人がかわいそうなので他のメンバーと同様に手足を封じておいた。あとは頑張ってくれ。
この状況を見透かしたかのように丁度いいタイミングでマーブルがやってきて私の肩に飛び乗ってきた。
「おかえり、マーブル。大丈夫だった?」
「ミャー。」
マーブルは大したことなかったよ、と言っているかのごとく元気に返事を返してくれた。かわいい。
さて、今度は待ち伏せ部隊の無力化だね。さっさと凍らせますか。というわけで、待ち伏せ部隊を探知で確認して水術を発動させます。ゴブリン達との狩りでも不意打ちを受けそうなときに凍らせて獲物の足を止めていたりもしていたので、この程度はあっさりとしたものです。一応首から上はそのままにしてあるので死んではいないでしょう。
「では、マーブル隊員。第一および第二作戦完了。残るは襲撃部隊の殲滅ですが、護衛側が優勢なら手出し無用。劣勢なら加勢します。それでいいですか?」
「ミャッ。」
やはりあの動きは敬礼を意識したものだった。いつの間に覚えたんだ? 私教えてないよ。あ、ゴブリン達と過ごしていたときに覚えたのかもしれない。
「では、作戦の最終段階に入ります。マーブル隊員は今回は私の援護に回ってください。それでは、突撃します!」
「ミャッ!」
そういえば、ソリはつなぎっぱなしで戦ってたな。大丈夫かな。向かいながら馬車を確認すると無事だった。ここまで頑丈だったとは、流石はゴブリンの職人さんだ。でも、今度メンテしてもらいますか。
こんな事を考えながら私達は荷馬車に向かった。
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