表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
the god of death  作者: 鈴木 真実
1/10

序章

「…神よ。祝福を与えたまえ」

 白いローブを身にまとった男がしわがれた声で言った。そして青白い顔をした娘に手をかざす。ステンドグラスから光が差し込む。娘の顔を光が照らす。すると娘はぱちりと目を開けた。

 「アン、アンなのね」

 娘の傍らにいた妙齢の女性が娘に向かって声をかけた。女性は髪をとりみだし、人目をはばからずボロボロと泣いていた。隣に若い男も立っていた。彼も目を赤くして、鼻をすすっている。娘は焦点のさだまらない眼で二人を見て声をかけた。

 「どうしたの、」

 「アン、あなたはね、死んでいたのよ」

 「えっ、じゃあ神父様が…」

 「そうよ」

 娘の顔が歓喜の色に染まった。

 「よかった。じゃあ、私は生き返ったのね」

 「もう、喜んでないで。神父様に感謝しなさい」

 「ありがとうございます、神父様」

 素朴な笑顔を浮かべて、娘は白いローブの男に感謝の言葉を述べた。白いローブの男は笑い皺を深くして彼女に答えた。

 「感謝されるほどのことではないよ。これから神への信仰を捨てずに持っていてくれればそれでいい」

 「もちろんです。私、これからも教会に毎日通いますね」

 「本当に、本当に娘を生き返らせてくれてありがとうございます」

 親子は繰り返し感謝の言葉を述べながら教会から去って行った。親子がでていき、白いローブの男は一人取り残された。雲が通り、窓から光が消えた。

 「私は知ってしまった。本当のことを。しかしこれは、話してよいことでは」

  白いローブの男の言葉は苦悶が滲んでいた。しかし彼の言葉は誰にも届かずに、闇に消えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ